「甲状腺(こうじょうせん)の問題だね。」
「甲状腺が腫れてるね。」
「甲状腺にしこりがあります。」
などと病院で言われることがありますが、この甲状腺の場所がどこなのかハッキリわからない方、多いのではないでしょうか?
また、甲状腺の問題といっても、病気も色々あります。
そして、似たような名前で、副甲状腺(ふくこうじょうせん)というものも・・・
そこで今回は、甲状腺(英語表記で「Thyroid gland」)について
- 甲状腺の場所
- 副甲状腺の場所
- 病気
- 痛みが出る場所
などをわかりやすく図や実際のCTやエコーの画像と共に解説したいと思います。
甲状腺の場所はここ!
甲状腺はどこに位置するのかというと、
- 喉・喉仏の下付近(前頸部)に
- 気管の前と側面を取り囲むように
にあります。
と言ってもイメージしにくいかもしれません。
40歳代の男性の頚部単純CTの横断像(輪切りにした画像)です。
気管の前や両側を取り囲むように甲状腺が存在しているのがわかります。
甲状軟骨や舌骨、食道、鎖骨との位置関係や前から見た冠状断像については動画で解説しました。
今回は男性の画像ですが、女性の場合も甲状腺の場所はほぼ同じです。
また、上の横断像をみてもわかりますが、甲状腺は皮膚のすぐ下に存在するため、超音波検査(エコー検査)でも容易に観察することができます。
下は、40歳代女性の甲状腺超音波検査の画像(正常例)です。
甲状腺は上のように真ん中の部分を狭部と呼ばれる部位があり、その左右に気管を取り囲むように右葉・左葉が存在しています。
超音波検査はベッドサイドで簡便に行うことができますし、CTのように被曝の問題もありません。
さらに、甲状腺についてはCTよりも超音波検査の方が通常得られる情報が多いのです。
ですので、甲状腺機能に異常があったり、痛みなどがある場合は、甲状腺の画像検査では超音波検査が最初に行われます。
甲状腺の大きさは?
この甲状腺の大きさは年齢によって異なり、成人で25g前後ほどで、男性の方が女性よりも低い位置に甲状腺があります。
甲状腺の働きは?
甲状腺はホルモンを作り出していますが、詳しくいうと、このホルモンにも2種類あり、
- 甲状腺ホルモン(濾胞細胞から分泌)・・・全身の物質代謝亢進に関係する
- カルシトニン(C細胞「傍濾胞細胞」から分泌)・・・血中のカルシウムイオンの濃度を低下させる
という働きをしています。
副甲状腺の場所は?
副甲状腺(英語表記で「Parathyroid」)は、上皮小体(じょうひしょうたい)ともいい、
- 甲状腺の背面
- 甲状腺の上下左右4ヶ所
にある米粒ほどの小さな臓器です。
ちなみにCTでは通常同定することができませんので、上のCTの画像でも副甲状腺は写っていません。
この副甲状腺もホルモンを分泌しますが、この副甲状腺ホルモンはカルシウム代謝の仲介をする働きをしています。
甲状腺や副甲状腺の病気はどんなものがある?
甲状腺の病気
- 甲状腺機能低下症:粘液水腫・クレチン病・橋本病・ヨード欠乏症など
- 甲状腺機能亢進症:バセドウ病・プランマー病・亜急性甲状腺炎・TSH産生腫瘍など
- 甲状腺がん
などがあります。
副甲状腺の病気
- 副甲状腺機能亢進症:原発性副甲状腺機能亢進症・二次性副甲状腺機能亢進症
- 副甲状腺機能低下症
- 副甲状腺のう胞
などが代表的です。
また、甲状腺の病気は男性よりも女性に多い特徴があります。
甲状腺や副甲状腺の病気で痛みが出るのは?
甲状腺や副甲状腺の病気がある場合、喉に痛みが出ることもありますが、その痛みが周辺(耳の下や首の後ろ)にまで伝わることも・・・。
しかし、甲状腺の病気全てにおいて痛みが出るわけではなく、初期には症状がないことも多くあります。
また、痛み以外の症状としては
- 燕下障害
- 嗄声(声のかすれ)
- 呼吸のしづらさ
- しこり
などもありますが、一見甲状腺と関係ないように感じる
- 多汗
- 皮膚乾燥
- 動悸
- 体重増加または減少
- 気力低下
- 脱毛
- 徐脈
- 貧血
など、様々な症状が現れるのです。
これらの症状は甲状腺ホルモンが関与しています。
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最後に
甲状腺の場所について、ポイントをまとめます。
- 甲状腺は、前頸部・咽頭前面に付着する内分泌腺
- 喉・喉仏の下に甲状腺はある
- 副甲状腺は、甲状腺の背面・甲状腺の上下左右4ヶ所にある
- 甲状腺の病気は、甲状腺機能低下症・甲状腺機能亢進症・甲状腺がんなどがある
- 副甲状腺の病気は、副甲状腺機能亢進症・副甲状腺機能低下症・副甲状腺のう胞などがある
- 甲状腺の病気では、喉に痛みが出ることもある
甲状腺ホルモンは多くても少なすぎても問題です。
甲状腺の検査は、血液検査・エコー(超音波検査)・画像検査などでできるため、心配な症状がある際は一度検査をしてみることをオススメします。