肥満は以前、欧米諸国で問題視されていた問題ですが、日本でも健康障害の増加が深刻な問題となっています。
肥満に該当する人は2012年の厚生労働省の調査によると、
- 男性の29.1%が肥満
- 女性の19.4%が肥満
であり、実に4人に1人が肥満なのです1)。
そんなに肥満ってよくないんですか?
ちょっとくらい太ってても問題ないのでは?
日本には肥満を専門とする「日本肥満学会」というのがあるのですが、その学会が発表した「肥満症診療ガイドライン2016」2)では、
- 肥満が原因で起こる病気
- 肥満が関連する病気
- 高度な肥満が注意するべき病気
を明確にし、これらを伴う場合、肥満を改善して管理していくことが重要であると記載があるのです。
肥満ならば起こりやすい病気・関連がある病気があるということを明確に記載しているということです。
そんな肥満度を測るのが、BMIですが、このBMIの判定方法とはどのようなもので、どのような時に再検査となるのでしょう?
今回は、
- 肥満とBMIの関係
- 肥満の基準と判定区分
- 肥満症の定義と肥満・メタボリックシンドロームとの違い
- 肥満症と診断された後の流れ・治療
などを「肥満症診療ガイドライン2016」2)を参照しつつわかりやすく、解説したいと思います。
肥満とBMIの関係は?定義は?
肥満を判定するにあたり、先ほどの「肥満症診療ガイドライン2016」2)で4つのポイントが述べられています。
- 肥満とは脂肪組織に過剰に脂肪が蓄積された状態である。
- 肥満の判定にはBMIを用いる。
- 日本では、BMI=22を標準体重とする。
- 日本では、BMI≧25を肥満と判定する。
ということです。
肥満度を測るものがBMI(体格指数のこと「Body Mass Index」の頭文字をとったもので、読み方はそのまま「ビーエムアイ」)で、1994年にWHOで定められた肥満判定の国際基準となっています。
このBMIの求め方は
BMI = 体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))
という計算式で求められます。
つまり、身長160cmで体重60kgの人の場合、BMI=60÷1.6÷1.6=23.4375 となります。
また、身長160cmで体重80kgの人の場合、BMI=80÷1.6÷1.6=31.25 となります。
そして、このBMIが日本人の場合、BMI=22を標準体重として、25以上を肥満と定義しているのです。
肥満の判定方法は?基準は?
肥満の診断は、日本肥満学会の基準2)が用いられます。
BMI(kg/m2) | 判定 |
<18.5 | 低体重 |
18.5≦〜<25 | 普通体重 |
25≦〜<30 | 肥満(1度) |
30≦〜<35 | 肥満(2度) |
35≦〜<40 | 肥満(3度) |
40≦ | 肥満(4度) |
先ほど述べたように、BMIが25以上で肥満で、さらにその数値により、肥満を1度から4度に分類しています。
人間ドックや健康診断での肥満の判定は?
では、人間ドックや健康診断ではどのように判定されるのかというと、BMI(体格指数)がそれぞれ
- 要経過観察・生活指導(C判定)・・・18.4以下(低体重)
- 基準範囲・・・18.5〜24.9
- 要経過観察・生活指導(C判定)・・・25.0以上(肥満)
と判定されます3)。
つまり、痩せすぎても、太りすぎても要経過観察・生活指導(C判定)と判定され、その間が普通体重と診断されるということです。
過度な痩せは、「がん」などが隠れている可能性もあります。
過度な痩せの場合は、
- 悪性腫瘍(がんなど)
- 消耗性疾患(糖尿病、肝不全、腎不全、慢性尿路感染症、末期がんなど)
などが隠れている可能性があります。
とくに短期間で急激に体重が減っている場合には注意が必要です。
肥満ならば肥満症なのでしょうか?
次に、肥満症について解説します。
肥満症とは?
