動脈は全身の細胞に血液を送る役割があります。
そんな動脈の中に、終動脈(しゅうどうみゃく)と呼ばれる動脈があります。
この終動脈は普通の動脈とどう違うのでしょうか?
なぜこのような名前が着いているのでしょうか?
そこで今回は終動脈(英語表記で「end-artery」)について、
- そもそも終動脈とは何なのか
- なぜ終動脈と呼ばれるのか
- 終動脈の種類
- 終動脈がある場所はどこなのか
について図(イラスト)を用いてまとめました。
終動脈とは?
心臓から拍出される血液が流れる血管を動脈といいますが、この動脈には吻合(ふんごう)がある場合と、吻合枝(ふんごうし)を持たない場合があります。
吻合枝(ふんごうし)があるということは、要するに他の動脈ともつながっているということです。
他の動脈とつながりがあれば、その動脈に何らかの問題があって血液を送ることができなくなっても、つながりのある動脈から血液が送られます。
この場合の吻合枝による経路を側副血行路(そくふくけっこうろ)といい、その循環を側副循環(そくふくじゅんかん)といいます。
吻合枝を持たない場合、動脈が詰まれば、血液供給が絶たれることになります。
そして、虚血(きょけつ:血液が足りない状態)から変性・壊死(えし)に陥ります。
この壊死に陥ることを梗塞(こうそく)と言います。
そして、この吻合枝を持たない動脈を終動脈というのです。
つまり、他からの血流はなく、その動脈で終わりと言う意味です。
梗塞(こうそく)を起こす器官の動脈=終動脈ですね。
また、動脈が吻合を持っていても、吻合枝が細いと動脈の血行が遮断される場合があり、その際は吻合枝による血液供給が不十分となります。
そうして梗塞を生じることもあるのですが、このような動脈を機能的終動脈というのです。
つまり、
- 終動脈=吻合枝を持たず、血行が遮断されている動脈
- 機能的終動脈=吻合枝が細く、徐々に詰まって血行が遮断された場合の動脈
というわけです。
最初から吻合枝がない、徐々に詰まって吻合枝が遮断された・・・ここが大きな違いですね。
この機能的終動脈は、心臓・脾臓・腎臓などにみられます。
終動脈の場所は?どこにみられる?
- 脳
- 肺
- 肝臓
- 腎臓
- 心臓
- 脾臓
- 甲状腺
など。
脳梗塞、心筋梗塞と言う言葉を聞いたことがあると思います。
これらの臓器で梗塞に陥るのは終動脈であるためです。
たとえば、心筋梗塞は、心臓の冠状動脈が機能的終動脈で血行が障害され、心筋が変性壊死に陥るものです。
脳や心臓以外はあまり知られていませんが、
- 腎梗塞
- 脾梗塞
- 肺梗塞
といった用語も医療の現場ではよく使われます。
このうち脾梗塞についてはこちらにまとめています。→【CT画像あり】脾梗塞とは?症状・原因・診断・治療まとめ!
症例 70歳代女性
意識レベル低下、左半身麻痺で救急搬送された方です。
頭部CTが撮影されました。
左(向かって右側)の大脳半球が他の場所と比べて低吸収(黒く)になっているのがわかります。
左の脳梗塞(心原性脳梗塞)と診断されました。
参考文献:
解剖学講義 改定2版P22
第9版 イラスト解剖学P305・525
最後に
終動脈について、ポイントをまとめます。
- 吻合枝を持たない動脈を終動脈という
- 中でも最初から吻合枝がないのが終動脈で、徐々に詰まって吻合枝が遮断されたのが機能的終動脈
- 終動脈は、脳・肺・肝臓・腎臓・心臓・脾臓・甲状腺などに見られる
- 終動脈がある場所で、血流が途絶えると虚血(きょけつ)から壊死(えし)に至り、梗塞に陥る
- 梗塞で有名なのは脳梗塞、心筋梗塞であるが、それ以外にも肺梗塞、腎梗塞、脾梗塞などが起こりうる。
脳梗塞や心筋梗塞など、命に直結する怖いものですが、それには終動脈が関与しているわけです。
参考になれば幸いです。