耳鼻科疾患の一つに、コレステリン肉芽腫(にくげしゅ)というものがあります。
コレステリン?と疑問を持たれると思いますが、コレステロールのことです。
そのコレステロールが、この病気とどう関係してくるのでしょうか?
今回は、このコレステリン肉芽腫(英語表記で「cholesterol granuloma」)について
- 原因
- 症状
- 診断
- 治療法
をまとめました。
図(イラスト)やCTやMRI画像と共に、わかりやすく解説していきたいと思います。
コレステリン肉芽腫とは?
中耳腔などにコレステロール(コレステリン)の結晶が個体として現れることで、異物反応として肉芽腫を生じる疾患です。
肉芽腫が生じることによって、鼓室や乳突洞は茶褐色の液体で充満するために、含気腔が失われます。
また、出血を繰り返すことで、その分、肉芽腫も増大するという悪循環に陥るのです。
コレステリン肉芽腫の原因は?
出血の原因は、子供の頃から滲出性中耳炎や急性中耳炎を何度も繰り返していることで、それが時間をかけてコレステリン肉芽腫を形成するといわれています。
そのため、年長児〜成人に好発し、ほとんどは片側性です。
- 繰り返す滲出性中耳炎や急性中耳炎
- 血液の血漿成分が分解
- コレステリン結晶
- 異物反応で肉芽組織(異物肉芽腫)が形成
また、
- 側頭骨(鼓室内・乳突洞・乳突蜂巣・錐体尖部)
- 副鼻腔
など、狭い部分に生じます。
コレステリン肉芽腫の症状は?
- 耳閉塞感
- 耳漏
- 伝音難聴
最初に解説した通り、茶褐色の液体が出たり(耳漏)、耳が詰まったような閉塞感、耳の聞こえにくい伝音性難聴が現れます。
コレステリン肉芽腫の検査・診断は?
- 耳鏡検査
- 画像検査(CTやMRI)
- ティンパノグラム
- 純音聴力検査
などの検査を行い診断します。
耳鏡検査
- 貯留液によって膨隆した鼓膜
- 凹凸(鼓室内の肉芽腫によって)
- 特有の暗青色
などを確認できます。
茶褐色の液が鼓膜を通すことによって、暗青色に見えるのが特徴でもあります。
画像検査
貯留液が乳突洞を埋め尽くす軟部組織陰影として描出できます。
真珠腫などと合併していないかどうかも、画像検査をすることでわかり、耳小骨の状態を確認することも重要です。
症例 30歳代男性
真珠腫性中耳炎にて右鼓室形成術後です。
乳突蜂巣にCTで軟部陰影を認めています。
MRI画像検査では、T1WI、T2WIにて高信号を呈しており、コレステリン肉芽腫を疑う所見です。
ティンパノグラム
原則としてB型となります。
純音聴力検査
伝音性難聴が確認できます。
コレステリン肉芽腫の治療法は?
- 貯留液の排出(鼓膜換気チューブ留置術)
- 副腎皮質ステロイド内服薬
- 乳様突起削開術
などがありますので、それぞれについて解説します。
貯留液の排出(鼓膜換気チューブ留置術)
貯留液を排出することが重要で、鼓膜換気チューブ留置術をしますが、コレステリン肉芽腫は難治性で、耳漏が続くためなかなか乾燥しません。
副腎皮質ステロイド内服薬
異物反応の抑制には、副腎皮質ステロイド内服薬が有効なものの、単独で使用しても限界があります。
そのため、貯留液の排出(鼓膜換気チューブ留置術)と副腎皮質ステロイド内服薬の併用が、標準治療として多く実施されているのです。
乳様突起削開術
上記の方法でもなかなか改善しない場合、乳様突起削開術を行い、肉芽腫の除去を行います。
しかし、なかなか完全に切り取ることは困難で、取り残しがあると再発することもあります。
関連記事:STEP SERIES 耳鼻咽喉科 第3版P66
参考サイト:中耳コレステリン肉芽腫症の治療方針
最後に
コレステリン肉芽腫について、ポイントをまとめます。
- 中耳腔にコレステロールの結晶が個体として現れることで、異物反応として肉芽腫を生じる疾患
- 血漿成分(血液)を材料にコレステリン結晶が形成される
- 子供の頃から滲出性中耳炎や急性中耳炎を何度も繰り返していることが原因となる
- 年長児〜成人に好発し、ほとんどは片側性
- 耳閉塞感・耳漏・伝音難聴などの症状がある
- 耳鏡検査・画像検査(CTやMRI)・ティンパノグラム・純音聴力検査
- 貯留液の排出(鼓膜換気チューブ留置術)・副腎皮質ステロイド内服薬・乳様突起削開術などの治療法がある
痛みはないものの、放置していても自然に治ることはありません。
そのため、早期に気づき、治療することが重要です。