腎機能検査の項目に、クレアチニン(Cr)eGFR(読み方はそのまま「イージーエフアール」)というものがあります。

ともに腎機能を示すのですが、

「両者はどう違うのか」
「どうだと異常なのか」
「異常ならばどんなことが考えられるのか」

人間ドックや健康診断の採血結果を前にして気になる方もおられます。

そこで今回は、腎機能を示すクレアチニンやeGFRについて、それぞれについて説明し

  • クレアチニンとeGFRの違い及び基準値
  • 慢性腎不全(CKD)の早期発見に適しているのはどちらであるか
  • また慢性腎不全(CKD)の早期発見がなぜ重要なのか

などを解説していきたいと思います。

クレアチニンとは?

筋肉の中にある、筋肉運動のエネルギーとして重要な働きをもつ物質がクレアチンですが、そのクレアチンが分解されてできた代謝産物(老廃物)クレアチニンです。

一文字違いでややこしいですが、クレアチン→分解→クレアチニンとなります。

このクレアチニンは、腎臓に運ばれ腎糸球体でろ過された後、ほとんど再吸収されることなく直接尿中へ排出されます。

しかし、腎臓の機能が悪いとしっかり排泄されずに、血液中に溜まってしまうのです。

つまり、腎機能が低下している場合には、血清クレアチニンの値(Cr)は上がってしまうということです。

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だから、腎機能検査として有用なのですね。

クレアチニンの基準値は?

クレアチニンの基準値は以下のようになっています。

  • 血清:(男性)0.6〜1.0mg/dL・(女性)0.5〜0.8mg/dL
  • 尿中:(男性)0.70〜2.20mg/day・(女性)0.40〜1.50mg/day

これよりも高すぎる場合、低すぎる場合、ともに異常値となります。

eGFRとは?

一方GFRとは、糸球体1分間あたりのろ過能力のことをいいます。

しかし、測定法が難しく、

  • 血清クレアチニン
  • 年齢
  • 性別

から概算式で算出したGFRを用いますが、それを「概算GFR=eGFR」というのです。

正式には、estimated glemerular filtration rateの頭文字をとってeGFRで、日本語では、推算糸球体濾過値となります。

その概算式はこちら。
医師
医師

  • 男性の場合、18歳以上であれば、eGFR=194×クレアチニン-1.094×年齢-0.287
  • 女性の場合、18歳以上であれば、eGFR=194×クレアチニン-1.094×年齢-0.287×0.739

となります。

計算しようとすると、かなりややこしい計算式ですね。

eGFRの基準値は?

  • eGFR≧60mL/分/1.73m2

が、基準値となります。

ただし、この値は加齢とともに低下するため、年齢も考慮して判断することが重要です。

 

クレアチニンとeGFRの違いは?どっちを見ればいい?

ともに腎機能の検査として用いられるクレアチニンとeGFRですが、どのような違いがあり、結局どちらを見ればいいのでしょうか?

実は、従来医療の現場では、クレアチニンを腎機能の指標としてみてきました。

ところが、このクレアチニンは、腎機能が50%以上に低くならないと異常値を示さない1)という欠点があります。

つまり、血清クレアチニンが低下する頃には、腎機能がかなり落ちているということであり、クレアチニンは腎機能低下の早期発見には適していないということがわかりました。

一方で、eGFRは早期の腎機能障害から数値が落ちてきますので、早期発見に適していると言えます。

そこで、現在ではクレアチニンの値よりもeGFRの値を見ることで腎機能障害の有無を判断するようになっています。

とくに、eGFRは慢性腎不全(CKD:Chronic Kidney Disease)の診断に用いられます。

慢性腎不全(CKD)の早期発見はなぜ重要か?

次に出てくる疑問として、このeGFRをみて、慢性腎不全(CKD)を早期発見することがなぜ重要なのかでしょうか?

実は、この慢性腎不全(CKD)は、

  • 透析が必要となる末期腎不全の予備軍
  • 心血管障害の発症のリスク

であるのです。

これらへ進展させないために、eGFRの値などで慢性腎不全(CKD)の早期発見が重要なのです。

 

クレアチニンやeGFRが異常な場合に考えられる病気は?

それぞれについて、考えられる病気を挙げていきます。
医師
医師

クレアチニンが高値の場合

  • 腎機能障害
  • 腎不全
  • 尿路閉塞
  • 脱水症
  • ショック
  • 心不全
  • 先端巨大症
  • 巨人症

などが考えられます。

クレアチニンが低値の場合

などがあります。

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eGFRが異常な場合

eGFR<60mL/分/1.73m2の場合、慢性腎臓病の可能性があります。

健診での腎臓専門医受診を勧める目安としては、

  • 高度タンパク尿(尿蛋白/尿Cr比が0.5以上または尿蛋白2+)
  • タンパク尿・血尿ともに陽性(1+以上)
  • eGFR < 50 mL/分/1.73㎡ (ただし、40歳未満では60未満、40歳以上69歳以下では50未満、70歳以上では40未満)

これらいずれかに該当する場合とされています1)

参考文献:
1)人間ドック検診の実際P153〜156
よくわかる検査数値の基本としくみP64・65
今日の臨床検査 2011ー2012 P203・204
最新 健康診断と検査がすべてわかる本P40・41

最後に

クレアチニンとeGFRについて、ポイントをまとめます。

  • クレアチニンは、クレアチンが分解されてできた代謝産物(老廃物)
  • eGFRは、腎臓の糸球体の働きを検査するもの
  • クレアチニンの基準値は、血清:(男性)0.6〜1.0mg/dL・(女性)0.5〜0.8mg/dL・尿中:(男性)0.70〜2.20mg/day・(女性)0.40〜1.50mg/day
  • eGFRの基準値は、eGFR≧60mL/分/1.73m2
  • 慢性腎不全(CKD)の早期発見にはeGFRが用いられる。
  • 慢性腎不全(CKD)は末期腎不全による透析導入や心血管障害のリスクとなるため、早期発見が重要である。

 

慢性腎臓病は、末期腎不全の予備軍でもあり、心血管障害発症のリスク因子ともなります。

つまりは、検査で早期診断と適切な管理をすることで、これらを予防することにもつながりますので、大事な検査といえるでしょう。

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