骨折した部位によって名称や症状、治療法など異なってきますが、上腕骨という上腕にある太い骨(肘より上の骨)の中心部に起こる骨折を、上腕骨骨幹部骨折といいます。
想像するからに痛そうな骨折ですが、治療には手術が必要なのでしょうか?
今回は、この上腕骨骨幹部骨折(読み方は「じょうわんこつこつかんぶこっせつ」英語表記で「humeral shaft fracture)」について
- 原因
- 症状
- 検査
- 治療
などを、図(イラスト)や実際のレントゲン画像、CT画像と共に分かりやすくご説明します。
上腕骨骨幹部骨折とは?
上腕骨とは、最初に申し上げた通り、腕の上側、肘より上の太い骨のことをいいます。
この上腕骨は、上から、骨端部・骨幹端部・骨幹部・骨幹端部・骨端部という構造に分けられます。
上腕骨の中心部分に位置する骨幹部で起こる骨折を、上腕骨骨幹部骨折といいます。
上腕骨骨幹部骨折の原因は?
この上腕骨骨幹部を骨折する原因としては、
- 交通事故
- 転落
- 転倒
- 投球
- 腕相撲
などがあります。
骨折の形状によって、横骨折・斜骨折・螺旋骨折・粉砕骨折などがあり・・・
上腕骨骨幹部骨折では、上腕骨の中央部に力が加わることによって起こる横骨折が最も多いものの、外側からの加わる力が大きすぎると粉砕骨折となってしまうこともあります。
また、転倒(手をついて転ぶ)・投球・腕相撲など、捻転力が加わることによって生じるものは、螺旋骨折や斜骨折となります。
上腕骨骨幹部骨折の症状は?
- 疼痛
- 圧痛
- 腫脹
- 変形
- 皮下出血
- 肩関節の可動域制限
などがありますが、橈骨神経麻痺を合併すると、下垂手が見られることもあります。
橈骨神経麻痺について詳しくはこちら。→橈骨神経麻痺の原因や症状、治療についてのまとめ
下垂手とは?
橈骨神経が麻痺することによって、手首の背屈と指の付け根の関節が伸ばせなくなる症状で、手と指が下がった状態(下垂)となります。
上腕骨骨幹部骨折の検査は?
- 単純X線
- 電気生理学的検査
を用います。
単純X線(レントゲン)
単純X線を用いて2方向から撮影を行い、骨折と転位の方向が確認できれば、診断に至ります。
3Dで再構成することで骨折の様子がわかりやすくなることからCT検査が撮影されることもあります。
症例 20歳代 男性
左の上腕骨骨幹部にらせん骨折(螺旋骨折)を認めています。
3D再構成されたCT画像ではその様子がよくわかります。
症例 50歳代 女性
左の上腕骨骨幹部に破砕骨折を認めています。
複数の骨片に転位を認めている様子が、3D再構成されたCT画像でよくわかります。
電気生理学的検査
上記でご説明した下垂手が見られる場合、橈骨神経麻痺が考えられるため、電気生理学的検査を行い、神経障害の有無を確認します。
関連記事)大腿骨頸部骨折とは?症状や診断、治療や予後のまとめ
上腕骨骨幹部骨折の治療は?手術が必要?
- 保存療法
- 手術療法
があります。
保存療法
ほとんどの場合は保存療法が選択され、必ずしも手術が必要なわけではありません。
保存療法では、
- ギプス包帯固定法
- ファンクショナブルブレースによる固定
などで、骨がくっつくのを待ちます。
手術療法
骨折の状態・活動度・ニーズなどに応じて手術が選択されることもあります。
手術を行うことで、保存療法よりも回復が早く、早期に腕を動かすことが可能になります。
上腕骨骨幹部骨折の手術としては、
- 髄内釘固定(ずいないていこてい)
- プレート固定
などが検討されます。
髄内釘固定
骨は構造的に、中心部が空洞になっていますが、その空洞部に髄内釘(インプラント)を入れて固定する方法です。
関連記事)【保存版】骨の成長の仕組み!骨芽細胞・破骨細胞とは?
プレート固定
皮膚を切開し、骨折した部位をプレートとスクリューでつなぎ合わせる方法です。
どちらも装着したままでも問題のないものですが、骨が繋がったら再手術を行いインプラントを取り出しますが、高齢者の場合、そのままにしておくこともあります。
症例 30歳代 男性
右上腕骨にらせん骨折を認めており、プレート固定が行われました。
その後、骨が繋がった段階でプレートが除去されました。
参考文献:整形外科疾患ビジュアルブック P250・251
参考文献:全部見えるスーパービジュアル整形外科疾患 P234
最後に
- 上腕骨の中心部分に位置する骨幹部で起こる骨折を、上腕骨骨幹部骨折という
- 交通事故・転落・転倒・投球・腕相撲などが原因となる
- 疼痛・圧痛・腫脹・変形・皮下出血・肩関節の可動域制限などの症状が現れる
- 橈骨神経の麻痺を合併すれば下垂手をまねくこともある
- 単純Xで骨折を確認し、診断する
- ほとんどの場合は保存療法
- 骨折の状態・活動度・ニーズなどに応じて手術が選択されることもある
保存療法で回復に時間がかかればそれだけ筋力も低下します。
そのため、高齢者の場合特に、筋力が低下してしまう前に、早期回復が望める手術を選択することが多くあります。