詳しく教えてくれませんか?
手術が必要なのか、手術はせずにリハビリを行っていくのか。
どちらでしたか?
でも念のために、手術後のリハビリプログラムについても知っておきたいです。
変形性膝関節症のリハビリプログラムについて解説しますね!
変形性膝関節症は、理学療法の中でももっとも頻度が高い疾患といわれています。
とくに女性に発症率が高いため注意が必要です。
今回、
- 変形性膝関節症のリハビリ内容について
- リハビリの期間はどれくらい必要なのか
- 自宅でできるリハビリメニューや注意点
- 変形に対する治療法はあるのか
について詳しくお伝えします。
また、変形や痛みが軽度の場合の進行予防法についてもお話ししますね。
変形性膝関節症のリハビリプログラムは?
手術しない場合のリハビリプログラム
- ストレッチ
- 関節を動かす
- 筋力強化
- 足底板(靴の中に入れる専用の中敷)や装具の検討
- ウォーキング・自転車・プールなどの運動
- 生活指導
これらを、私たち理学療法士と一緒に行っていきます。
ストレッチ
膝関節内の軟骨が磨り減ってしまうことで変形が起こり、痛みを生じます。
軟骨の磨り減りは改善できませんが、変形の進行防止や痛みを軽減することができますよ。
膝に痛みがある場合、股関節・お尻・膝関節・足関節の筋肉すべてが硬くなる!
膝は歩くときの衝撃を吸収したり・体重を支えたりする重要な関節なので、膝が故障すると足全体に支障がでるというわけですね。
関節を動かす
関節の動きを維持することはとても大切です。
膝関節は膝を伸ばしたときに、膝の裏が床につく(膝の曲がりが0度)~正座をすることができる(膝の曲がりが140度)と大きく動かすことができる関節とされています。
お皿の動きも重要で、私たち理学療法士はお皿の動きもきちんと引き出していきますよ。
関節の動きが鈍い場合などはヒアルロン酸の注射や、痛みが強い場合はステロイド注射などの薬物療法を。
関節を動かす際は膝が温まった状態で行うと効果が高くなるので、温熱療法(器械を使って膝を温める)を取り入れます。
筋力強化
膝関節にとって重要といわれる、太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋)の筋力強化がポイントです。
人が立ったり・座ったり・歩いたりの動作では、必ず大腿四頭筋が収縮。
大腿四頭筋の筋力が低下すると、膝が曲がり骨と骨がぶつかり合い軟骨の磨り減りが原因で変形が起きてきます。
また、筋力低下が原因で膝へ衝撃が直接関節に衝撃として伝わることがあり痛みにつながるのです。
膝関節を守るためにも、大腿四頭筋の強化を行っていきましょう。
股関節周囲の筋肉や膝を曲げる筋肉も同時に筋力強化するとよいでしょう。
足底板や装具の検討
靴の中に足底板といわれる、中敷を入れることによって変形の進行予防につながります。
変形の形(たとえば:o脚なのかx脚なのか)によって足底板の形を使い分けましょう。
- o脚の場合→外側が高くなっている足底板を使用
(膝内側の軟骨が磨り減るため、足底板で外側を底上げし矯正する) - x脚の場合→内側が高くなっている足底板を使用
(膝外側の軟骨が磨り減るため、足底板で内側を底上げし矯正する)
足底板は、中敷にするタイプ・足に巻きつけるタイプ・靴下のように履くタイプなどに別れています。
装具は、自分の膝の形に合ったものをきちん採型したものを装着しましょう。
痛みが軽度でも、膝がグラグラするなど筋力が弱っている場合など、筋力の代わりを担ってくれます。
ウォーキング・自転車・プールなどの運動
痛みが強い場合は、膝に負担がかからないようプールの中でのウォーキングや自転車などの運動から開始するとよいでしょう。
