副鼻腔に炎症が起こる「副鼻腔炎(ふくびくうえん)」という疾患はいわゆる蓄膿症(ちくのうしょう)であり、耳にしたことがある方は多いと思いますが、その中で好酸球の浸潤が特徴となる「好酸球性副鼻腔炎(こうさんきゅうせいふくびくうえん)」という疾患があります。
好酸球は、白血球の一種(顆粒球の1つ)で、アレルギー反応の制御を行う働きがありますが
「好酸球性副鼻腔炎は実際どのような状態なのか?」
「好酸球性副鼻腔炎に診断基準はあるのか?」
など、気になってきます。
そこで今回は、好酸球性副鼻腔炎(英語表記で「eosinophilic sinusitis」)について
- 原因
- 症状
- 診断基準
- 治療
を解説していきたいと思います。
好酸球性副鼻腔炎とは?
好酸球性副鼻腔炎は、副鼻腔の粘膜が
- 著しい好酸球の浸潤
- 洞内にニカワ様(ねば〜とした)物質の貯留
を特徴とする慢性の副鼻腔炎です。
この好酸球性副鼻腔炎全例が、気管支喘息を合併し、経過中にはしばしば好酸球性中耳炎を併発します。
- 成人以降で気管支喘息を発症→数年後に、好酸球性副鼻腔炎になる→さらに数年後、好酸球性中耳炎になる
というパターンが多くあります。
成人以降に発症することがほとんどで、好発年齢は40歳代。
小児期の発症は極めて稀となる疾患です。
好酸球性副鼻腔炎の原因は?
- 気管支
- 鼻副鼻腔
- 中耳
という気道全体の好酸球性炎症が原因と考えられています。
しかし、どうして炎症が起こるのかというと、副鼻腔粘膜で好酸球を呼び寄せるサイトカインが過剰に放出されるためですが、その原因は未だ不明です。
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好酸球性副鼻腔炎の症状は?
- 粘性や膿性鼻汁
- 鼻茸
- 鼻閉
- 嗅覚障害
- 頰部痛
- 歯痛
- 頭重感
- 後鼻漏
病変は両側性で、膿性鼻汁の量は多くないものの、ほぼ100%で鼻茸が生じ、それが大きくなると鼻閉に悩まされます。
しかし、嗅覚障害は早期から感じられるでしょう。
好酸球性副鼻腔炎の検査や診断基準は?
- 問診
- 病理組織的検査
- 血液検査
- 画像検査
などを行い診断します。
問診
いつから症状が出てきたのか、何かきっかけはあったのかなど、患者の状態を確認することは重要です。
病理組織的検査
副鼻腔の(鼻茸を含めた)病理組織で、粘膜固有層への好酸球浸潤や、基底膜の肥厚などを確認します。
血液検査
鼻血中好酸球数の著名な増多を確認できますが、
- 6%以上
- 400個/μl
になると、手術をしても経過が不良とされます。
画像検査
- 初期には、篩骨巣中心の副鼻腔陰影
- 進行すると、汎副鼻腔陰影
- 嗅裂の狭窄・閉鎖
- 著明な両側性びまん性軟部構造
などが確認できます。
- 成人発症
- 両側性副鼻腔病変
- CT 所見で上顎洞よりも篩骨洞の陰影が優位
- 主訴の中に嗅覚障害がある
- 内視鏡所見で鼻ポリープを認める
- 血中好酸球6%(300個/mL)以上もしくは副鼻腔組織中好酸球100個以上で好酸球優位
上記の6つの診断基準を満たす場合、好酸球性副鼻腔炎と診断されます。
好酸球性副鼻腔炎のCT,MRI画像の特徴は?
そのほか、好酸球性副鼻腔炎の場合、CTで内部に高吸収域を認めることがあります。
これは、アレルギー性ムチンを示唆する所見であり、石灰化よりはやや淡い特徴があります。
MRIでは、浮腫性に肥厚した粘膜がT1強調像では中等度の信号、T2強調画像では高信号を示し、アレルギー性ムチンを示唆する内腔は、T2強調画像で低信号を示すのが特徴です。
症例 60歳代女性
副鼻腔の単純CTの画像です。
篩骨洞〜中鼻道優位に粘膜肥厚を認めています。
内腔には淡い高吸収域を認めています。
両側の上顎洞にも粘膜肥厚あり。
一方で、下鼻道領域は粘膜肥厚は認めず、保たれています。
好酸球性副鼻腔炎と診断されました。
好酸球性副鼻腔炎の治療は?
治療としては、内視鏡下副鼻腔手術(ESS)と鼻茸切除術が第一選択となります。
しかし、鼻茸が効率に再発するので、その再発を覚悟して手術を行うことを考えなくてはなりません。
マクロライド療法は無効で、術後治療として、経口ステロイド投与(短期間)を行うと、副鼻腔粘膜の浮腫が改善します。
副鼻腔粘膜の浮腫が続く場合には、抗ヒスタミン薬とステロイド配合薬や、ロイコトリエン拮抗薬やTh2サイトカイン阻害薬(好酸球活性化抑制に効果がある)を用いることもあります。
また、再発した鼻茸に対しても、経口ステロイド薬の投与は効果的です。
参考文献:
STEP SERIES 耳鼻咽喉科 第3版P134・135
耳鼻咽喉科疾患 ビジュアルブックP151〜153
参考サイト:1)「第115回日本耳鼻咽喉科学会総会臨床セミナー」 好酸球性副鼻腔炎 : 診断ガイドライン
最後に
好酸球性副鼻腔炎について、ポイントをまとめます。
- 副鼻腔の粘膜が、著しい好酸球の浸潤・洞内にニカワ様物質の貯留を認めるのが特徴
- 気管支喘息を合併し、好酸球性中耳炎を併発する
- 40歳代に好発し、小児期の発症は稀
- 気道全体の好酸球性炎症が原因
- 粘性や膿性鼻汁・鼻茸・鼻閉・嗅覚障害などの症状が現れる
- 問診・病理組織的検査・血液検査・画像検査などを行い診断する
- 治療としては、内視鏡下副鼻腔手術(ESS)と鼻茸切除術が第一選択
難治性といわれる所以は、粘膜の浮腫や鼻茸が再発することが多いためですが、手術後のステロイド内服は有効となります。
しかし、副作用もあるので、注意しなくてはなりません。