一般的に、「盲腸(もうちょう)」というと、虫垂炎(ちゅうすいえん)のことを想像される方が多いでしょう。

しかし、厳密には盲腸と虫垂は別物です。

では、その盲腸は、どこにあるのでしょう?

また、一般的に「盲腸」と呼ばれることが多い虫垂炎などになった際、どこに痛みなどの症状が現れるのでしょう?

今回は、盲腸(英語表記で「cecum」)について

  • 場所
  • 痛み
  • 急性虫垂炎が盲腸と言われる理由

などを、わかりやすく図と実際のCT画像とともに解説したいと思います。

盲腸の場所は?

消化管である大腸は、全長約170cmの管腔臓器で、盲腸は、その大腸の始まりの部分です。

盲腸の場所を説明すると、

(右下腹部)右腸骨窩で腸骨筋の前

にあり、長さは一般的に5.6cmで、嚢状で行きづまりとなっています。

また、この盲腸には、回盲口と虫垂口というのがあり、上の図のように

  • 回盲口は回盲弁「バウヒン弁」という弁があり、逆流を防ぎつつ、回腸と交通
  • 虫垂口は盲腸の後内側面にあり、虫垂へと続いています

 

盲腸で痛みが出る場所は?

まず「盲腸で痛みが出る」という日本語は正確にはおかしいですね。

ただし、盲腸を虫垂炎として置き換えて「虫垂炎で痛みが出る」とした場合は日本語としてもおかしくありません。

虫垂炎で痛みが出る場所は?

この場合、典型的には、

心窩部臍腹部が痛み、その後、右下腹部に痛みが移動します。

初期の際には心窩部や臍腹部といった、お腹の中心が痛み、進行するにつれその痛みが右下腹部に移動し、反跳痛(Blumberg徴候)や圧痛も認められるようになります。

ただし、いきなり右の下腹部が痛くなることなど、典型的でないことも多々ありますので注意が必要です。

その際、痛み以外の症状として、

  • 食欲不振
  • 悪心
  • 嘔吐
  • 軽度の発熱

を伴うこともあります。

実際のCT画像で盲腸の位置と虫垂炎の様子を見てみましょう。
医師
医師
症例 30歳代男性 右下腹部痛

実際のCT画像に色をつけてわかりやすくしたものです。

左側がCTの冠状断像と言って前から見た図だと考えてください。

この回腸という小腸が大腸に合流する部位がバウヒン弁であり、これよりも下の大腸が盲腸で、上が上行結腸となります。

実際のCT画像においても盲腸の場所おわかりいただけると思います。
医師
医師

ちなみに、虫垂はやや腫大をして虫垂炎を疑う所見です。

盲腸炎で痛みが出る場所は?

盲腸自体にも炎症が起こることがあります。

腸炎(盲腸炎)が起こったり、憩室があれば憩室炎(盲腸憩室炎)が起こることもあります。

この場合は、痛みが出る部位は、盲腸が存在する右下腹部です。

ただし、一般的に盲腸は右下腹部にありますが、固定が悪く右下腹部に存在しない(真ん中寄り)人もいます。
その場合は、盲腸のある部位で痛みが起こるということになります。

またこの盲腸に起こる病気は、虫垂炎の他にクローン病(回盲部)があり、その場合も同様に右下腹部が痛みます。

急性虫垂炎をなぜ「盲腸」と呼ぶの?

上に述べたように盲腸の先端部にあるのが虫垂で、虫垂で起こる炎症を虫垂炎と言います。

この虫垂炎は根っこである盲腸にも炎症が波及することがあります。

そのため、それを盲腸炎といい、現在の早期治療と異なり昔は急性虫垂炎が起きた際にすぐ手術とはならず、手術をする頃には盲腸炎も伴っていたために・・・

盲腸炎→盲腸

と、略して呼ばれるようになり、虫垂炎=盲腸という認識になりました。

今では虫垂炎が疑わしい時には、医療機関によってはすぐにCT画像を撮影することができ、虫垂炎の診断は割と容易になりました。

ちなみに、虫垂炎が盲腸に及んで盲腸炎を起こすことよりも、虫垂炎が破裂(穿孔)して腹膜炎を起こすことの方が命に関わります。

参考文献:
解剖学講義 改定2版P358・359

第4版 イラスト解剖学P330
病気がみえる vol.1:消化器 P132・133・156・184〜189
消化器疾患ビジュアルブック P86〜89・100・126〜130

最後に

今回は盲腸の場所、盲腸の病気(一般的には虫垂炎)の場合にどこに痛みが生じるのか、という点についてまとめました。

今回のポイントは、

  • 盲腸は、大腸の始まりであり、嚢状の行きづまり部分
  • 盲腸は、(右下腹部)右腸骨窩で腸骨筋の前にある
  • 盲腸(急性虫垂炎の場合)初期には、心窩部や臍腹部が痛むが、進行すると右下腹部が痛む
  • 急性虫垂炎では、進行すると根っこである盲腸まで炎症を起こすため、虫垂炎=盲腸炎=盲腸といわれることがある。
  • ただし厳密には盲腸と虫垂は別である。

 

という点がポイントです。

この痛みが出る場所を知っているといないとでは、緊急を要する症状か否か、我慢すべき症状か進行する症状かを疑うことができます。

今一度、ご自分の右下腹部に手を当て、場所を確認しておきましょう。

関連記事はこちら