下顎の左右にオトガイ孔という穴があります。
この穴には神経などが通っており、下顎付近の感覚を支配しています。
今回はそんなオトガイ孔(英語表記で「Mental foramen」)について
- オトガイ孔とは・その位置
- オトガイ孔を通る神経や血管
- オトガイ孔の神経を障害する病態
と言った点を中心に図(イラスト)や実際のCT画像や動画解説を交えながら解説しました。
オトガイ孔とは?位置は?
下のイラストのようにオトガイ孔は、下顎にある孔(穴)のことです。
このオトガイ孔は左右に1つずつあります。
自宅にあるガイコツのフィギュアでもきちんとオトガイ孔が確認できました。
より厳密な解剖学的な位置としては、
- 下顎体の外面で、第二小臼歯の下方約1cm
に、オトガイ孔はあります。
※ちなみに、新生児の場合、下顎骨は左右両半部に分かれて癒合していません。
これは、歯がまだ生えておらず、歯槽部が発達していないためです。
そのため新生児のオトガイ孔は、成人に比べると下顎体の下縁付近にあります。
オトガイ孔を通るものは?出る神経は?
このオトガイ孔には
- オトガイ神経
- オトガイ動脈
- オトガイ静脈
が通ります。
第5脳神経である三叉神経の第3枝(下顎神経)の枝である下歯槽神経が第2小臼歯付近で、切歯枝とオトガイ神経に分かれ、このうちオトガイ孔から下顎の骨外に出たものをオトガイ神経といいます。
三叉神経の第3枝である下顎神経は下のイラストのような顔の下1/3の感覚を支配します。
そして、オトガイ神経は、その中でも下顎付近の皮膚や歯肉を感覚を支配します。
ですので、この神経が何らかの原因で損傷を受けるとこの範囲の知覚異常を認めることになります。
実際のCT画像でオトガイ孔の位置を確認してみましょう。
症例 30歳代男性 外傷
顔面骨CTの横断像(輪切り)の骨がよく見える骨条件の画像です。
まず下顎骨の上の方で、下顎孔があり、ここから下歯槽神経は下顎骨内を走行します。
下顎骨内を前側・下側に走行し、骨外に出るところがオトガイ孔で、ここから出るとオトガイ神経と名前を変えます。
下歯槽神経はオトガイ神経以外に切歯枝として骨内で分岐します。
この様子を動画解説しました。
症例 50歳代男性 外傷
この症例でも下顎骨の両側にオトガイ孔があるのがわかります。
オトガイ孔の近くにある解剖は?
また、この下顎には、オトガイ孔の他に
- オトガイ隆起(下顎体前面の正中部にある隆起)
- オトガイ結節(オトガイ隆起の外下方)
- オトガイ棘(下顎体の内面で正中部にある小突起で、オトガイ舌節とオトガイ舌骨節の付着部)
など、オトガイと名のつく部位があります。
オトガイ孔に起こる問題は?
このオトガイ孔に起こる問題として、オトガイ神経麻痺による痺れ・痛み・違和感などの知覚異常を生じる疾患があります。
オトガイ神経麻痺の原因として
- 歯周病の進行
- 事故や転倒などによる下顎の骨折
- 下の歯のインプラント手術
- 下の歯の歯科治療時の麻酔
- 腫瘍(下顎歯肉腫瘍(扁平上皮癌など)、悪性リンパ腫など)
などが挙げられます。
参考文献:
解剖学講義 改定2版P517〜519
頭頸部のCT・MRI P276
頭頸部の画像診断 P340、P235
最後に
オトガイ孔についてまとめました。
- オトガイ孔は、下顎にある孔(穴)
- オトガイ神経・オトガイ動脈・オトガイ静脈がオトガイ孔を通る
- 下顎体の外面で、第二小臼歯の下方にオトガイ孔はある
- 新生児のオトガイ孔は、成人に比べると下顎体の下縁付近にある
- オトガイ神経麻痺を起こす原因は外傷や歯科関連、腫瘍などがある
お役に立てれば幸いです。