熱が出たり喉に痛みがあり、医療機関を受診した際
「扁桃腺が腫れているね。」
「扁桃腺が赤いね」
などと言われることがありますよね。
喉を見られるので、喉のどこかだろうとわかるものの、ココが扁桃腺!とピンときていない方意外と多いですよね。
そこで今回は、扁桃腺(へんとうせん・英語表記で「tonsil」)について
- 場所
- 働き
- 手術となる場合
などを図(イラスト)と実際のPET-CTの画像を解説していきたいと思います。
扁桃腺とは?
扁桃腺というと、一箇所をイメージされる方が多いですが、実は扁桃腺は4つの部位からなっています。
すなわち、扁桃腺には
- アデノイド(咽頭扁桃(いんとうへんとう))
- 耳管扁桃(じかんへんとう)
- 口蓋扁桃(こうがいへんとう)
- 舌根扁桃(ぜっこんへんとう)
の4つがあり、これらを総称して扁桃腺といいます。
このうち医療機関で口を開けて、腫れていないかを見てもらうのは口蓋扁桃です。
他のものは奥にあるので口を開けた状態では観察することはできません。
これを踏まえて、次に場所を説明しますね。
扁桃腺の場所はココ!
先ほど説明しましたように、扁桃腺はアデノイド・耳管扁桃・口蓋扁桃・舌根扁桃がありますので、それぞれに分けて説明します。
アデノイド
アデノイドは咽頭扁桃(いんとうへんとう)ともいい、鼻腔からつながった天井部、上咽頭の咽頭円蓋粘膜下に位置します。
耳管扁桃
耳管扁桃は、先ほど説明しましたアデノイドの側壁にあります。
口蓋扁桃
この口蓋扁桃(こうがいへんとう)が普段、医療機関を受診した際に、扁桃腺が腫れているなどと言われる部位です。
口蓋扁桃は口蓋垂(読み方は「こうがいすい」別名:のどちんこ・喉彦・上舌)の横(両サイド)に位置するものです。
下の図のように口を開けると左右に見ることができます。
この口蓋扁桃は、5〜6歳頃に最も発達し(生まれた頃は小さくこの頃に最大の大きさになる)、成長とともに萎縮していきます1)。
感染を起こすとこの口蓋扁桃が腫れているのを見ることができます。
さらに周囲に膿(うみ)を形成した状態を扁桃周囲膿瘍と言います。
この口蓋扁桃はPET検査で生理的な集積を認めることが知られており、正常の状態でもPET検査で光っている(集積を認めている)点を確認することができます。
症例 50歳代男性 人間ドック
左側はPET画像とCT画像を融合させたPET-CT画像の横断像です。
下顎骨のレベルで、両側に口蓋扁桃が光っているの(FDGの集積)が見えます。
一方で右側の画像はPET画像で前から見た画像です。脳の下に左右に上下に伸びる集積を認めています。
口蓋扁桃への生理的な集積の画像です。
こちらの画像を動画でチェックする。
舌根扁桃
舌根扁桃(ぜっこんへんとう)は、読んで字のごとく、舌の根元、口蓋垂の奥にあります。
舌の下の方にありますので、口を開けても観察することはできません。
4つある扁桃腺の中で、口を開けて観察できるのは、口蓋扁桃だけです。
扁桃腺の働きは?
扁桃腺は、外部から侵入した病原体に対する免疫に関与する働きがあるといわれています。
しかし、その役割は現在も詳しいことは解明されていません。
謎多き扁桃腺、しかし、手術で扁桃腺を切除しても、免疫には大きな影響はないことが多いとされています。
扁桃腺手術をする場合とは?
慢性扁桃炎で
- 反復性扁桃炎(扁桃炎を繰り返す場合)
- 病巣感染が疑われる場合
- 扁桃周囲膿瘍が反復する場合
などで、扁桃腺摘出手術が検討されます。
扁桃炎はよくある疾患で、多くの人が人生に何度も体験します。
扁桃腺(口蓋扁桃)が炎症を起こし肥大する病態を「扁桃炎(急性扁桃腺炎)」といいますが、
- 発熱
- 咽頭痛
- 嚥下時痛
- 放散性耳痛
- 頸部リンパ節圧痛
などの症状を伴います。
そして、抗生剤などの薬物療法を重症度に応じて選択しますが、この扁桃炎を繰り返したり持続する場合、「慢性扁桃炎」となるのです。
参考文献:
耳鼻咽喉科疾患 ビジュアルブックP31・32・177〜181
解剖学講義P607〜609 1)608
イラスト解剖学P275
最後に
扁桃腺について、ポイントをまとめます。
- 扁桃腺は、アデノイド・耳管扁桃・口蓋扁桃・舌根扁桃の総称
- アデノイドは上咽頭後壁にある
- 耳管扁桃は、アデノイドの側壁にある
- 口蓋扁桃は、口蓋垂の両サイドにある
- 舌根扁桃は、舌の根元、口蓋垂の奥にある
- 外部から侵入した病原体に対する免疫に関与する働きがある(詳しくは不明)
- 慢性扁桃炎では、扁桃腺摘出術が検討されることもある
扁桃腺は、よく腫れる、腫れたら熱が出るというイメージがありますよね。
しかし、繰り返す人は、この扁桃腺により頻繁に熱が出て苦しむ羽目になるのです。
そうなると、いっそのこと手術で扁桃腺を切ってしまおうというのもわかりますよね。