病理検査の1つに、細胞診(さいぼうしん)というものがありますが、細胞を診る(みる)とはどのような検査なのかご存知ですか?
また、同じように良性・悪性などを調べる際に行われる組織診(そしきしん)とは何が違うのか?
というのも気になってきます。
そこで今回は、細胞診(英語で「Cytology」)について
- 検査方法
- 組織診(英語で「Tissue diagnosis」)との違い
- 細胞診でわかる病気
などについても解説したいと思います。
細胞診とは?
病気の異常の疑いがある臓器の一部から細胞を採取し、標本を作製した後に顕微鏡で観察して色々な診断に行う検査のことを細胞診といいます。
その細胞が良性なのか悪性なのかを調べるために行います。
この細胞診には
- 剥離細胞診(はくりさいぼうしん):exofoliative cytology
- 穿刺吸引細胞診(せんしきゅういんさいぼうしん):aspiration cytology
- 術中細胞診(じゅっちゅうさいぼうしん):intra-operative cytology
という3つの方法があります。
剥離細胞診
剥離細胞診の中には、
- 喀痰(かくたん)
- 尿細胞診(にょうさいぼうしん)
- 口腔細胞診(こうくうさいぼうしん)
- 子宮頸部スメア
などがあり、上で述べた3つの方法の中で最も患者さんに侵襲の少ないスクリーニング細胞診として、人間ドック検診などでも多く行われる方法です。
喀痰とは文字通り、痰を出してもらいます。
尿細胞診は尿を提出すれば検査することができます。
口腔細胞診や子宮頸部スメアはそれぞれ口の中、子宮頸部から剥離して細胞を取ってきますので通常医師が行います。
穿刺吸引細胞診
- 唾液腺
- 甲状腺
- 乳腺
など皮膚から近い表在性臓器の腫瘤性病変に対して、良性・悪性を判定するために行われる検査です。
穿刺吸引とは、針をさして(穿刺する)、細胞を注射器で吸い出す(吸引する)ということです。
組織診のように組織を採って来るわけではないので、組織診よりは細い針(21-25G(ゲージ))ですが、針を刺すことには変わりありませんので、痛みを伴います。
細い針を用いた穿刺吸引であるため、英語でfine needle aspirationであり、頭文字をとってFNA(エフエヌエー)と医療の現場では呼ばれることもあります。
このように、通常は皮膚から近い表在性の臓器をターゲットとしますが、近年では、上部内視鏡(いわゆる胃カメラ)、気管支鏡を用いて、それぞれ膵臓や縦隔腫瘍の近くまでアプローチし、そこからエコーガイド下で穿刺吸引を行う
- 超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診(EUS-FNA:endoscopic ultrasonography-guided fine needle asiration)
- 超音波気管支鏡ガイド下穿刺吸引細胞診(EBUS-FNA:endobronchial ultrasound-guided fine needle asiration)
といった深部の臓器に対して穿刺吸引細胞診が行われることがあります。
ただしこれらは、上部内視鏡(いわゆる胃カメラ)、気管支鏡を用いて行いますので、侵襲を伴います。
術中細胞診
文字通り手術の途中で、細胞診を行うものです。
- 手術中に採取された腫瘍の本体の断端の細胞
- 手術中に得られてた胸水・腹水・心嚢液などの細胞
などの良悪性を判定するために行う検査です。
細胞診の検査結果は?
国際的に用いられている検査結果は、
- 陰性:異型細胞がない、もしくは認めるが良性が推定される
- 疑陽性:異型細胞を含み、良悪性の判定ができない
- 陽性:悪性と推定される異型細胞を含む
の3段階に分けられます。
ただし、子宮ガンは世界標準となっている「子宮頸部細胞診ベセスダシステム」、肺がんは日本肺癌学会の「肺がん検診における喀痰細胞診の判定基準と指導区分」に基づいて判定されます。
組織診とは?細胞診との違いは?
組織診は、臓器などの一部(組織)を切り取り、顕微鏡で観察する検査のことをいいます。
細胞診の場合は、こすったりして細胞のみを採って来るだけでしたが、組織診の場合は、組織を採取しなければならないため、より太い針や鉗子(かんし)を用います。
人間ドックなどでスクリーニング検査で行われる場合は消化管内視鏡検査時や子宮頸部検査などに限られます。
細胞診・組織診ともに、腫瘍が悪性か良性かを調べるための検査であり、とくに組織診はより多い情報が得られ、最終確定診断に重要です。
病変がある場所から検査を行う部位は
- 肝臓
- 腎臓
- 骨髄
- 筋肉
- 皮膚
- 肺
- リンパ節
- 胃
- 大腸
- 子宮
- 乳腺
などがあります。
肝臓の場合は肝生検、腎臓の場合は腎生検などと呼ばれます。
しかし、組織検体が十分採取できなかったり、採取できても不適正検体のみであることがあり、そのような場合には細胞診が最終確定診断として取り扱われることもあります。
最終的な悪性診断となるには、画像検査など他の検索でも悪性を示唆する所見が重要になります。
つまり、他の検査で悪性を疑う所見がない場合、もう一度全ての検査を再検討するか、組織診の検体確保を務める必要があるというわけです。
関連記事)
細胞診や組織診でわかる病気は?
細胞診でわかる病気
- 肺がん
- 膀胱がん
- 子宮頸がん
- 甲状腺がん
- 乳がん
- がんの転移
など、様々な部位のがんがわかります1)。
組織診でわかる病気
- 悪性腫瘍(胃がん・大腸がん・肺がん・乳がんなど)
- 炎症の分類(肝炎・腎不全・間質性肺炎など)
- 病原体(赤痢アメーバ・結核菌・カビなど)
また、これ以外にも、抗がん薬などの治療効果の判定にも有用です2)。
参考文献:
よくわかる検査数値の基本としくみP20・21
最新 健康診断と検査がすべてわかる本P 1)137 2)138
人間ドック健診の実際P192〜196
最後に
細胞診についてポイントをまとめます。
- 異常の疑いがある臓器の一部を細胞を採取し、顕微鏡で詳しく調べる検査を細胞診という
- 陰性・疑陽性・陽性という3段階の結果が出る
- 細胞診には、剥離細胞診・穿刺吸引細胞診・術中細胞診というものがある
- 臓器の一部を切り取り、詳しく調べる検査を組織診という
- 細胞診・組織診ともに良性悪性の判断に有用だが、組織診の方が確定診断となる
がんの診断に多く利用されるこれらの検査は、国際的にも多く用いられており、重要なものです。
ただし、人間ドックにおいてこれらの検査をする場合には、健診費用と別に料金がかかることもあるので注意しましょう。