胸腺(きょうせん)の場所ってご存知でしょうか?
たしかに、胸にあるので胸腺といいますが、詳しい位置まで説明できる方は少ないですよね。
そこで今回は、この胸腺(英語表記で「Thymus」)について
- 胸腺とはそもそもどんなもの?
- 胸腺の位置
- 胸腺の働き
- 胸腺に起こる病気
- 痛みが出る場所
などを、わかりやすく図や実際のCT画像を交えながら、解説したいと思います。
胸腺とは?
胸腺は、免疫系において大切な働きをするリンパ性の器官(中枢系リンパ器官)です。
生後に著しく発達し、新生児の時に10〜15gだったものが、小児期(10〜12歳頃)でピークを迎え、60gほどに達します。
そして、ピークを迎えた後(思春期以降)、徐々に萎縮し、脂肪組織で置き換わるのです。
中年期である40代頃には、男性で約25g、女性で約20gになります1)。
胸腺の位置は?
では胸腺の位置(場所)は人体の中でどこなのでしょうか?
胸腺という名前だけあり、確かに胸部にありますが、具体的には次のような場所に存在します。
胸腺は上の図のように
- 胸骨柄の裏側
- 心臓の前面
- 胸の中央付近
に位置しています。
胸腺は心臓(や胸部大血管)の前に位置していると考えたら良いですね。
心臓の場所についてはこちらにまとめました。→【CT画像あり】心臓の場所を図とともに解説!病気で痛みが出るのは
症例 30歳代男性 スクリーニング
胸部造影CTの横断像です。
上行大動脈のすぐ前側におむすび型(三角型)の形態をしているのが、胸腺です。
胸腺の前には胸骨があることがわかります。
30歳代という年齢を考慮すると正常の胸腺であることがわかります。
上のCT画像は、15歳、35歳、80歳の胸部CTです。
これを見るとわかるように、15歳→35歳→80歳と歳を重ねるごとに、胸腺自体が黒くわかりにくくなっているのがわかります。
これは脂肪に置き換わることにより、低吸収である(黒い)脂肪が増えていることを意味します。
胸腺の働きは?
胸腺は白血球(Tリンパ球)を作っている臓器で、骨髄から産生された未熟なT細胞の中から、自己反応性を持たないT細胞を選別する働きをしています。
幼児期から小児期にかけては、免疫能にとって重要な働きをしているものの、成人では胸腺を摘出してしまっても、免疫機能に影響しません。
胸腺に起こる病気は?
- 胸腺のう胞
- 胸腺過形成
- 胸腺腫
- 胸腺がん
などがありますが、これ以外にも胸腺異常からの合併症として
- 重症筋無力症
- 低γ-グロブリン血症
- 赤芽球癆
などもあります。
胸腺の病気で痛みが出る場所は?
無症状のことも多いですが、胸腺がある場所に炎症が起こったり、腫瘍が周囲へ浸潤することにより、胸が痛みます。
その痛みは、胸部を圧迫されるような感じがするものですが、初期には無症状なことも多くあります。
また、それ以外では、呼吸困難や長引く咳なども症状のひとつです。
参考文献:病気がみえるvol.4呼吸器P303
1)解剖学講義P310
最後に
胸腺について、ポイントをまとめます。
- 胸腺は、免疫系において大切な働きをするリンパ性の器官(中枢系リンパ器官)
- 子供の頃は大きいものが、年齢とともに小さくなり、脂肪組織に置き換わっていく
- 胸腺は、胸骨柄の裏側・心臓の前面・胸の中央付近に位置する
- 骨髄から産生された未熟なT細胞の中から、自己反応性を持たないT細胞を選別する働きをする
- 胸腺の病気は、胸腺腫・胸腺がん・重症筋無力症・低γ-グロブリン血症・赤芽球癆などがある
- 胸腺の病気では、胸が痛む
胸腺の病気は、画像検査(CT・MRI)・血液検査・病理検査などで調べることができます。
胸の痛みは、胸腺以外でも心臓や肺などの問題もありますし、症状を放置せずに原因を突き止めることをオススメします。