肥満症は、肥満(BMI≧25)があるだけではありません。
肥満症とは、肥満があり、それが原因となって生じた、あるいは関連する以下の11の健康障害を、1つでも持っているか、内臓脂肪の蓄積がある人を指します2)。
そして、肥満症は肥満に伴うそれぞれの健康障害を減量することによって改善させるための疾患概念なのです。
- 耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)
- 脂質異常症
- 高血圧
- 高尿酸血症・痛風
- 冠動脈疾患・心筋梗塞・狭心症
- 脳梗塞・脳血栓症・一過性脳虚血発作(TIA)
- 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)
- 月経異常・不妊
- 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)・肥満低換気症候群
- 運動器疾患・変形性関節症(膝・股関節)・変形性脊椎症・手指の変形性関節症
- 肥満関連腎臓病 2)
肥満の中からこれらに該当する肥満症の人をピックアップして、治療や管理をして行くことが日本肥満学会のガイドライン2)では勧められています。
そして、ガイドラインでは、以下のフローチャートに沿って肥満と肥満症を区分けして行くことが推奨されています。
2)より引用改変
すなわち、まず肥満の人から、
- 内分泌性肥満
- 遺伝性肥満
- 視床下部性肥満
と言った二次性肥満を除外します。
そして、BMIの値により、35未満なのか、以上なのかで分けます。
その上で、
- 上に挙げた11の健康障害に該当するものあるかどうか
- 内臓脂肪蓄積があるかどうか
でそれぞれ2つに分けて行きます。
健康障害や内臓脂肪蓄積がある場合は、肥満症もしくは高度肥満症と診断され、ない場合は、それぞれ肥満もしくは高度肥満と診断されます。
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メタボリックシンドロームとは?肥満症との関係は?
メタボリックシンドロームは、内臓脂肪の蓄積があり、心血管疾患のリスクが2つ以上あるものをいいます。
内臓脂肪蓄積とは?
内臓脂肪蓄積とは、ウエスト周囲径が
- 男性・・・≧85cm
- 女性・・・≧90cm
(内臓脂肪面積は、男女ともに≧100cm2に相当します。)
心血管疾患のリスクとは?
そして、その上で以下の項目に2つ以上当てはまるものがメタボリックシンドロームです。
- 高トリグリセリド血症・・・≧150mg/dL かつ・または 低HDLコレステロール血症・・・<40mg/dL
- 収縮期(最大)血圧・・・≧130mg/dL かつ・または 拡張期(最小)血圧・・・≧85mg/dL
- 空腹時高血糖・・・≧110mg/dL
肥満症の場合、健康障害は1つ以上なので、その点でも異なります。
肥満症と診断されたらどうする?治療の目安は?
高度肥満症はもちろんのこと肥満症と診断された場合、専門医を紹介されます。
そこで医師の指導に従い減量や生活習慣改善、適切な治療をする必要があります。
ただし、そこまででなくても、健康診断で肥満を指摘されたということは、今後何らかの健康障害を伴うことになるかもしれないという警告です。
そのため、生活習慣の改善をする必要がありますが、現在の体重から3%の減量で健康障害の改善が得られることも判明されている事実があります。4)
参考文献:
1)厚生労働省:平成24年「国民・健康栄養調査」
2)肥満症診療のガイドライン2016(ライフサイエンス出版、2016)
3)人間ドック学会 判定区分(2017年4月1日改定)
4)人間ドック31:7-12,2016
人間ドック健診の実際P118〜122
最後に
健康診断で肥満を指摘された場合について話して参りましたが、ポイントをまとめます。
- 肥満は、一般的な正常体重よりも多いもの・体脂肪が多いもの・脂肪組織に過剰に脂肪が蓄積された状態をいう
- 肥満度を測るものがBMIで、体格指数のこと
- BMIの求め方は、体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))
- BMIが25.0以上だと肥満
- 11の健康障害を1つでも持っている人を肥満症という
- メタボリックシンドロームは、内臓脂肪の蓄積があり、心血管疾患のリスクが2つ以上あるもの
- 高度肥満症・健康障害を合併している肥満症の人は専門医のもと、治療が必要
- 肥満と指摘されたら、今後何らかの健康障害を伴うことになるかもしれないという警告
肥満なんて大体はひっかかるもんなんでしょ?という考えはやめましょう。
一人一人体質が違うように、肥満によって将来何らかの健康障害を伴うようになるかもしれないと考えると、肥満を解消することが、いかに重要なことかというのもおわかりいただけるかと思います。
体重測定を教えてくださいありがとうございます。