難治性中耳炎の1つに、好酸球性中耳炎というものがあります。
「急性中耳炎や慢性中耳炎、滲出性中耳炎なら知っているけど、好酸球性中耳炎って?」
と、ご存知ない方も多いですよね。
好酸球性中耳炎は、1995年に日本で提唱された新しい疾患です。
今回は、そんな好酸球性中耳炎(読み方は「こうさんきゅうせいちゅうじえん」英語表記で「Eosinophilic otitis media」)について
- 症状
- 原因
- 診断
- 治療
をわかりやすくまとめたいと思います。
参考にされてください。
好酸球性中耳炎とは?
中耳の粘膜に好酸球(白血球の一種である顆粒球の1つ)が浸潤し、にかわ状(ねば〜とした状態)の滲出液(中耳貯留物)が溜まってしまうのが、好酸球性中耳炎です。
難治性で、再発しやすい特徴にあり、さらに
- 好酸球性副鼻腔炎
- アレルギー性鼻炎
- 気管支喘息
が合併することが多くあります。
小児発症例の報告はほとんどなく、40〜60歳に好発します。1)
好酸球性中耳炎の症状は?
- 伝音性難聴
- 感音性難聴
- 耳閉感
- 耳鳴り
などの症状が現れますが、これはにかわ状のねば〜とした貯留液が鼓室にたまるためです。
好酸球性中耳炎の原因は?
アレルギー反応が鼓室粘膜に起こることで、好酸球性中耳炎になります。
先ほど、
- 好酸球性副鼻腔炎
- アレルギー性鼻炎
- 気管支喘息
が合併することが多くあると申しましたが、気管支喘息(アトピー型もあれば、非アトピー型もある)に至っては、ほぼ全例で合併します。
- 成人以降で気管支喘息を発症
- 数年後に、好酸球性副鼻腔炎になる
- さらに数年後、好酸球性中耳炎になる
というパターンが多くあります。
つまり、これらは1つの疾患であり、過程として複数の病態を発現すると考えられているため、「one way, on disease」と表現されます。
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好酸球性中耳炎の診断は?
- 耳鏡検査(鼓膜の観察)
- 細菌検査
- 純音聴力検査
- ティンパグラム
などを行います。
中耳貯留液を確認したら、その成分を分析し、細菌検査をすることが重要です。
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好酸球性中耳炎の治療は?
- 貯留液の除去
- 鼓室粘膜の好酸球浸潤を抑制
をする必要があります。
貯留液の除去
- ヘパリンを生理食塩水で希釈して耳浴
- 軟化したら、丁寧に除去
という工程が必要です。
貯留液の除去法としては、鼓膜を切開し、鼓膜換気チューブを留置する方法がとられることもありますが、すぐに詰まったり感染源となる問題点もあります。
鼓室粘膜の好酸球浸潤を抑制
また、鼓室粘膜の好酸球浸潤を抑制するためには、鼓室ステロイド(副腎皮質ステロイド)投与・全身投与が必要となることもあるのです。
この副腎皮質皮質ステロイドは効果的なものの、長期間服用すると様々な副作用をもたらすことがわかっています。
しかし、投与量を減らしてしまうと、病状は再び悪化するため、
- 病状が進行するケース
- 感音性難聴を併発したケース
に限定しては、全身投与を選択します。
参考文献:
STEP SERIES 耳鼻咽喉科 第3版P66〜68 1)66
耳鼻咽喉科疾患 ビジュアルブックP73・74
最後に
好酸球性中耳炎について、ポイントをまとめます。
- 中耳の粘膜に好酸球が浸潤し、にわか状の滲出液が溜まってしまうもの
- 40〜60歳に好発する
- 伝音性難聴・感音性難聴・耳閉感・耳鳴りなどが現れる
- アレルギー反応が鼓室粘膜に起こることで、好酸球性中耳炎になる
- 好酸球副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎・気管支喘息が合併する
- 中耳貯留液を確認したら、その成分を分析し、細菌検査をすることが重要
- 貯留液の除去・鼓室粘膜の好酸球浸潤を抑制する治療が必要
新しい病気なものの、珍しい疾患ではありません。
ただ、なかなか治らず再発をしやすいというのは多くの問題を伴います。
その中の一つに難聴がありますが、突然に悪化するケースもあれば、徐々に進行するケースもあるため、治療を怠らないことが重要です。