人間には左右の上腕に1本ずつ上腕骨が存在しますが、肘に近い部分を上腕骨遠位端といいます。

この上腕骨遠位端は、肘をついた時などに骨折しやすく、とくに小児の場合に多い骨折です。

そこで今回は、上腕骨遠位端骨折について

  • 原因
  • 症状
  • 診断(分類)
  • 治療(手術)

わかりやすく解説したいと思います。

上腕骨遠位端骨折とは?

上腕骨は、下の図のように上から上腕骨近位端・上腕骨骨幹部・上腕骨遠位端とに分けられます。

肘関節の周辺骨折では上腕骨遠位端骨折が最も多いもので、最初に説明しましたように、小児に多い特徴があります。

上腕骨遠位端骨折は、上腕骨下端部骨折とも呼ばれます。

上腕骨遠位端の解剖を細かく見ると次のようになります。

このうち、上腕骨遠位端骨折は、顆上部>外側顆>上腕骨内側上顆の頻度で起こります。

ですので、骨折を起こしやすい部位を図で示すと次のようになります。

  • 顆上骨折
  • 外顆骨折
  • 上腕骨内側上顆骨折

の部位を確認しましょう。

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上腕骨遠位端骨折の原因は?

落下や転倒などで手をついた際に、肘が過伸展され起こる伸展位型が95%です。

  • 鉄棒(落下)
  • 滑り台(落下)
  • スノーボード(転倒)

などでも起こります。

そのほか、骨粗鬆症が進んだ高齢者では、ちょっとした打撲や手をついた際に起こりやすい特徴です。

 

上腕骨遠位端骨折の症状は?

  • 疼痛
  • 腫脹
  • 神経・血管の圧迫症状

初期に起こる症状として、肘付近の強い疼痛や腫脹があります。

症状が進行すると、腕が動かせなくなり、神経や血管の圧迫症状をきたすようになります。

また、阻血性壊死(血流減少が原因で起こる壊死)になると、フォルクマン拘縮があらわれます。

フォルクマン拘縮とは?

血流が滞ることで、うっ滞や首長から屈折群の阻血性壊死となり、手が拘縮する症状で、循環障害の5P(疼痛・脈拍喪失・蒼白・感覚障害・運動麻痺)が特徴です。

小児の肘関節部外傷(上腕骨顆上骨折)に続いて起こることが多い。

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上腕骨遠位端骨折の診断(分類)は?

臨床症状のほか、X線検査を行い診断します。

X線検査では、骨折が起こった部位や状態により、

  • 顆上骨折では、阿部の分類
  • 外顆骨折では、ワズワース分類(Wadsworth)
  • 内側上顆骨折では、ワトソンジョーンズ分類

に、それぞれ分類されます。

顆上骨折の分類(阿部の分類)

  • Ⅰ型・・・転位なし
  • Ⅱ型・・・屈曲転位が主体
  • Ⅲ型・・・中等度の転位・骨片間に接触あり
  • Ⅳ型・・・転位が著明・骨片間に接触なし

さらに、

  • 血行障害によるしびれはないか
  • 手指の運動麻痺はないか
  • 手指の色(血行障害による)
  • 橈骨動脈の拍動
  • フォルクマン拘縮(5P)

を確認します。

外顆骨折の分類(ワグワース分類)

  • Ⅰ型・・・転移なし
  • Ⅱ型・・・側方転位あり
  • Ⅲ型・・・骨片の回転転位

内側上顆骨折の分類(ワトソン・ジョーンズ分類)

  • Ⅰ型・・・軽い転位
  • Ⅱ型・・・関節レベルまで骨片転位
  • Ⅲ型・・・関節内に嵌入
  • Ⅳ型・・・肘関節脱臼を伴う骨折

知覚運動障害をチェックすることも重要です。

上腕骨遠位端骨折の治療は?

保存療法もしくは手術療法が選択されますが、上記で説明しました分類により治療法が異なります。

保存療法

骨折の治療として、ギプスや装具で外固定を行い、骨がつながるのを待ちます。

  • 転位がみられない阿部Ⅰ型の骨折・・・90°屈曲位固定
  • 阿部Ⅱ型の骨折・・・100〜120°の屈曲位固定
  • ワグワース分類にて、転位が1mm以下・・・ギプス固定(4〜6週間程度)
  • ワトソン・ジョーンズ分類にて、Ⅰ型・・・ギプスシーネ固定

手術療法

骨折の治療や合併症の防止をおこないます。

  • 阿武Ⅲ型・Ⅳ型・・・全身麻酔下で、徒手整復・経皮的ピンニング
  • ワグワース分類にて、転位が2〜3mm以上・・・全身麻酔下に観血的整復固定術
  • ワトソン・ジョーンズ分類にて、Ⅱ〜Ⅳ型で整復が不可能な場合・・・観血的整復固定術

ほとんどのケースでは手術療法として、ロッキングプレートなどによる内固定がおこなわれますが、皮膚の上からピンや銅線で固定する経皮的ピニングを選択することもあります。

参考文献:整形外科疾患ビジュアルブック  P256〜259
参考文献:全部見えるスーパービジュアル整形外科疾患 P235
参考文献:100%整形外科P81

最後に

合併症であるフォルクマン拘縮を早期の段階で見逃さないことが重要です。

そのためには、5P症状をしっかりチェックすることが大切です。

中には、フォルクマン拘縮が重症化すると、筋膜切開などの手術が必要になることもあります。

骨折部の腫脹は6〜12時間でピークとなるため、ギプス固定後や手術療法後にも注意が必要です。

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