大腸には結腸(上行結腸→横行結腸→下行結腸→S状結腸)、および直腸があります。
今回はこれらの大腸を栄養する血管(動脈)についてまとめました。
大まかには、
- 上腸間膜動脈(SMA)が右半結腸〜横行結腸
- 下腸間膜動脈(IMA)が左半結腸
を栄養します。
今回はこれらの分枝まで掘り下げて解説します。
大腸(結腸・直腸)を栄養する血管(動脈)
大腸(結腸・直腸)を栄養する血管(動脈)について動画を作成しましたので、まずはこちらの動画をご覧ください。
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その上で記事を読んで頂くと理解が深まります。
大腸を栄養する血管の全体像は次のようになります。
このうち今回は、
- 上腸間膜動脈(SMA:Superior Mesenteric Artery)
- 下腸間膜動脈(IMA:Inferior Mesenteric Artery)
から分岐する動脈について見ていきます。
上腸間膜動脈(SMA)から分岐して結腸を栄養する動脈
上腸間膜動脈(SMA)から分岐する動脈で結腸を栄養するものは、
- 回結腸動脈(ICA:ileocolic artery)
- 右結腸動脈(RCA:right colic artery)
- 中結腸動脈(MCA:middle colic artery)
の3つがあります。
※ちなみに小腸を栄養する空腸動脈なども上腸間膜動脈から分岐します。
回結腸動脈(ICA)
回結腸動脈は、
- 回盲部
- 上行結腸の口側半分(下側半分)
を栄養します。
右結腸動脈(RCA)
右結腸動脈は上行結腸の肛門側半分(上側半分)を栄養します。
注意点として、右結腸動脈の分岐にはvariationがあることが挙げられます。
- SMAから独立して分岐
- 中結腸動脈(MCA)から分岐
- 回結腸動脈(ICA)から分岐
する3つのパターンがあります1)。
中結腸動脈(MCA)
中結腸動脈は右枝と左枝に分かれて、横行結腸全体を栄養します。
上腸間膜動脈(SMA)から最初に右側に分岐する血管がこの中大脳動脈です。
右枝、左枝の分岐の仕方には
- 上の図のように共通幹を形成するパターンが8割
- SMAからそれぞれ独立して分岐するパターンが1割強
あると報告されています1)。
続いて、下腸間膜動脈(IMA)から分岐して結腸および直腸を栄養する血管についてみていきましょう。
下腸間膜動脈(IMA)から分岐して結腸・直腸を栄養する動脈
下腸間膜動脈(IMA)から分岐する動脈で結腸・直腸を栄養するものは、
- 左結腸動脈(LCA:left colic artery)
- S状結腸動脈(SA:sigmoid artary)
- 上直腸動脈(SRA:superior rectal artery)
の3つがあります。
左結腸動脈(LCA)
左結腸動脈は、下行結腸を栄養します。
S状結腸動脈(SA)
S状結腸動脈(SA)はその名の通りS状結腸を栄養する動脈です。
1本だけではなく、最大5本存在します。
分岐パターンとしては、左結腸動脈(LCA)または上直腸動脈(SRA)から分岐します。
上直腸動脈(SRA)
最後に上腸間膜動脈(SRA)です。
上腸間膜動脈(SRA)は下腸間膜動脈(IMA)の終枝であり、直腸の上1/3を栄養します。
直腸上端の後方で2枝に分かれて、直腸両側方に沿って下行し直腸に枝を送ります1)。
最後に
大腸(結腸・直腸)を栄養する血管についてまとめました。
- 右半結腸は上腸間膜動脈
- 左半結腸は下腸間膜動脈
とまでは覚えていても、その分岐まではなかなか手が回らないことがあります。
これを機にそれぞれの分岐についても知って頂けたら幸いです。
なお、上腸間膜動脈と下腸間膜動脈の血管支配域の境界部分(分水嶺)は、Griffisth(グリフィス)点と呼ばれ、虚血が生じやすい部位とされます。
左半結腸は虚血性腸炎が生じやすい点も合わせて確認しておきましょう。
参考文献
- 1)画像診断 Vol.38 No.6 2018 P575-584
- 病気がみえる Vol.1 消化器 第5版P138