足が急に痛くなり、歩行異常があらわれる疾患の1つに、一過性大腿骨頭萎縮症というものがあります。
しかも、その症状が妊娠中にあらわれると、不安にもなりますよね。
今回は、この一過性大腿骨頭萎縮症(読み方は「いっかせいだいたいこつとういしゅくしょう」英語表記で「taransient osteoporosis of the hip」)について
- 原因
- 症状
- 診断
- 治療法
を画像と合わせて解説したいと思います。
一過性大腿骨頭萎縮症とは?
足の付け根に位置する、大腿骨頭の病気です。
大腿骨頭内の骨髄に浮腫が生じることで、骨粗鬆症を来たし、症状が出現します。
妊娠後期の女性に好発するとされていましたが、妊娠していない女性や中年男性にも起こります。
一過性大腿骨頭萎縮症の症状は?
- 股関節痛
- 跛行
などが片側のみにみられ、ひどい場合は骨折をきたしたり、歩行困難となることもあります。
症状は突然あらわれ、経過は良好で2〜6ヶ月で改善する一過性のものです。
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一過性大腿骨頭萎縮症の原因は?
原因は不明です。
外傷や炎症が見られないのが、特徴の一つでもあります。
一過性大腿骨頭萎縮症の診断は?
X線検査やMRI検査、骨シンチグラフィを行い診断します。
X線検査
一側大腿骨頭の骨粗鬆化(大腿骨萎縮像)が確認できます。
その際、関節裂隙の狭小化を伴いません。
また、外傷がないのを確認しますが、大腿骨頭の圧潰や破壊も見られません。
MRI検査
大腿骨頭部〜頚部にかけて、骨髄浮腫を反映したびまん性の異常信号(T1強調像で低信号、脂肪抑制T2強調像あるいはSTIRで高信号)が見られます。
症例 40歳代女性 右股関節痛
MRIの冠状断像です。
右大腿骨頭から頸部にかけてT1強調像で広範なまだらな低信号、STIRで著明な高信号を認めています。(反対側と比べると異常がわかりやすいですね。)
関節裂隙の狭小化や骨折を疑う所見は認めず、一過性大腿骨頭萎縮症と診断されました。
骨シンチグラフィ
骨スキャン剤(放射性同位元素)を静脈注射して全身撮影し、骨破壊または作る状態にある部位を特定する検査ですが、それによって、大腿骨頭から頚部にかけて均一な集積が確認できます。
症状の項目で述べたように、症状の改善に伴い、検査所見も改善します。
一過性大腿骨萎縮症と同様に軟骨下脆弱性骨折が見られる大腿骨頭壊死の場合は、アルコール・薬物・疾患などの原因があり、両側に症状が現れることもあり、初期には特異的な所見が確認できません。
また、一過性大腿骨萎縮症とは異なり、症状が進行する点で鑑別になります。
一過性大腿骨頭萎縮症の治療法は?
一過性のため、保存療法で改善を待ちます。
- 安静
- 薬物療法(鎮痛薬)
- 歩行補助(杖の使用)
などの対処療法が主体となります。
参考文献:骨軟部疾患の画像診断 第2版P26・27
最後に
- 大腿骨頭内の骨髄に浮腫が生じることで、骨粗鬆症を来たし、症状が出現する
- 痛みや跛行などが主な症状で、一過性である
- 妊娠後期の女性に好発するが、中年男性にも起こる
- 原因不明(明らかな外傷や誘因がない)
- X線検査やMRI検査、骨シンチグラフィを行い診断する
- 症状の改善に伴い、検査でも異常が認められなくなる
- 保存療法にて改善を待つ
- 大腿骨壊死の場合は、一過性でないため、症状が進行する
片側にのみ起こる疾患のため、一旦治っても反対側に同じ一過性大腿骨頭萎縮症が起こることはあります。
原因不明の疾患ではありますが、日頃からカルシウム摂取や片側のみに負担のかからない姿勢など、気をつけておきたいですね。