中耳炎というと、急性中耳炎・慢性中耳炎・反復性中耳炎・滲出性中耳炎・真珠腫性中耳炎・好酸球性中耳炎などの種類があります。

その中でも滲出性中耳炎は、なかなか症状に気づきにくく、また治りにくい中耳炎でもあります。

今回は、そんな滲出性中耳炎(読み方は「しんしゅつせいちゅうじえん」英語表記で「secretory otitis media」)について

  • 原因
  • 症状
  • 診断
  • 治療法

などを解説します。

滲出性中耳炎とは?

耳管の機能が低下したために鼓膜に空気が入らず、鼓膜内に陰圧が生じ内陥し、さらにその陰圧で血液から血漿の漏出が生じて鼓室(中耳)に滲出液が貯まるものを滲出性中耳炎といいます。

滲出性中耳炎は、3〜6歳の幼児に好発し、8歳を過ぎると有病率は激減します。

子供だけがなるものなの?
医師
そういうわけではなく、大人でもなりますが、患者数は子供の方が多いのです。

滲出性中耳炎は、中耳炎の中でも頻繁に起こるもので、就学前に90%が一度はなることが多いという報告もあります。

滲出性中耳炎の原因は?

耳管が狭窄したり、閉塞することが原因となり起こりますが

  • かぜ症候群
  • アデノイド増殖症
  • 副鼻腔炎
  • 急性中耳炎
  • 上咽頭癌
  • アレルギー

などが関係します。

大人の場合は、耳管狭窄が原因(上咽頭腫瘍によって耳管が閉塞して起こる)となることも・・・。

また、子供の場合は、口蓋裂であると滲出性中耳炎になりやすくもあります。

滲出性中耳炎の症状は?

  • 伝音難聴
  • 耳閉塞感
  • 自声強音

などが主な症状です。

耳は痛くならないの?
医師
耳痛はありません。

子供の場合は両側性大人の場合は片側性が多いのも特徴です。

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滲出性中耳炎の診断は?

耳鏡検査・ティンパノグラム・純音聴力検査などを行います。

医師
それぞれについて、解説します。

耳鏡検査

まず、診断において最も重要なのが鼓膜所見です。

  • 内陥(耳管狭窄症)
  • 滲出線(貯留線)
  • 気泡
  • 青色鼓膜(鼓室内の出血によりへモジデリンが沈着して鼓膜が青く見える様子)
  • glue ear(貯留液が粘調でこはく色を呈する)

などが確認できます。

ティンパノグラム

また、ティンパノグラムで検査を行い、鼓膜の可動性を確認し、B型もしくはC型を示します。

純音聴力検査

滲出性中耳炎では、純音聴力検査で伝音難聴を示し、気導聴力が全周波数減で悪くなる特徴があるので、それを確認します。

滲出性中耳炎の治療法は?

まずは、原因となっている疾患を治療することが重要です。

そして、子供の場合、副鼻腔炎や上咽頭の炎症で滲出性中耳炎となっていることが多いため、耳管の通りを良くする必要があります。

その際の治療薬として、去痰剤などの内服や、耳管通気を行います。

治療期間はどれくらいかかるものなの?

発症から3ヶ月は経過観察することが、推奨されていますが、なかなか治らない場合、手術療法が検討されます。

手術療法

滲出性中耳炎が両側かつ、発症から3ヶ月以上経過し、中等度以上の聴力障害がある場合、手術療法が検討されます。

手術としては、鼓膜を切開し、耳管の通りをよくするため、鼓膜換気チューブを留置する方法が一般的です。

その際、同時にアデノイド切除を行うこともあります。

チューブはどれくらい入れたままにするの?

難治化例でない限り、通常は2〜3年の留置となり、2年を超える場合には抜去することが推奨されています。

しかし、このチューブを入れている間は、定期的に聴力の評価をすることが必要です。

また、自然にチューブが取れることもありますが、その際問題なければ経過観察となります。

手術はしないといけないのでしょうか?

滲出性中耳炎を治らないまま放置していると、鼓膜が陥凹したまま癒着し、戻らなくなる癒着性中耳炎や真珠腫性中耳炎になることもあるので、しっかり治療することが必要です。

参考文献:
100%耳鼻咽喉科 国試マニュアル 改訂第4版P49
まとめてみた 耳鼻咽喉科P191
STEP SERIES 耳鼻咽喉科 第3版P56〜58
耳鼻咽喉科疾患 ビジュアルブックP68〜70

最後に

滲出性中耳炎について、ポイントをまとめます。

  • 鼓室(中耳)に滲出液が貯まるものを滲出性中耳炎という
  • 耳管が狭窄したり、閉塞することが原因
  • 耳痛はなく、伝音性難聴などの症状が出る
  • 耳鏡検査・ティンパノグラム・純音聴力検査などを行い診断する
  • 原因となっている疾患を治療することが重要
  • 3ヶ月以上経過し、中等度以上の聴力障害がある両側性の滲出性中耳炎の場合、手術を検討

 

子供の場合、うまく症状を訴えることができず、発見が遅れることもあります。

そのため、原因となる疾患がある場合や、聞こえていないんじゃ?という疑いを持った場合、一度耳鼻科を受診することをオススメします。

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