脊柱の問題の1つに、「側弯症」があります。
学校の健康診断で、脊柱の欄にチェックがつき、
「整形外科を受診してください」という案内がくることもあります。
しかし、そこで「側弯症ですね」と言われて、ピンとくる方・・・少ないのではないでしょうか?
また、どんな治療が必要になるの?
手術が必要なの?
という心配もつきまといます。
実はうちのこどもも・・・
小学3年生の息子も先日健診で指摘され、病院で「脊柱側弯症」と診断されましたが、同じクラスにも同様にに診断された子が数人いました。
そこで今回は、側弯症(読み方は「そくわんしょう」英語表記で「Scoliosis」)について
- 原因
- 症状
- 診断
- 治療
- 手術が必要な場合
などをイラストと実際の息子の写真、さらには大人のCT、レントゲン画像を用いて解説したいと思います。
側弯症とは?
通常は、まっすぐ腰から首まで伸びている脊柱が、左右どちらかにねじれ(回旋変形)している病態をいいます。
漢字では、「側弯症」とも「側彎症」とも「側湾症」とも書きます。
上半身裸になり、まっすぐ立ち後ろから見ると、左右どちらかの肩甲骨が下がっていたり、背骨がまっすぐでないのと確認できます。
側湾症の原因は?
この側弯症は、原因によって
- Ⅰ:特発性
- Ⅱ:神経筋原性
- Ⅲ:先天性
- Ⅳ:神経線維腫症
- Ⅴ:間葉系異常
- Ⅵ:関節リウマチ
- Ⅶ:外傷性
- Ⅷ:脊椎外拘縮
- Ⅸ:骨軟骨異形成症
- Ⅺ:骨感染症
に分類されます。
とくに特発性が約70%を占めます。
特発性側弯症とは?
- 乳幼児(0〜3歳)
- 学童期(3歳〜10歳)
- 思春期(10歳〜)
と年代が分けられますが、骨が成長するにつれ、脊柱が側方にねじれながら湾曲していくケースです。
詳しい原因は不明ですが、個々の椎骨の形状には問題なく、脊柱の連結異常によって生じるといわれています。
男女比では、女児に多い傾向があります。
神経筋原性側弯症とは?
神経原性・筋原性とがあり
神経原性では、上位ニューロン障害と下位ニューロン障害に分けられ
- 上位ニューロン障害では、脳性麻痺・脊髄小脳編成症・脊髄空洞症・脊髄腫瘍・脊髄損傷
- 下位ニューロン障害では、ポリオ・その他のウイルス性髄炎・脊髄髄膜瘤
があります。
筋原性では、多発関節拘縮症・筋ジストロフィーなどが原因となります。
先天性側弯症とは?
原因不明の先天性疾患で、
- 胎生期に椎体の形成異常が起こった
- 椎体同士が癒合する分節異常を生じた
ことなどで、側弯や後弯などの脊柱変性が起こりますが、その際、心臓や腎臓など他の臓器の奇形を合併することが多くあります。
側弯症の症状は?
- 肩の高さの左右差
- 肩甲骨の突出
- 腰の高さの非対称
- 胸郭変形
- 肋骨や腰部の隆起
など、体幹の非対称性が確認できます。
しかし、本人には自覚症状がなく、指摘されて初めて気づくことがほとんどです。
中には、思春期以降の成人に発症することもあり、その場合は、腰痛や神経麻痺などをきたすこともあります。
側弯症の診断は?
上記で説明した臨床症状(所見)の他、X線検査やMRI検査などを行い診断します。
また、前屈テスト(前屈する)で、脊柱の観察をします。
側弯の程度を見るため、全脊椎の立位正面と側側から計測するコブ法(側弯度・コブ角を計測)が行われます。
息子(小3)の場合
側弯症としては軽度なものではありますが、ご自宅でお子さんの状態を確認する際の指標とされてください。
息子の場合は、パッと見た目では、右の肩甲骨が下がっているのが確認でき、X線でもそのように見えました。
しかし、整体に行き、どのようになると脊柱がまっすぐなるのかと、骨を触っていたところ・・・
右肩甲骨を動かそうとすると、右は正常な位置にあり、左の肩甲骨の突出から、左肩が上がりすぎていることがわかりました。
症例 40歳代男性 スクリーニング
レントゲンで胸椎が右側(向かって左側)に彎曲してることがわかります。
側彎症と診断されました。
右側の画像はこの方のPET画像(FDG-PET)です。
FDGは骨髄への集積を認めますので、椎体の形もよくわかりますね。
症例 60歳代女性 スクリーニング
胸腹部CT(造影剤を用いない単純撮影)の冠状断像(前から見た図と思ってください)です。
胸椎及び腰椎に彎曲を認めていることがわかります。
側彎症と診断されました。
こちらの症例を動画でチェックする。
側弯症の治療は?
軽度の特発性側弯症では、保存療法が選択されます。
運動療法(体幹ストレッチ)を行い、経過観察します。
癖がある場合には、癖の矯正(寝方、荷物の持ち方、向き癖等)します。
また進行例(コブ角が25°を越える例)では、装具療法として、アンダーアーム型コルセットなどで、弯曲の矯正や矯正位の保持を行います。
しかし、中には手術が必要となることもあります。
側弯症の手術は?
コブ法で
- コブ角 10~25°→経過観察
- コブ角 25~40°→装具療法
- コブ角 40~50°→以上手術療法
と、年齢や状態によって何度で手術になるかは、医師の診断により微妙に誤差はあります。
とくに、成長期と成熟期では異なり
- 骨成長期(小児期まで)で40〜50°の場合
- 骨成熟後(青春期以降)で50°を越える場合
手術適応となります。
手術方法
手術は、
- (前方法)体幹の側側を切開し、椎骨を金属で固定
- (後方法)背側を切開して、椎骨の後方を金属で固定
- (前後合併法)前後の方法を合併して行う
などがありますが、現在後方法が主流です。
参考文献:
整形外科疾患ビジュアルブック P355〜361
全部見えるスーパービジュアル整形外科疾患 P290・291・294
脊柱側弯症のしおり
最後に
- 脊柱が、左右どちらかにねじれ(回旋変形)している病態を側弯症という
- 特発性側弯症が、側弯症の70%を占める
- 特発性の詳しい原因は不明
- 肩の高さが左右に差・肩甲骨の突出・腰の高さの非対称・胸郭変形・肋骨や腰部の隆起などが確認できる
- 臨床症状・X線検査・MRI検査などで診断
- 軽度の特発性側弯症では、保存療法(運動療法・装具療法)
- 重度の側湾症(45〜50°)では手術(後方法)が選択される
息子の場合は、寝る際の向き、スイミングでの泳ぎ方の矯正(まっすぐ泳げるように)、体幹ストレッチを指示されただけで経過観察となりました。
まずは、同じ方ばかりで荷物を持っていないか、同じ方ばかりを向いて寝ていないか、などをチェックしてみるのも改善への一つの方法でしょう。