腰椎椎間板ヘルニアの手術には、
- 内視鏡で行うもの
- レザーで行うもの
- 大きく切開するもの
などがあります。
どの方法でヘルニアを取り除いた場合も、リハビリを行うことが大切です。
手術方法は違っても、同じ内容のリハビリを行っていきます。
腰椎椎間板ヘルニアの手術を行った患者様のリハビリを担当してきました。
そこで今回は、
- 腰椎椎間板ヘルニアの手術後のリハビリ
- 術後も痺れや痛みが残っている場合のリハビリ
- リハビリの期間
についてお話したいと思います。
腰椎椎間板ヘルニアの術後のリハビリにはどんなものがある?
運動を治療手段として用いる、運動療法が主です。
運動療法を行う前には、
- 正しくコルセットを装着する
- 手術の傷周りの筋肉をほぐす
- 関節を動かしておく
などの注意点がありますよ。
正しくコルセットを装着する
コルセットには、腰周りの動揺を予防することや過度に腰が動くことを制限したり、腹部に圧をかけることで腰周りの筋肉の働きを助けるという目的があります。
手術前からの痛みや痺れなどで筋力が低下している状態であり、術後の腰椎への負担を減らすためにもコルセットを装着した状態でリハビリを行うことが必要であり、日常生活もコルセットを装着した状態で行うことが大切です。
手術の傷周りの筋肉をほぐす
手術によって筋肉を切ることで、傷の周りの筋肉が硬くなってしまうことがあります。
関節を動かしておく
関節の可動性を保ち、より動きを引き出すために理学療法士は色々な方法を用いて関節を動かしていきます。
理学療法士に任せることで、自分では動かせないような細かい関節の動きを引き出すことが可能です。
運動療法
運動療法の内容としては
- 腹式呼吸の習得
- インナーマッスルの強化
- 下肢や体幹の筋力増強運動
- 自転車マシーンや水泳
- 歩く
などの運動療法があります。
理学療法士と取り組む運動療法
手術直後は、傷口の痛みや腰痛の残存などがあり積極的に筋力を発揮することが難しい場合があります。
そんなときは、腹式呼吸の練習から開始することで腰への負担の軽減を図りますよ。
そのほか手術直後から行える運動療法がインナーマッスルの強化であり、これは低負荷で時間をかけゆっくりと行えるので身体に負担をかけることなく取り組めることが利点です。
これらを強化することで、腰椎椎間板ヘルニア術後に大切な『姿勢』を保持することができますね。
インナーマッスル強化としては、
- 呼吸を止めないこと
- どこの筋肉が働いているかを意識すること
が大切なポイントとなります。
腹筋運動ひとつを取り上げても、上記2つを意識してゆっくり行い身体の深い部分にある筋肉がきちんと働いているか確認することが大切です。
手術後の痛みが軽減してきたら下肢や体幹の筋力増強運動として、理学療法士が抵抗をかけながら行うものや重りをもちいて行う運動をはじめます。
脊椎をしっかり支えていく上で大切な、腰周りの筋肉や太ももの筋肉を強化していくことが必要なのでスクワットや膝を伸ばす運動を積極的に行っていきましょう。
自分で取り組める運動療法
- 自転車マシーン(姿勢の変化が少ないから)
- 水泳(左右同じ動きを行う運動だから)
- 歩く(身体全体を満遍なく動かすことができるから)
などが、脊柱への負担が少なく効果が高いとされています。
水泳はゆっくりと行い、水の重さには逆らわないことが大切です。
歩くという動作はとても大切ですよ。
手術直後は歩行器や杖を使って歩く練習からはじめ、起伏の少ない場所を選んで練習を行い少しずつ距離や時間を延ばし階段や段差昇降などの応用的な動作に移行しましょう。
歩く動作は、心肺機能を高めることができ下肢への血行をよくすることにつながり、血行の改善は痺れの改善に効果が高いといわれています。
残った場合のリハビリは、どうすればよいのでしょうか?
痛みや痺れが残っている場合もリハビリしたほうがいい?
