日常生活にも支障をきたすような腰痛が起こる疾患の1つに、変形性腰椎症というものがあります。
その字のごとく、腰椎に変形をきたす疾患なのですが、腰痛以外にどのような症状が出現し、どのような治療法があるのでしょう?
今回は、変形性腰椎症(読み方は「へんけいせいようついしょう」英語表記で「lumbar spondylosis」)について
- 症状
- 原因
- 診断
- 治療法
を、MRI画像を交え、分かりやすく解説したいと思います。
変形性腰椎症とは?
腰椎の退行変化によって、腰痛などの症状をきたすようになる疾患の総称を変形性腰椎症といいます。
上の図のように主に
- 椎間板の変性(腰椎椎間板ヘルニアなど)
- 椎体の変性
- 椎間関節の変形性関節症
の3つの要素から変形性関節症は起こります。
椎間板変性から椎間不安定性・骨棘が形成され、椎間関節や靭帯の負担が増えるために起こるものです。
変形性脊椎症についての詳しい記事はこちら→変形性脊椎症とは?4つに分けて図で徹底解説!
変形性腰椎症の症状は?
腰痛の他に、臀部痛などが主な症状となります。
この症状は、
- 起床時
- 立ち上がるとき
- 重いものを持ち上げる時
- 長時間同姿勢時
などに起こる場合が多くあります。
そのため、日常生活に支障を来たし、特に布団で就寝している場合には、起き上がるまでに時間がかかるようになります。
神経組織を圧迫する脊柱管狭窄へと進行し脊髄を圧排すると、下肢痛・しびれ・筋力低下、神経性間欠性跛行や膀胱直腸障害などが現れます。
変形性腰椎症の原因は?
加齢が原因となるといわれています。
また、遺伝や活動性(同じ動きを長時間する作業が多い)なども関係します。
変形性腰椎症の診断は?
X線検査やMRI検査を行い診断します。
X線検査
- 椎間板の狭小化
- 骨棘形成
- 骨硬化像
- 間接肥厚像
- すべり変性
- 後彎・側彎変形
などが分かります。
MRI検査
神経症状が見られる場合には、他の疾患との鑑別を行うのに、MRIは有用です。
症例 40歳代男性
L2/3~L5/S1において椎間板の変性を認めています。
L4/5を中心に後方への膨隆を認めており、脊柱管の狭窄を認めています。
L4/5では神経孔型の椎間板ヘルニアを認めています。
変形性腰椎症の治療は?
保存療法で効果が見られなければ、手術療法を検討します。
保存療法
- 薬物療法(NSAIDs)
- ブロック療法
- 温熱療法
- 牽引療法
- 装具療法
- ストレッチ
安静にしすぎるのは逆効果となります。
程よく筋力を増強させるために、ストレッチを行うことも重要です。
また、生活指導として、腰の負担を軽減させるために
- 体重コントロール
- 無理な姿勢での動作を回避
- 長時間同姿勢での作業を回避
なども大切です。
手術療法
基本的には保存療法での治療が主となりますが、強い腰痛が改善しない場合、脊柱管狭窄を来たしている場合には、手術が検討されます。
手術では、神経への圧迫を取り除くため、除圧術が選択されます。
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参考文献:整形外科疾患ビジュアルブック P327・328
参考文献:全部見えるスーパービジュアル整形外科疾患 P278・279
最後に
- 腰椎の退行変化によって、腰痛などの症状をきたすようになる疾患の総称を変形性腰椎症という
- 腰痛や臀部痛が出る
- 脊柱管狭窄を伴うと、様々な神経症状が出る
- 加齢が原因
- X線検査やMRI検査を行い診断する
- 保存療法が基本
- 効果が見られない(腰痛がひどい)・脊柱管狭窄症状がある場合には、手術療法を検討
安静にしすぎると、筋力が落ちてしまい、逆に症状は改善しても高齢の場合動けなくなる・動くのが億劫になるということがあります。
そのため、適度な筋力増強のためのストレッチ等を行いつつ、日常生活を送る上で痛みを増強させる動作を控えることが改善への道となるでしょう。