健康診断や人間ドックで行われる聴力検査ですが、
「ピーピーピーと音が鳴って聞こえたらボタンを押す。」
くらいしか知らない方がほとんどだと思います。
そこで今回は、聴力検査について
- 何を調べているのか
- 聴力検査で異常となった場合、どのような原因・鑑別があるのか
などについてまとめました。
健康診断の聴力検査は何を調べている?
人は20ヘルツ(Hz)から20,000ヘルツ(Hz)までの音を聞くことが出来ると言われています。
健康診断の聴力検査では、
- 1,000ヘルツ(Hz):低音
- 4,000ヘルツ(Hz):高音
の2つの周波数の音を一定の音の大きさ(音圧という)で聞こえるかを検査しています。
なぜこの2つを調べているのでしょうか?
低音の1,000ヘルツ(Hz)の聴力検査の意義は?
この1,000ヘルツ(Hz)は日常会話の音域の代表とされる周波数なのです。
この周波数の音を30デシベル(dB)の音圧で測定します。
高音4,000ヘルツ(Hz)の聴力検査の意義は?
この4,000ヘルツ(Hz)は年齢とともに、聴力が低下した際に、早くから聴力が低下する周波数として知られています。
つまり、聴力低下の早期発見に向いているといえます。
この周波数の音を40デシベル(dB)の音圧で測定します。
(ただし学校保健として行われる場合は、25デシベル(dB)の音圧で測定します。)
検査周波数 | 1,000Hz | 4,000Hz |
学校検診 | 30dB | 25dB |
雇入時健診 | 30dB | 30dB |
その他の健診 | 30dB | 40dB |
この1,000Hzと4,000Hzの2つの周波数は、難聴がある場合に聞き取りにくくなるため、この2つを検査するだけで難聴の検査としては感度が高くなっています。
聴力検査の方法は?
耳鼻咽喉科での精密検査としての聴力検査は防音室で行われます。
しかし、健康診断や人間ドックでの聴力検査ではそのような部屋はなく、周囲にある程度の雑音がある環境で行われます。
検査方法は、受話器を耳に装着し、ピーピーピーと検査音が聞こえたら、応答スイッチを押します。
先ほど説明した、低音である1,000Hzと高音である4,000Hzの2つで検査されます。
右耳→左耳の順番で行われます。
聴力検査で異常となる原因は?鑑別は?
難聴は、
- 外耳〜中耳までの異常→伝音難聴
- 内耳〜聴覚野までの異常→感音難聴
の2種類に大きく分けられます。
伝音難聴
外耳〜中耳までに異常がある場合です。
逆に言えば、内耳に音が伝わりさえすれば、聞こえますので、補聴器の良い適応となります。
- 慢性中耳炎
- 滲出性中耳炎
- 真珠腫性中耳炎
- 頭部外傷(耳小骨離断、鼓膜穿孔)
- 耳硬化症
などが原因となります。
感音難聴
内耳〜聴覚野までのどこかに異常がある場合です。
内耳や中枢の異常により、生じる難聴を言います。
片側の感音性難聴では、
- メニエル病
- 外リンパ瘻
- 聴神経腫瘍
などが原因となります。
一方両側の感音性難聴では、
- 老人性難聴:加齢による
- 騒音性難聴:騒音による
- 薬剤性難聴:使用している薬剤による
などが挙げられます。
加齢による老人性難聴の割合は?
老人性難聴は、加齢による難聴で、高音域から障害されていきます。
普段の会話は、500-2000Hzで行われるため、自覚がない場合が多いとされます。
その程度には個人差がありますが、
- 65歳以上の25-40%
- 75歳以上の40-66%
にこの老人性難聴があるといわれています1)。
難聴を伴うことがある耳以外の病気は?
耳の病気以外であっても難聴を伴うことがあります。
具体的には、
- 自己免疫疾患
- ミトコンドリア病
- 糖尿病
- 心不全
- 不整脈
- 甲状腺腫
- 網膜色素変性症
- 色素異常
と難聴を併発することがあります2)ので、これらがないかをチェックすることも重要です。
聴力検査で異常を指摘された場合何科を受診すればいい?
聴力検査で異常を指摘された場合は、その原因を突き止め、場合によっては治療するために
- 耳鼻咽喉科
を受診することになります。
最後に
聴力検査と、聴力検査でひっかかった場合に考えられる原因などについてまとめました。
「毎年ひっかかっていなかったのに、今年になって初めて引っかかった。」
「めまいや頭痛などの症状を伴っている。」
などの場合、真珠腫性中耳炎など何か病気が隠れている可能性があります。
そのような場合は、速やかに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
参考文献:
1)JAMA 289(15):1976-1985,2003
2)健診データで困ったら (医学書院)P22