頭蓋底の解剖で場所が少しややこしいものの一つに翼口蓋窩(よくこうがいか)」があります。

この翼口蓋窩は副鼻腔と周囲の主要臓器を結ぶ交差点的な役割を果たします。

窩(か)という文字から、そこが穴・空間という想像はできますが、これがどこについて述べているのかなかなか難しいですよね。

そこで今回は、翼口蓋窩(英語表記で「Pterygopalatine fossa」)について

  • 翼口蓋窩とは?
  • 翼口蓋窩の解剖
  • 翼口蓋窩に起こる問題

などを、図とともに解説したいと思います。

翼口蓋窩とは?解剖や場所は?

翼口蓋窩は、縦長い脂肪で満ちた間隙(空間)のことで、さまざまな骨で形成されています。

解剖学的な場所としては、側頭下窩(頬骨弓内側下方の空間)よりも少し内側にあります。

眼球のある眼窩のすぐ後方に位置すると言った方がわかりやすいかもしれません。

ですので、翼口蓋窩は目の奥の方にある!と大まかに覚えましょう。

 

さまざまな骨で形成されていると申し上げましたが、具体的には、翼口蓋窩は、

  • 上顎骨体の後縁・口蓋骨、眼窩突起の一部
  • 蝶形骨、翼状突起
  • 口蓋骨、垂直板
  • 三角形の間隙で、下半分は骨膜によって閉鎖
  • 蝶形骨体
  • 上顎骨体・蝶形骨、翼状突起・口蓋骨、錐体突起

などの骨によって構成されています。

 

翼口蓋窩、たくさんの骨で構成されすぎてややこしすぎですよね・・・。

 

翼口蓋窩はどんな形なの?
形状としては、上部はやや膨大し、下部は細く翼口蓋管と呼ばれます。

 

(左の翼口蓋窩を前から見たイラスト)

解剖的に、上下壁・内外側壁・前後壁を持つ長6面体と考えられます1)

そして、上のイラストのようにそれぞれの孔や管を介して

  • 眼窩
  • 鼻腔
  • 口腔
  • 外頭蓋底
  • 中頭蓋窩

などと交通(交叉路)しているのです。

ですので、翼口蓋窩は、副鼻腔と周囲の主要臓器を結ぶ交差点ともいえる場所ですね。

翼口蓋窩にあるもの、通るものは?

翼口蓋窩のほとんどは脂肪組織ですが、その脂肪に守られて、

  • 上顎神経(三叉神経第2枝:V2)
  • 翼口蓋神経節
  • 顎動脈の末梢

があります。

上顎神経は三叉神経の枝ですが、Meckel腔の三叉神経節から分かれて正円孔を通り、前下方にある翼口蓋窩へと進んできます。

翼口蓋神経節は5mm程度の扁平な神経節で、上顎神経にぶら下がるように翼口蓋窩の一番上(翼口蓋窩天蓋部)に位置します。

顎動脈は外頸動脈の終枝の1つです。その末梢は側頭筋と外側翼突筋の間を走行して、翼口蓋窩に至ります。

翼口蓋窩の画像所見は?

翼口蓋窩のほとんどは脂肪組織ですので、T1強調像において翼状突起の脂肪髄と同等の高信号として、同定可能となります2)

(脂肪組織はT1強調像で高信号となります。)

CT画像においては脂肪組織は低吸収となります。またCTの場合は、骨の描出に優れているため、翼口蓋窩と連続する孔の描出がわかりやすいです。

実際のCT画像を見てみましょう。

症例 60歳代男性 頭部打撲

頭部CTの骨条件を上から下へと翼口蓋窩が描出されている部位を見ていきましょう。

まずは翼口蓋窩のほぼ上端である下眼窩裂が見える部位です。

続いて、前後方向を走行する正円孔との連続性がわかります。

蝶口蓋孔と内側で連続しています。

翼突管が見える部位です。

これらの連続性がわかりやすいように動画でチェックしてみましょう。

翼口蓋窩に起こりうる問題は?

ここに何かができるの?
位置関係からおわかりいただけるように、副鼻腔などの腫瘍や炎症の進展や波及経路となります。

どんな問題が生じるのかといえば、

  • 副鼻腔の良性腫瘍や炎症性病変の波及
  • 悪性腫瘍進展

などが起こりうる場所です。

悪性腫瘍の中でも頻度が高い上顎洞扁平上皮癌の頭蓋内進展経路として、

翼口蓋窩→下眼窩裂→眼窩内へ進展
翼口蓋窩→上眼窩裂→海綿静脈洞へ進展

が挙げられます。

翼口蓋窩を介して眼窩内海綿静脈洞へと進展するということです。

また、同じく悪性腫瘍である小唾液腺由来の腺様嚢胞癌は、神経周囲に沿って頭蓋内に進展(神経周囲進展)するため、神経の交叉路である翼口蓋窩を注意深く画像診断で観察することが重要とされます。

 

参考文献:
1)画像診断1988年10月 胆道癌の画像診断P77〜85
2)画像診断2000年5月 臨床に役立つ3次元画像P577・578

最後に

ポイントをまとめます。

  • 側頭下窩よりも少し内側にある縦長い脂肪で満ちた間隙(空間)のこと
  • 上下壁・内外側壁・前後壁を持つ長6面体
  • 眼窩・鼻腔・口腔・外頭蓋底・中頭蓋窩などと交通(交叉路)している
  • 副鼻腔と周囲の主要臓器を結ぶ交差点ともいえる場所
  • 副鼻腔などの腫瘍や炎症の進展や波及経路となる

 

翼口蓋窩はたくさんの種類の腔と連続性を認めていることがわかりました。

ここを観察することで、それらの腔のどこかに異常が生じていることが見つかることがあります。

参考になれば幸いです(^o^)

関連記事はこちら