尿を一時的に貯留するための臓器である膀胱(ぼうこう)。
この膀胱が、どこにあるかご存知ですか?
女性の場合と男性の場合、生殖器の構造が違うため、ココという場所がピンとこない方もいらっしゃるかもしれませんね。
また、この膀胱の病気はどのようなものがあり、どこに痛みが出るのでしょう?
今回は、膀胱について
- 場所
- 病気
- 痛みが出る場所
を図と実際のCT画像と共に解説していきたいと思います。
膀胱の場所はココ!
成人では300〜500mlの尿を貯留することができる膀胱は、下腹部にある骨盤腔の一番前にあり、恥骨の後ろに位置します。
- 女性の場合、子宮の下(〜前)
- 男性の場合、前立腺の上(〜前)
にあります。
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膀胱の場所をCT画像でチェック!
まずは女性の場合を見てみましょう。
症例 30歳代女性 スクリーニング
膀胱の位置関係を見るには、横から見た矢状断像がわかりやすいです。
上のCT画像のように膀胱は子宮の下〜前、恥骨の上に位置していることがわかります。
この矢状断像と対応する横断像(輪切り)を2箇所で見てみましょう。
それぞれに対応する横断像が右側にあります。
これに色をつけると次のようになります。
膀胱と子宮、仙骨、恥骨、腸骨、卵巣などとの位置関係がこれでおわかりいただけると思います。
では次に男性の場合の実際のCT画像をみてみましょう。
症例 30歳代男性 スクリーニング
腹部単純CTの横断像です。
仙骨やS状結腸の前に膀胱があることがわかります。
さらに少し下のスライス(足側)です。
大腿骨頭が見えて来ました。
直腸の前に膀胱があることがわかります。
この画像では実は尿管が膀胱に入っていく様子が映っていますがわかりますか?
拡大するとわかります。
小さな管が両側にあり膀胱の後ろの壁から入っていく様子がわかります。
さらに少し下のスライス(足側)です。
ここまでくるとかなり膀胱は小さくなりました。
そして後ろ側に前立腺や恥骨・坐骨が見えて来ます。
膀胱の下に前立腺があることがわかりますね。
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恥骨が見えるレベルでは、膀胱が見えています。
このレベルでは前立腺は見えません。
少し後ろ側のレベルにスライスを移動します。
すると膀胱の下に前立腺が見えて来ます。
これらからわかるように、膀胱は前立腺の上〜前にあることが確認できます。
症例 50歳代男性 血尿の精査
ついでに尿管が膀胱に入る様子がわかりやすい画像があったので見ておきましょう。
左側は造影剤を用いていない単純CTです。
で、右側は造影剤を用いた造影CTです。尿管に造影剤が流れて膀胱に入る様子がわかりますね。
さらに時間が経過した後の画像は次のようになります。
尿管から造影剤が膀胱内に流れ込んでいる(吹き出している)様子がよくわかります。
結構な勢いで尿は尿管から膀胱内に入っていくことが確認できますね。
膀胱は尿の量により形を変える?
この膀胱は、尿があまり貯留していない時(空虚の時)には骨盤腔内にありますが、尿がいっぱいになると(充満 )、球状になり、上面は恥骨結合の上縁を越えて隆起するようになります。
このCT画像は尿がかなりいっぱいになった状態です。恥骨結合を超えて球状になっています。
しかし、実際には満杯になる前に尿意をもよおし、排尿されるため、通常著しく隆起するようなことはありません。
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小児期の骨盤はまだ未発達で、膀胱は空虚時でも恥骨結合よりも上に隆起しますが、成長とともに骨盤も大きくなるため、膀胱は下に収まるようになります。
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通常の膀胱の解剖は?
通常の膀胱はピラミッド状(四面体)で、頂上にあたるところを膀胱尖といい、底部分ににあたるところを膀胱底、その間の部分を膀胱体と呼びます。
膀胱尖は前方に向いて恥骨結合縁の後ろにあり、膀胱底は後方にあり、
- 男性の場合は、直腸
- 女性の場合は、膣
に向いています。
膀胱の病気は?
最も有名でよく起こるのが膀胱炎ですが、それ以外にも以下のような疾患があります。
- 膀胱炎
- 膀胱がん
- 膀胱結石
- 膀胱結核
- 膀胱憩室
などがあります。
これらは膀胱に直接炎症や腫瘍などが生じるものですが、これ以外にも脊髄損傷・脳血管障害・糖尿病などで神経損傷が起こり、神経因性膀胱となることもあります。
また、前立腺肥大症・後部尿道弁・尿道狭窄などにより、排尿筋括約筋協調不全となり、低活動膀胱や過活動膀胱となることもあります。
膀胱の病気で痛みが出る場所はココ!
膀胱結石や膀胱憩室は症状が起こらないことが多いです。
症状が起こりやすい膀胱炎と膀胱癌について見てみましょう。
膀胱炎
膀胱の病気の中で最も多いのが膀胱炎です。
膀胱炎では、排尿痛、頻尿、膿尿(尿混濁)を3主徴とした症状が起こります。
他には、下腹部不快感、残尿感、血尿などの症状が起こります。
ただし膀胱炎の場合は、発熱を伴わないのが一般的です。
しかし、この下腹部の痛みがピンポイントな場合、炎症の範囲も狭い初期の段階です。
痛みの場所が広範囲になったり、痛みが強くなった場合、炎症が広がって悪化してきたと考えられます。
膀胱癌
膀胱癌は、肉眼的血尿として症状が起こることが多く、その他、頻尿、排尿時痛、下腹部の痛みと言った症状が起こります。
参考文献:
病気がみえる vol.8 腎・泌尿器P2・10・296
解剖学講義 改定2版P426〜429
第4版 イラスト解剖学P394・395
最後に
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- 骨盤腔の一番前にあり、恥骨の後ろに位置する
- 女性の場合は子宮の下に、男性の場合は前立腺の上にある
- 通常の膀胱はピラミッド状(四面体)で、充満すると球状になる
- 膀胱の病気は、膀胱炎・膀胱がん・膀胱結石・膀胱結核・膀胱憩室などがある
- 膀胱炎では排尿痛や排尿時の灼熱感があり、下腹部に痛みを感じることもある
膀胱の病気は我慢しても痛みがおさまるどころか、悪化する傾向にあります。
排尿時痛や頻尿、血尿、尿の混濁、下腹部の違和感などを感じたら、内科・泌尿器科・婦人科(女性の場合)を受診しましょう。