尿管(にょうかん)は、腎臓(じんぞう)と膀胱(ぼうこう)を繋ぐ管であり、腎臓で作られた尿を膀胱へ送る役割があります。

そんな尿管に尿管結石などができると、それらが行き止まりとなり尿の通り道を塞いでしまうことになります。

道が塞がると、より上流の尿管や腎盂(じんう)、腎杯(じんぱい)という尿の通り道がうっ滞して拡張し、水腎症という状態になってしまいます。

尿が流れなくなると、感染の恐れもあるため、通り道を人工的にでも作る必要があります。

その際に用いられるのが、尿管ステントです。

今回は、この尿管ステントについて

  • どんなときに留置されるのか
  • 留置方法
  • 抜去方法
  • 合併症

などを、痛みの情報と交えつつ、図や実際のレントゲン画像やCT画像を用いて解説したいと思います。

尿管ステントとは?

尿管結石などで尿路が狭くなったり閉塞してしまうと、下の図のようにより上流の尿管から腎盂・腎杯にかけて尿がたまってしまいうっ滞してしまいます。

尿管結石による水腎症のイラスト

そこで尿管ステントは、塞がった尿路を開放する役割があります。

尿管ステントのイラスト

具体的には、腎盂から膀胱にかけて留置し、尿の排泄(ドレナージ)を確保させるために入れる管(カテーテル)を尿管ステントといいます。

どんな場合に留置されるものなの?

以下のような疾患の際に用いられます。
医師
医師

尿管ステントはどんな場合に留置されるの?

  • 尿管結石
  • 悪性腫瘍の浸潤
  • 尿管狭窄
  • 放射線治療
  • 水腎症

などの尿管が狭くなったり、閉塞する病態を改善する目的で用いられます。

尿管ステントの必要性は?

尿管ステントは、やらなきゃいけないものなの?

尿管ステントをするのは、尿管が閉塞されている状態と申しましたが、尿が流れなくなると、以下のような問題が起こるのです。
医師
医師

尿路が遮断された状態となる尿路障害によって、腎盂〜腎杯に尿がうっ滞する状態となります。

 

水腎症のリスクの説明

そうなった場合に水腎症となるわけですが、両側が水腎症に犯されると腎後性急性腎不全となり、尿毒症の症状が現れることがあり、さまざまな機能に障害をもたらすことがあります。

また、尿がたまると感染を引き起こしやすくなります1)

したがって、そうならないために尿管ステントを用いていち早く改善をはかります。

では実際の症例の画像を見てみましょう。
医師
医師

症例 50歳代男性 左腰部痛

結石による水腎症のDIVP画像

排泄性尿路造影検査です。

造影剤を点滴してその後レントゲン撮影したものです。

これを見ると右側(向かって左側)の尿管には高吸収な(白い)造影剤が尿管を流れていることがわかりますが、左側(向かって右側)の尿管には造影剤を認めません。

これは尿路が閉塞していることを示唆します。

さらに左の尿路には尿管結石を疑う高吸収な結節を認めています。

結石による水腎症のCT画像

腹部造影CTの横断像(輪切り)の画像です。

左側のみに腎杯〜腎盂の拡張を認めているのがわかります。

結石による水腎症のCT画像

腹部造影CTの冠状断像です。

前から見た画像と考えて下さい。

これからも腎杯〜腎盂〜腎盂〜尿管に著明な拡張があることがわかります。

尿管結石による水腎症のCT画像

さらに下の方に目をやると、尿管結石が写っているのがわかります。

左尿管結石による尿路閉塞および水腎症と診断され、左尿管ステントが留置されました。

結石による水腎症に対して尿管ステントを留置した後のレントゲン画像

留置後のレントゲン画像です。

尿管ステントが高吸収に(白く)写っているのがわかりますね。

結石による水腎症に尿管ステントを留置した後のCT画像

尿管ステント留置後の腹部単純CTの画像です。

左側に見られた腎杯〜腎盂の拡張の所見は消失しているのがわかります。

尿管ステントを留置する尿管の解剖・場所はこちらにまとめました→【CT画像あり】尿管の位置や長さは?痛みが出る場所は?

尿管ステントの留置方法は?

  1. 透視装置(内視鏡)を、尿の出口(外尿道口)から挿入
  2. 尿管の出口(膀胱内)からワイヤーを腎臓まで進める
  3. 2を元に、腎臓から膀胱まで尿管内に細いカテーテルを留置し、尿の通り道を確保する

という方法で行われます。

その際に、脊髄麻酔や全身麻酔、尿道にゼリーを挿入するなどの麻酔を用います。

尿管ステント留置による痛み

痛みはあるのでしょうか?

以下のような痛みが報告されています3)。
医師
医師

  • 尿道が痛む(運動時・姿勢悪化時)
  • 下腹部が痛む
  • 排尿痛
  • 腰痛・背部痛

尿管ステント 痛み

尿管ステントの留置期間は?

どれくらい留置しておく必要があるのでしょう?

結石が解除されれば、ステントは除去することが可能です。
医師
医師

一般的に約4週間ほど留置し、抜去後に尿の排泄状況を必ず確認する必要があります2)

しかし留置が長期化することもあり、その場合は尿管ステントに結石が付着して逆に内腔が詰まってしまうこともあるため、定期的にチェックが必要で、患者によって留置期間は異なります

尿管ステントの抜去方法は?

  1. 尿道から内視鏡を挿入
  2. 尿管ステントの先端にある糸をつまむ
  3. 一気に引き抜く

挿入時よりも一気に行えるため、痛みも一瞬ですが、内視鏡挿入時にはステント留置の際同様、痛みを伴うでしょう。

しかし、抜去後もしばらくこの痛みが残るという報告もあります。

尿管ステントによる合併症は?

  • 石灰化
  • ステント迷入
  • 結節形成
  • 尿動脈瘻
  • 破損・穿孔

などの合併症が報告されています4)

また、血尿を伴う場合もありますが、多くの場合は問題ありません。

参考文献:
STEP泌尿器 P311
知っておきたい泌尿器CT・MRI P197
病気がみえる vol.8 腎・泌尿器P241〜243
参考サイト:
1)水腎症について|東京女子医科大学病院 泌尿器科
2)尿路結石症 診療ガイドライン 第2版 2013年版

3)Boston Scientific 尿管ステントとは
4)Japanese Journal of Endourology (2014)27:71-78
経尿道的尿管ステント留置術 説明書
尿路ステント留置・交換テクニック

最後に

尿管ステントについて、ポイントをまとめます。

  • 尿管ステントは、腎盂から尿道にかけ、尿のドレナージを確保するために入れる管
  • 尿管結石・悪性腫瘍の浸潤・尿管狭窄・放射線治療・水腎症のために用いられる
  • 内視鏡を用いて、尿道口から挿入、腎臓から膀胱までカテーテルを挿入する
  • 抜去時はその逆で、尿道口からカテーテルを引き抜く
  • 患者によって留置期間は異なる
  • 挿入時・挿入中・抜去中(内視鏡挿入時)・抜去後に痛みを伴う
  • ステント迷入・下部尿路刺激症状・尿路感染症・破損(穿孔)・結石形成などの合併症がある

 

結石は、あるだけでも痛みを伴う上に、抜けるまでさまざまな苦痛を感じることになる可能性もあるのです。

参考になれば幸いです<(_ _)>

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