プールの中で運動する際、へその位置まで水があれば体重の50%・肩の位置まで水があれば体重の90%を軽減することができるといわれています。
ゆっくりと歩くことで抵抗も減らすことができますよ。
プールへ毎日通うのは大変・金銭的にも負担がかかるなどのデメリットもありますね。
自転車を使った運動は、膝へかかる負担が少なく継続して行えます。
筋力強化が得られ、膝の痛みが軽減したらウォーキングを開始するとよいでしょう。
歩くときの姿勢に注意してください。
- 顎を引く
- 背筋を伸ばす
- 腕を大きく振る
- 大またで歩く(踵から着地する気持ちで)
などがポイントです。
生活指導
私たち理学療法士は、生活指導にも力を入れ変形・痛みの進行予防に努めます。
まずは、膝の負担を取り払うこと。
- 肥満気味であれば、体重軽減を目的とした食事療法や運動療法
- 和式の生活から洋式の生活への変更
- 階段の昇り降りでの手すりの使用やエレベーター・エスカレーターの使用
- 膝を冷やさないようサポーターの使用
- 早い段階での(痛みが少ない段階)杖の使用
などを重点的に、時間をかけて行います。
以上のことを行っていった場合でも、変形が進み・痛みが重度になった場合・・・手術となります。
手術を行った場合のリハビリプログラム
- ストレッチ
- 関節を動かす
- 筋力強化
- 歩く練習
を術後翌日から行います。
術後は傷の痛みもあるので、慎重に。
ほとんどの場合、翌日は体重をかけないで状態でのリハビリです。
理学療法士にまかせ、ストレッチを行い膝の動きを徐々に引き出していきます。
膝が動かせるようになったら、筋力強化開始。
痛みがある場合の筋力強化は、
- 関節運動(関節の曲げ伸ばし)を行わずに筋肉を収縮させる方法
- 理学療法士との運動
痛みがとれ、自分での運動が可能になった場合の筋力強化は、
- 重り・ボールを使った運動
術後2日目より、歩く練習を始めます。
次のように、痛みの程度をみながら段階をおって。
- 平行棒内(平行においてあるバー)を握って歩きます。
→手で支えることができるので、膝にかかる負担を軽減できる。 - 歩行器(歩くのを助ける補助具)を使用して歩きます。
→腕で体重を支えることができる。(歩く距離を延ばしていく) - シルバーカー(押して歩くタイプの補助具・疲れたら座ることもできる)を使用して歩きます。
→手で押して歩くタイプのもの、屋外を練習する際に適す。(細かい段差なら操作可能) - 杖を使用して歩きます。(手術した足と反対の手で杖を使用すること)
→利き手でない場合は、練習が必要です。
膝への負担を考えて、術後は普段の生活の中でも必ず杖を使う。
次は、どのくらいの期間リハビリを行うのかについて説明しますね。
リハビリの期間はどれくらい?
変形が軽度・痛みがまだ軽い場合のリハビリ!
これがホントに重要なんです!!!
手術しない場合
衰えた筋肉強化するためには、最低3ヶ月継続する必要があります。
変形や痛みが軽度のときは、痛みが強くなる動作を一時的に避けることが症状を進行させない予防法のひとつです。(例:正座や階段の昇り降りなど)
一時的に避けることで、症状を緩和させリハビリに入っていきましょう。
手術した場合
手術を行った場合、入院期間は3週間~4週間とされています。1)
手術には、
- 関節鏡(関節内をきれいに洗浄する目的、根本的な治療ではないが痛みを軽減する目的)
- 骨切り術(骨を切り膝の形を整えることで、膝にかかる負担を軽減する目的)
- 人工膝関節置換術(関節を人工のものに置き換える、変形・痛みが重度の場合)
があります。
どの手術の場合も、術後翌日からリハビリを開始。
術後の経過が良好で、安心して日常生活が送れるようになれば退院です。
退院後は週に1~2回、2ヶ月~3ヶ月の通院リハビリを行います。2)
自宅でできるリハビリメニューは?注意点は?
