中耳炎になると、耳痛を伴い、発熱を伴うこともありますが、それが慢性化したものを「慢性中耳炎」といいます。
頻繁に中耳炎になるということ?
慢性と聞いても、どのようなものをいい、なぜなるかなど、原因もピンときませんよね?
そこで今回は、慢性中耳炎(読み方は「まんせいちゅうじえん」英語表記で「Chronic otitis media」)について
- 症状
- 原因
- 診断
- 治療法
を、図(イラスト)と実際のCT画像を用いて、わかりやすく解説したいと思います。
慢性中耳炎とは?
中耳炎が慢性化したために、鼓膜に穿孔を残すものを慢性中耳炎といいます。
慢性中耳炎の多くは、幼児期から急性中耳炎を繰り返したことが関係します。
中耳炎が慢性化すると、鼓室に肉芽ができてしまい、様々な症状が現れるのです。
関連記事)【画像あり】鼓膜穿孔(鼓膜損傷)の原因や症状、治療法まとめ!
慢性中耳炎の症状は?
- 耳漏(じろう)
- 鼓膜穿孔(こまくせんこう)
- 難聴
などの症状が特徴です。
中耳腔の化膿巣から膿性物質(ウミ)が分泌されるため、それが耳漏として断続的にみられ、鼓膜穿孔がいつまでも塞がりません。
難聴の程度は、炎症の程度・期間・鼓膜穿孔の大きさによって異なります。
また、急性増悪時・聴器癌合併時・頭蓋内合併症を伴う場合、耳痛も現れます。
慢性中耳炎の原因は?
- 急性中耳炎の不完全な治療
- 難治性の細菌感染
- 耳管機能不全
- 乳突蜂巣発育不全
- 抗生物質抵抗性の起炎菌(MRSAなど)
- 免疫力の低下
などが原因となります。
きちんと治らないままだった急性中耳炎が、慢性化するというわけです。
不完全な治療とは、鼓膜穿孔が閉鎖しないままに、慢性化してしまうというわけです。
慢性中耳炎の診断は?
耳鏡検査で、まずは鼓膜の状態を観察すると、鼓膜穿孔が確認できます。
CT検査
また、炎症を把握するには側頭骨CTが有用で、含気不十分の乳突蜂巣と、その内部に分泌物や肉芽を反映した軟部組織陰影が認められます。
症例 70歳代男性
CTの冠状断像(右側)の画像です。
鼓膜があるべきところに鼓膜が認められません。
いわゆる「鼓膜が破れた」状態である、鼓膜穿孔(鼓膜損傷)の所見です。
鼓膜は肥厚しており慢性中耳炎から鼓膜の穿孔が疑われます。
純音聴力検査
伝音難聴や混合難聴を認めることがあります。
慢性中耳炎の治療法は?
保存療法としては、
- 分泌物の吸引
- 鼓室洗浄
- 抗生物質の内服・点耳
などがあります。
とくに、耳管機能が不良な場合や、活動性の感染をコントロールできない場合、保存療法が選択されます。
手術療法として、鼓室形成術を行うことになります。
鼓室形成術
耳小骨には問題がなく、鼓膜のみに小さな穿孔が認められる場合、鼓膜形成術が行われます。
しかし、穿孔だけでなく、鼓室に肉芽を認める場合や耳小骨連鎖のない場合、鼓膜形成術のⅠ〜Ⅴ型が適応されます。
以下のようなものがあり、それぞれⅠ型〜Ⅴ型に分類され手術法が選択されます。
- Ⅰ型・・・鼓膜とツチ骨がつながっている
- Ⅱ型・・・鼓膜とキヌタ骨がつながっている
- Ⅲ型・・・鼓膜とアブミ骨がつながっている
- Ⅳ型・・・鼓膜とアブミ骨底板がつながっている
- Ⅴ型・・・鼓膜と前庭窓がつながっている
この術式の分類を、Wullsteinの分類といいます。
参考文献:
耳鼻咽喉科疾患 ビジュアルブックP65〜67
100%耳鼻咽喉科 国試マニュアル 改訂第4版P50・51
まとめてみた 耳鼻咽喉科P190
STEP SERIES 耳鼻咽喉科 第3版P59・60
最後に
慢性中耳炎について、ポイントをまとめます。
- 耳漏・難聴・鼓膜穿孔という症状が特徴
- 急性中耳炎の不完全な治療・難治性の細菌感染・耳管機能不全・乳突蜂巣発育不全・抗生物質抵抗性の起炎菌(MRSAなど)・免疫力の低下などが原因となる
- 耳鏡検査・CT検査・純音聴力検査などを行い、診断する
- 保存療法もしくは、手術療法が選択される
- 手術は、状態によって鼓室形成術Ⅰ〜Ⅴ型に分類される
急性中耳炎を繰り返すことはよくありますが、放置するとこのように慢性化してしまいます。
その都度しっかり治るまで、通院することが必要というのが、おわかり頂けたかと思います。
慢性中耳炎も放置すると、難聴が続き、日常生活にも差し支えが出るようになりますからね。