頚椎は7つの骨で形成されていますが、その頚椎に変形を伴う疾患が変形性頚椎症です。
高齢化社会になるにつれ、患者数が増加している疾患でもあります。
今回は、そんな変形性頚椎症(読み方は「へんけいせいけいついしょう」英語表記で「cervical spondylosis」略語でCS)について
- 症状
- 原因
- 診断
- 治療
など、気になることを分かりやすく、画像やイラストとともにご説明したいと思います。
変形性頚椎症とは?
椎間板や椎体の退行変性によって、椎間板腔が狭くなり、椎体辺縁の骨棘形成など変化が現れるものを変形性頚椎症といいます。
その、椎間板の変形・黄色靭帯の変性・肥厚などによって脊柱管が狭窄すると、脊髄や神経根を圧迫するようになり、症状が出現します。
変形性頚椎症は、椎間板腔の狭小化が頚椎や椎間関節への負荷となり、椎体辺縁で反応性の骨が増殖し骨棘を形成する・・・というように進展していきます。
変形性脊椎症の詳しい内容はこちら→変形性脊椎症とは?4つに分けて図で徹底解説!
変形性頚椎症の症状は?
- 首や肩(項部・上背部)のこりや疼痛
- 頚部関節の可動域制限
- 後頭部痛
- 神経症状(しびれなど)
首や肩のこり感や疼痛、可動域制限が特徴でもありますが、項部筋群が緊張することにより、後頭部痛が現れることもあります。
また、神経根や脊髄が圧迫されると神経症状を引き起こすこともあり、この場合、頚椎症性神経根症・頚椎症脊髄症といいます。
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変形性頚椎症の原因は?
加齢に伴う退行変性が原因です。
厳密には、
- 椎間板の変性
- 椎体の変性
- 椎間関節の変形性関節症
- ルシュカ関節の変性(頚椎のみ)
これらの変化が複合的に起こったものです。
詳細はこちら→変形性脊椎症とは?4つに分けて図で徹底解説!
原則、症状がなければ病的とはみなされず、治療も必要ありません。
頚椎の場合は、中位・下位頚椎に好発します。
変形性頚椎症の診断は?
身体所見(症状)・X線検査・誘発テストから診断に至ります。
身体所見
上記でご説明した症状の他、年齢などを考慮し、変形性頚椎症を疑います。
X線検査
- 椎間板腔の狭小化
- 椎体辺縁の骨硬化
- 骨棘形成
などを、レントゲン画像で確認します。
より詳しい神経根や脊髄の圧迫の様子や、椎間板ヘルニアの有無などはMRIで精査します。
症例 50歳代男性
頚椎単純X線の側面像です。
C5,6,7で骨棘の形成・C6/7で椎間板腔の減高を認めています。
誘発テスト
誘発テストでは、神経症状がないことを確認します。
- spurling test
- jackson test
- ten second test
などがあります。
spurling test
椅子に座った状態で、頭頂部から、症状が出ている側に頚部を押さえる方法で、上肢の疼痛やしびれを確認します。
jackson test
椅子に座った状態で、頭頂部から下へ圧を加え、頚部を後ろに倒す方法で、上肢の疼痛やしびれの強弱を見ます。
ten second test
両方の上肢を前に伸ばし、グーパーを何回10秒間に行えるかを調べるテストです。
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変形性頚椎症の治療は?
保存療法として、薬物療法や理学療法が行われます。
薬物療法
NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)・筋弛緩薬などの内服や外用薬が処方されます。
理学療法
- 頚椎牽引
- 温熱療法
などが治療として行われます。
また、上記以外に頚椎カラーを装着することで、症状の緩和を図ります。
参考文献:整形外科疾患ビジュアルブック P290・291
参考文献:全部見えるスーパービジュアル整形外科疾患 P260・261
最後に
- 頚椎の変形性脊椎症
- 首や肩のこり感や疼痛、可動域制限が出る
- 加齢が原因
- 症状から変形性頚椎症を疑い、X線検査や誘発テストを行い診断する
- 症状を軽減・緩和するための対処療法が治療法となる
加齢と共に発症のリスクが高まるもので、誰にでも起こりうる疾患です。
完治させることができず、症状を緩和させる対処療法しかないものですが、多くの場合、この保存療法で症状は改善します。
自己判断するのではなく、症状がひどくなる前に受診しましょう。