ストレッチ・筋力強化を自宅でも継続していくことが大切です。
ストレッチ方法
ストレッチは、左右同じように行うこと。
お尻の筋肉のストレッチ
仰向けに寝て、股関節・膝関節を曲げおなかの方向へ深く曲げこんでいきます。
膝の曲がりが悪い場合には、膝の裏側を両手で支えてサポートして曲げこんでいきましょう。
伸ばしているほうの膝が浮き上がらないように注意してくださいね。
股関節を開く筋肉のストレッチ
仰向けに寝て、片足は延ばし反対の足は膝を立てる。
立てた膝を内側に倒して、倒した膝と反対の手で膝を床の方向へ押し込んでいきます。
股関節を閉じる筋肉と足の後面にある筋肉のストレッチ
両足を開いて座り、片方の膝を内側に曲げる。
伸びているほうの足をなるべく外側に開き、身体を伸びている足の方向へ倒していきます。
伸ばしてる足の膝は真上を向く、足首はしっかりと起こしてくださいね。
筋力強化の方法
バランスのとれた体づくりを心がけ、変形の予防を心がけることが大切です。
以下の筋力を鍛えましょう。3)
太ももの前の筋肉
- 両膝を伸ばして仰向けに寝た状態で、膝の下に丸めたタオルを入れ、膝の裏で床に押し付け5~10秒キープします。
- 仰向けに寝た状態で片膝を立て、片足は膝を伸ばした状態で10cmほど持ち上げ5~10秒キープします。
- 椅子に座った状態から、片足ずつ膝を伸ばして5~10秒キープします。
(慣れてきたら、足首に重りを巻いてもよい)
どの方法も、足首を起こした状態で行うのがポイントです。
太ももの外側の筋肉
横向きに寝た状態で、足を上に持ち上げ5~10秒キープします。
足を真横に持ち上げるのがポイントです。
太ももの内側の筋肉
椅子に座った状態で、足の間にボールを挟み込み5~10秒キープします。
膝と足の位置がまっすぐになった状態で、ボールを挟むのがポイントです。
足全体の筋肉
両足を肩幅に開いて膝を曲げ、腰を落としていきます。
壁や手すりにつかまって行いましょう。
ふくらはぎの筋肉
立った状態で、踵を持ち上げ爪先立ちになり5~10秒キープします。
これも、壁や手すりにつかまって行いましょう。
最後に、変形はリハビリで元に戻るかについて聞きたいです。
変形は治療やリハビリで元に戻るの?
残念ながら、変形した膝が元に戻ることはありません。
磨り減った軟骨が修復することはないから。
だからこそ、変形の進行を予防するためにリハビリが大切になるのです。
変形や痛みが少ない時期に、積極的にリハビリに取り組んでくださいね。
関連サイト)1)変形性膝関節症のリハビリのスケジュール(医療法人社団 悠仁会 羊ヶ丘病院)
2)退院後のリハビリテーション(あんしん病院)
3)変形性ひざ関節症の運動療法(日本整形外科学会)
まとめ
今回のポイントは以下の通りです。
- 変形・痛みが少ない時期にリハビリを開始することが大切
- 手術をしない場合は、最低3ヶ月の継続リハビリが必要
- 手術翌日からリハビリを開始し、3~4週間入院・退院後は週に1~2日のペースで2~3ヶ月通院リハビリ
- 手術しない場合・手術を行った場合のリハビリ
→ストレッチ・関節を動かす・筋力強化・ウォーキング(段階を追った歩く練習から) - 手術しない場合
→足底板や装具の検討・生活指導 - ストレッチ・筋力強化は自宅でも継続が必要
- 変形は元に戻ることはないので、早期にリハビリ開始が重要
変形性膝関節症は、手術をしてもしなくてもリハビリがとても大切な疾患となります。
リハビリの内容を理解して、筋力強化などのポイントをしっかりとおさえて行っていきましょう。