リハビリは必要です。
手術でヘルニアを取り除いたとしても、神経を圧迫していた期間が長かった場合など痛みや痺れが残るケースもあります。
我慢できないような激痛であれば安静にすることが必要ですが、ある程度我慢できる範囲内であればリハビリは積極的に行いましょう。
痛みがある場合は、物理療法(患部を温めることや電気をあてること)を行ってから運動を行うことで痛みの軽減を得られることもあり、運動することで、筋力強化が図れることで支える力がしっかりすることで痛みが軽減していくことも考えられますね。
痺れが残っている場合や痺れが原因で足の感覚が鈍くなっている場合は、足の裏の感覚を受け取るセンサーを刺激することで立つ動作・歩く動作の安定へと繋げていきます。
腰椎椎間板ヘルニアの原因や症状についてはこちら→腰椎椎間板ヘルニアの原因や手術は?入院期間はどれくらい?
リハビリの期間はどれくらい?
術後は7~14日の期間、入院してリハビリを毎日行います。1)
しかし・・・これでリハビリが終了というわけではありません。
腰椎椎間板ヘルニアの原因のひとつに加齢による変形があり、姿勢の変化や筋力低下を予防していく必要があるからです。
長期的にリハビリを行っていく必要性が高くなりますね。
それは、次の理由からです!
背骨は緩やかなS字カーブを描いていて、このカーブが乱れると椎間板に負担がかかりヘルニアを起こすことになり、一度腰椎椎間板ヘルニアを患っていることを考えると、加齢により姿勢が変化していくことで再発することも考えられますね。
ストレッチ
腰椎椎間板ヘルニアでストレッチしなければいけない部位として
- 腰・体幹の筋肉
- 股関節の筋肉
- ふくらはぎの筋肉
があります。
腰の椎間板に負荷がかかって発症するヘルニアは腰や体幹の筋肉は硬くなってしまい、骨盤や腰に多くの筋肉がつながっている股関節の柔軟性を保っておかないとスムーズな動きができなくなるのです。
ふくらはぎの筋肉は腰の筋肉に直接つながっているわけではありませんが、立つ・歩くといった動作を行うときに大切な足関節の筋肉と重要なかかわりがあります。
足関節は、私たちの身体を支える重要な土台であり、足首が硬いと膝関節や股関節の筋肉も緊張してしまい、腰に負担をかけることになるのです。
ふくらはぎの筋肉が働くことにより、筋肉ポンプ作用を起こし血液の流れを活発にていくことが、腰痛の改善に効果があります。
生活指導
退院後、自宅生活を送るうえで生活指導はとても重要なポイントです。
- 家事動作
- 車の運転
- パソコンを用いての作業
これらは、同一姿勢が多いとされていますよね。
椎間板にかかる負担は姿勢によって変化し、長時間同一姿勢をとることは良くないとされています。
事務職であれば術後1.5ヶ月~2ヶ月、重労働とされるものは術後2ヶ月~3ヶ月。3)
スポーツ復帰は、術後2~3ヶ月。4)
理想の姿勢とされるものは、ムリのない範囲で背筋を伸ばしていることで、胸を張り腹筋に力を入れて保持することを意識するとよいでしょう。
足を組む・あぐら・横坐りは、骨盤の歪みを助長させてしまう可能性が高いので注意が必要です。
急激な姿勢の変化も痛みを引き起こす原因となります。
体重が急激に増えると、腰への負担が大きくなるので体重管理もしっかりと行っていくことが大切です。
参考サイト)1)2)腰椎椎間板ヘルニア(日本脊椎外科学会)
3)日常生活に関するQ&A(独立行政法人地域医療機能推進機構玉造病院)
4)スポーツ障害とは(千葉メディカルセンタースポーツ医学センター)
まとめ
腰椎椎間板ヘルニア術後のリハビリにおいて、大切なポイントをまとめます。
- コルセットの装着や手術の傷周りの管理・関節を動かすなどの前準備をしてからの運動療法が大切
- 痛みや痺れがある場合もリハビリを行うことが大切
- 手術後、家事動作や車の運転・パソコン作業は可能だが、30分程度で休憩が必要
- 事務職は術後1.5~2ヶ月・重労働は術後2~3ヶ月で職場復帰が可能
- スポーツ復帰は、術後2~3ヶ月で可能
- リハビリはストレッチや生活指導など、長期的に行うことが大切
椎間板ヘルニアは、手術したから完治というわけではなく長期的にリハビリを行っていくことが大切です。
姿勢の変化に気をつけ、ストレッチや正しい生活習慣を身につけることで再発の予防に努めていきましょう。