橈骨(とうこつ)は、2本ある前腕の骨のうち、太い方の骨のことです。
その橈骨の手首付近で起こる骨折が、橈骨遠位端骨折(読み方は「とうこつえんいたんこっせつ」)です。
この橈骨遠位端骨折は、転倒により起こることが多く、骨粗鬆症を有する閉経以降の女性や、小児に多い骨折です。
普段の色々なシチュエーションで使われる手首は、当たり前ですが、使えないと多くの不便を感じる部位でもあります。
そのため、「手術が必要なのか?」
などが気になってもきますが、まずは橈骨遠位端骨折が、どういう状態であるのかを知ることが大切です。
そこで今回は、橈骨遠位端骨折(読み方は「とうこつえんいたんこっせつ」英語表記で「distal radius fracture」)について、
- 分類
- 症状
- 診断
- 治療(手術)
など、実際のCT画像や図(イラスト)を用いて徹底解説したいと思います。
橈骨遠位端骨折とは?
橈骨遠位端骨折は、橈骨の遠位端(手首側側)に生じます。
- 転倒(手をついた際)
- スポーツによる外傷
- バイクや自転車などの交通事故
などが原因で起こります。
橈骨遠位端骨折の分類
この橈骨遠位端骨折は、骨折の状態により
- コレス骨折(Colles’ fracture)
- スミス骨折(Smith fracture)
- バートン骨折(Barton fracture)
- 粉砕骨折(Comminuted fractures)
に分類されます。
コレス骨折(Colles’ fracture)
骨折線が関節内に及ばない関節外骨折で、手首を背屈(背側に反った状態)した状態で手をついた際に生じるものです。
スミス骨折(Smith fracture)
こちらもコレス骨折同様、関節外骨折ですが、手首を掌屈(先ほどとは反対の内側に曲がった状態)して手をついた際に生じるものです。
バートン骨折(Barton fracture)
こちらは関節内骨折の一種で、掌側に生じるものを掌側バートン、反対の背側に生じるものを背側バートンと分類します。
粉砕骨折(Comminuted fractures)
他の骨折でもよく耳にするものですが、骨折により骨が砕けた状態となったものをいいます。
橈骨遠位端骨折の症状は?
- 手首の運動痛
- 腫脹
- 背掌屈制限
- 回内外制限
- フォーク状変形
手首の痛みや、動きに制限を生じるのが特徴です。
コレス骨折の場合に生じる特異的な変形が「フォーク状変形」で、掌を下にして置いた際に手首に凹みが生じたような(フォークを伏せて置いたような)状態に変形するものです。
関連記事)上腕骨遠位端骨折(顆上骨折、外顆骨折)の分類・手術まとめ!
橈骨遠位端骨折の診断は?
- 臨床所見
- X線検査
- CT検査
- MRI検査
などを行い診断します。
症状から、手首の骨折を疑います。
X線検査
骨折線を確認し、橈骨遠位端骨折と診断します。
CT検査
骨折の状態を確認し、上記で説明した
- コレス骨折
- スミス骨折
- バートン骨折(掌バートン・背側バートン)
- 粉砕骨折
に分類します。
症例 50歳代女性 転倒
左手関節CTで橈骨遠位端に骨折線あり。
骨片は複数あり、骨折した骨は手背側に転位を認めています。
3DCTではその様子がよくわかりますね。
コレス骨折(Colles’ fracture)の所見です。
症例 30歳代女性 転倒
右手関節CTで橈骨遠位端に骨折線あり。
先ほどの症例と同じように骨片は複数あり、骨折した骨は手背側に転位を認めています。
コレス骨折(Colles’ fracture)の所見です。
MRI検査
手首関節内軟部組織損傷を確認するには、MRIが有用です。
橈骨遠位端骨折の治療は?手術は必要?
治療法は、保存療法や手術療法があります。
保存療法
徒手整復(正しい位置に整復)した後に、ギプスで固定します。
個人差はありますが、4〜6週間ほどレントゲンで骨がついたのを確認できるまで固定が必要です。
手術療法
整復が難しい・整復位の保持が難しい場合、骨折部が転移した場合、手術適応となります。
手術方法として
- 経皮的鋼線固定術
- 手関節鏡視下支援手術
- プレート固定術
などがありますが、ロッキングプレートを用いたプレート固定術が、橈骨遠位端骨折の手術療法として多く行われます。
プレート固定術は、プレートとスクリューが一体化するため、従来のプレートによる固定よりもしっかり整復され、頑丈に固定できます。
症例 50歳代女性 上の1つ目の症例と同一症例
左手関節のレントゲン写真です。
コレス骨折に対して、プレート固定術が施行されました。
参考文献:整形外科疾患ビジュアルブック P270〜274
参考文献:全部見えるスーパービジュアル整形外科疾患 P246・247
最後に
橈骨遠位端骨折には、治療後に合併症を生じる場合もあります。
合併症には、筋肉壊死・皮膚トラブル・神経障害などがあるため、
- 腫れが増した
- 痛みが増した
- 術後の患部の変化
が見られる場合には、症状を我慢せずに、治療を行った病院で相談しましょう。