肘の内側が痛む場合、上腕骨内側上顆炎が考えられます。
ゴルフをする人の肘にもよく症状が出ることから、ゴルフ肘とも呼ばれます。
しかし、この上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘)は好きなゴルフができない、日常生活に差し支えるといった悩みも出てきます。
そこで今回は、上腕骨内側上顆炎(読み方は「じょうわんこつないそくじょうかえん」英語表記で「medial epicondylitis」)について
- 症状
- 原因
- 診断
- 治療
など、説明したいと思います。
上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘)とは?
上腕骨とは、両腕の肘から肩の下までの太い骨のことを言いますが、上腕骨内側上顆というのは、肘付近の上腕骨小頭の内側にある隆起している部分のことです。
この上腕骨内側上顆に起こる炎症を、上腕骨内側上顆炎といいますが、この上腕骨内側上顆に付着している筋肉に、微小亀裂や変性が生じることで起こります。
上腕骨外側上顆炎と同様に使いすぎることによって起こるため、使いすぎ症候群の代表的な病態ともいわれています。
上腕骨外側上顆炎のまとめ→ 【MRI画像あり】上腕骨外側上顆炎の原因や症状、治療まとめ!
上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘、内側テニス肘)の症状は?
- 疼痛
- 圧痛
肘の内側から前腕にかけての疼痛や、押すと痛む圧痛が主な症状となります。
上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘、内側テニス肘)の原因は?
上腕骨外側上顆炎の場合、テニス肘や野球肘ともいわれますが、このテニスや野球が原因となるのは外側だけではありません。
上腕骨内側上顆炎の原因として
- ゴルフ(スウィング)
- テニス(フォアハンド)
- 野球(投球・少年野球に多い):little leaguer’s elbowと呼ばれる。
なども内側を痛める原因ともなるのです。
ゴルフの場合は、初心者に多く、クラブでボールの手前の地面を叩いた際に、利き腕の内側上顆に発生しやすいと言われています。
テニスでは、フォアハンドでは上腕骨内側上顆炎に、バックハンドでは上腕骨外側上顆炎の発症原因となります。
そのため内側型テニス肘とも呼ばれ、練習や試合の多いゴルフの上級者に多いと報告されています1)。
上で述べましたように使いすぎが原因なので、これら以外にも日常生活や仕事等において、様々なことが原因で起こりますが
- 加齢による筋力低下
- 運動前のストレッチ不足
- 不適切なフォーム
- 肘の曲げ伸ばしを反復する職業
なども発症要因の1つとなります。
20代〜60代に好発します。
上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘、内側テニス肘)の診断は?
- 疼痛誘発テスト
- 画像診断(レントゲン・MRI検査)
などを行い、診断します。
疼痛誘発テスト
ゴルフ肘テストというものがあります。
- 立った状態(または座った状態)
- 前腕を回外位(腕を回して手の平を上にした状態)
- 手関節と肘関節を伸展(伸ばす)
この動作をおこない、内側上顆に痛みが現れると陽性となります。
wrist flexion test
foream pronation test
上腕骨内側上顆炎になると、前腕を内側に回したり、手首の曲げ伸ばし、手指の曲げ伸ばしなどの動きで疼痛が起こるためにその原理を利用したものとなります。
肘関節単純レントゲン検査
肘関節の単純レントゲン検査では、内側上顆に裂離骨折を認めることがあります。
肘関節MRI検査
総屈筋腱の内側上顆付着部にSTIRや脂肪抑制T2強調像の冠状断像において、異常な高信号や腱の肥厚として描出されます。
また内側上顆に骨髄浮腫を認めます。
しばしば内側側副靱帯にも損傷や断裂を合併し、肘部管内の尺骨神経の腫大を信号上昇を伴います2)。
上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘、内側テニス肘)の治療法は?
保存療法が主な治療法となりますが、効果が見られない場合、手術を検討することになります。
保存療法
- 局所冷却
- 局所安静
- サポーター・テーピング
- 手関節のストレッチ
- 薬物療法(NSAIDsの投与・ステロイド局所注射)
治療期間は、状態・症状によっても異なります。
手術療法
基本的には、保存療法で症状が改善されるのを待ちますが、手術方法としては
- 筋膜切開術
- 切除術
- 前進術
- 肘関節鏡視下手術
などがあります。
参考文献:
1)スポーツ外傷と障害、文光堂、東京,1996,0283-292
2) 関節のmRI P335-349
骨軟部疾患の画像診断第2版 P202
整形外科疾患ビジュアルブック P266・267
全部見えるスーパービジュアル整形外科疾患 P155〜157
100%整形外科P82
最後に
- 上腕骨内側上顆に付着している筋肉に、微笑亀裂や変性が生じることで上腕骨内側上顆炎となる
- 使いすぎ症候群の代表的な病態
- 肘の内側から前腕にかけての疼痛や圧痛がある
- 誘発テストや画像診断をおこない、診断する
- 保存療法によって回復を待つが、改善しない場合に手術を検討する
一旦改善されたと思っても、使いすぎが続くと、再び症状があらわれることもあります。
そのため、適度な筋力アップを試みるためのトレーニングやストレッチを日頃から行うことも予防として重要です。