膝の内側側副靭帯(読み方は「ないそくそくふくじんたい」)を損傷した場合、手術をしない保存療法が選択されます!
それはなぜかというと、関節の外に付着していて血行が保たれているため自然治癒しやすいからです。
内側側副靭帯を損傷してしまった・・・今後の生活にどんな影響があるのだろう?
と困っている方へ。
今回は、
- 内側側副靭帯を損傷した際のリハビリについて
- リハビリの期間と完治までの期間について
- 後遺症は残るのか?放置するとどうなる?について
お話していきますね。
スポーツをしている方の運動開始の目安も記載していますので、参考にしてみてください。
膝の内側側副靭帯を損傷!リハビリの方法は?
程度とは何ですか?
詳しく知りたいです。
詳しく説明しますね。
内側側副靭帯の重症度分類は以下の通りです。
※イラストは右膝を前から見たもの
- Ⅰ度→小範囲の靭帯の損傷であり、膝関節がグラグラしない
靭帯損傷部位を押したときに痛みがある - Ⅱ度→靭帯が部分断裂しており、膝関節がグラグラする
痛みがあり、膝を30度程度曲げた状態で左右にグラグラする - Ⅲ度→靭帯組織が完全に断裂している
強い痛みがあり、膝をまっすぐに伸ばした状態であっても、左右にグラグラする
(骨折や他の靭帯を損傷している場合もある)
Ⅰ度~Ⅲ度の損傷の場合、まず以下のことを必ず行いましょう。
- 痛みや腫れなどを伴っているため、安静にする
- 患部を冷やすことで、痛みや腫れをコントロールする
- 患部に圧迫をすることで痛みや腫れをコントロールする(痛みが増す場合は避ける)
- 患部を心臓より高く挙げることで、重力を利用して痛みや腫れをコントロールする
これらを行うか・行わないかで、回復段階に差がでます。
Ⅰ度の場合
痛みや腫れがあると、膝関節周囲は硬くなりやすい状況におかれています。
痛みがそれほど強くない場合は、固定を行わないこともありますよ。
他の部位の筋力が落ちないように、患部以外のトレーニングも行います。
- お尻の筋肉
- 股関節周囲の筋肉
- 足首の筋肉
など、安静にしすぎて筋力低下がおきないようにしっかりと取り組んで行きましょう。
Ⅱ度の場合
膝が左右へグラグラすることがないようにに装具固定することになります。
固定した場合は、Ⅰ度の場合よりさらに膝関節が硬くなりますし筋力低下も著明です。
リハビリは靭帯の修復を直接的におこなうわけではありません。
でも、損傷部位をしっかりと固定して行う関節運動は、靭帯の治癒にもよい影響を与えます。
損傷部位以外をしっかり動かし、安静にしすぎることを避けることが大切ですね。
固定していても、早期からリハビリを行っていくことが重要なポイントです。
装具装着した状態で、関節可動域練習・筋力増強練習を行っていきます。
関節可動域練習
柔軟性の確保はとても重要です。
膝がグラグラしないように注意しながら、膝関節が固まってしまわないように太ももの裏の筋肉やふくらはぎの筋肉のストレッチや、お皿の部分をしっかりと動かすなどを理学療法士が行います。
膝が左右へグラグラしないことを確認しながら、膝を曲げこんでいきましょう。
筋力増強練習
膝周囲の筋肉のバランスを保っていくことが大切です。
内側側副靭帯を損傷した場合、大腿四頭筋(太ももの前)・ハムストリングス(太ももの裏)の筋力強化が重要となります!
大腿四頭筋→膝を伸ばすときに働く筋肉。
ハムストリングス→膝を曲げるときに働き、同時に膝の安定させるために働く筋肉。
痛みがとれてきたら、
- 理学療法士と一緒に筋力強化
- 重りを用いた運動
- 体重をかけて行うスクワット
- 片脚立ち
- その場でジャンプ
などの運動を開始していきます。
その後、ステップやジョギング・自転車マシーンによる運動などを行い、徐々に負荷を上げていきます。
Ⅲ度の場合
完全断裂の場合の装具は、両側に支柱が入っている固定力の高いものを使用し、膝を曲げる角度なども的確に決めることがあります。
痛みが強い場合は、関節深く曲げこむことや体重をかけることを避けることが大切ですよ。
完全断裂の場合、体重をかけることができず足の裏の感覚低下なども予想されるため感覚をもどすようなリハビリも行います。
痛みが緩和し、積極的に動かせるようになってきたらⅡ度の場合のリハビリを行っていきましょう。
リハビリの期間はどれくらい?完治までは?
どれくらいの期間リハビリを行えばいいですか?
完治まではどれくらいかかりますか?
- Ⅰ度の場合→完治まで1~4週間
- Ⅱ度の場合→完治まで6~8週間
- Ⅲ度の場合→完治まで3~4ヶ月
といわれています。1)
Ⅰ度の場合、受傷して3日後にはしっかりと膝を固定した状態で、試合にでるスポーツ選手もいますよ。
完治までの期間は、毎日リハビリを行うことが大切です!
その後、
- 腫れていない
- 関節を動かして痛みがない
- 患部を抑えて痛みがない
- まっすぐ走って痛みがない
などをリハビリの終了目安にするとよいでしょう。
スポーツ選手などは、
- ジャンプして痛みがない
- ダッシュして止まる動作で痛みがない
- 方向を変える動作で痛みがない
- 小刻みに走った場合に痛みがない
- 相手の動きに付いていっても動いて痛みがない
- ボールを使って動作をしても痛みがない
などの動作も確認する必要があります。
後遺症が残ることもある?放置するとどうなる?
内側側副靭帯は再生が図れる靭帯だとされていますので、時間をかけてきちんとリハビリをすることで後遺症が残ることはほとんどないといわれています。
再発率は高いとされていますので、スポーツ選手は復帰をあせらずにリハビリを行ってください。
Ⅰ度の場合などは、受傷直後は痛みがあるものの時間の経過とともに痛みが軽減します。
それを完治と思い込んでしまうと大変です!
- 膝関節は、身体を支える重要な箇所
膝関節が柔軟に動くことで、衝撃を吸収したり・立つ・歩く・しゃがむ・正座するなどの動作がスムーズに行える - 内側側副靭帯の損傷を放置すると
膝の動きのバランスが崩れ、歩いているときに膝がガクッとするなどの違和感が出現
徐々にガクッとする頻度が高くなり、痛みの症状に変わる - 痛みをさらに我慢すると
半月板の損傷や膝関節の変形など二次的な障害に発展
痛みがないからと放置せずに、きちんとリハビリを行うことが大切ですね。
参考サイト)1)膝の内側側副靭帯損傷(医療法人社団 順邦会 飯島整形外科)
まとめ
今回のポイントは以下の通りです。
- 内側側副靭帯損傷のリハビリは、重症度(Ⅰ度・Ⅱ度・Ⅲ度)によって違いがある
- 完治までに、Ⅰ度:受傷後1~4週間 Ⅱ度:6~8週間 Ⅲ度:3~4ヶ月要し、その間は毎日リハビリする
- 時間をかけてリハビリをきちんと行うことで、後遺症は少ない
- 放置すると、二次的障害を引き起こす(半月板の損傷や膝関節変形)
内側側副靭帯損傷のほとんどは、保存療法とリハビリを行っていきます。
Ⅲ度の場合で、骨折や他の靭帯の損傷を認める場合は手術の適応となる場合もあるということを知っておいてください。
内側側副靭帯損傷を放っておくと、将来的に危険なことが予測されるのできちんとリハビリを行ってくださいね。