副腎(ふくじん)が体のどこにあるのか、ご存知ですか?

腎臓なら、なんとなくわかるけど、副腎までは・・・という方多いと思います。

そんなマイナーな副腎ですが、実は様々なホルモンの生成に携わる重要な臓器なのです。

そこで今回は、副腎(英語表記で「Adrenal glands」)の

  • 場所
  • 病気
  • 痛みが出る場所

を、図と実際のCT画像を用いてわかりやすく解説したいと思います。

そもそも副腎とは?

副腎は腎臓の両側上方に位置する、ステロイドホルモンやカテコールアミンを分泌する内分泌器官で、皮質と髄質から形成されています。

周りは脂肪で囲まれています。

皮質と髄質は隣り合っていますが、実は発生起源が異なります。
皮質は中胚葉から、髄質は外胚葉から生じます。

副腎の重さは5g程度で、大きさも1つ(片側)数cmと小さな臓器です。

副腎の場所とは?

副腎は、左右にある腎臓の上部の前方に位置しており、腎臓とともにゲロータ筋膜(Gerota)という腎筋膜で包まれています。

そして、腎臓とは少量の脂肪組織によって隔てられており、それぞれ

  • 右副腎は、右腎上極の少し上・下大静脈背側・肝右葉内側
  • 左副腎は、左腎上極内側・膵尾部後方

位置しています。

下の図では両側とも同じ高さにありますが、実際は右副腎の方が左副腎よりも高い位置にあることが多いです。

また、左副腎の方が、右副腎よりもやや大きい傾向にあります。

簡単にいうと、副腎は腎臓の上に乗っている、腎臓が帽子をかぶっているようなイメージです。

腎臓が肝臓の下(右腎は肝臓の直下)にあるので、副腎はその腎臓に付属するように上部に接していると考えると、場所もわかりやすいと思います。

腹部CTで実際の副腎をチェックしてみましょう。
医師
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腹部CTでの副腎の場所・位置は?

腹部造影CTの横断像(輪切り)で副腎の場所を確認しましょう。

症例 20歳代男性 腹痛スクリーニング

上のように腹部CTの横断像(輪切り)で見ると、左右の副腎は逆V字型、Y字型のような形状をしていることが確認できます。

確かに特徴的な形をしていますね。

左(向かって右)側には腎臓の一部が見えていますが、右(向かって左)側ではまだ腎臓は見えていない高さです。

右副腎が肝臓の内側にある様子もよくわかりますね。
医師
医師

副腎を描出する検査とは?

上の画像で見たようにCTで副腎を捉えることができますが、実は腹部エコー検査(腹部超音波検査)では副腎は腫大しないと確認できません。

一方で、MRIでは副腎が周囲が脂肪に囲まれているために明瞭に描出することができます。

また、核医学検査では、131I-アドステロールを注射して7日後に撮影されると副腎の皮質が描出されます。

では、実際のMRI画像をチェックしてみましょう。
医師
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症例 60歳代男性 スクリーニング

T2強調像という撮影方法の冠状断像です。

前から見た画像と思っていただいて結構です。

両側の腎臓の上に副腎があることがわかります。
また、左の腎臓の方が右の腎臓よりも高い位置にあることがわかります。
腎臓の周りや副腎の周りの白いもの(高信号域)はいずれも脂肪です。

 

腎臓の上に乗っかっているイメージだってことですが、実際は少し離れているんですね。

そうですね。間に脂肪がありますので実際は少し離れています。
医師
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副腎の病気とは?

血液検査・腹部エコー・CT検査・MRI・シンチグラフィ(核医学)などから、副腎機能の異常や異変として見つかることがあります。

副腎の病気としては、ちょっとややこしいですが

  • 副腎腺腫(機能性、非機能性がある)
  • クッシング症候群
  • 原発性アルドステロン症
  • 褐色細胞腫
  • 副腎不全
  • 副腎皮質機能低下症(アジソン病)
  • 副腎がん
  • 副腎転移
  • 副腎悪性リンパ腫
  • 神経芽細胞腫
  • 骨髄脂肪腫
  • AIMAH (adrenocorticotropin-independent macronodular adrenal hyperplasia)

などがあります。

ここでは実際の副腎腺腫のCT画像所見を見てみましょう。
医師
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症例 60歳代 女性

腹部造影CTの横断像です。

左副腎に2cm大の腫瘤を認めています。

MRIと合わせて副腎腺腫と診断されました。

副腎の病気で痛みが出る場所は?

副腎の病気で痛みは通常起こりませんが、副腎がんなどのサイズが大きくなると、腫瘍による圧排で、背部や腰部、時に腹部に痛みを生じることは考えられます。

背部や腰部に多いのは、副腎は後腹膜臓器(こうふくまく)であるからです。

つまり、腸管のようにお腹の中を動いたりするのではなく、上のように後腹膜に固定されている臓器です。

ですので、膵臓や腎臓などと同じように、副腎の腫瘤や炎症が原因で、痛みが生じる場合は、背部や腰部に生じるのが一般的です。

 

その他、副腎の病気では、ホルモンの産生により

  • 倦怠感(疲労感)
  • 便異常
  • 血圧異常
  • 体重減少

などの症状がみられることもあります。

参考文献:
病気がみえる vol.8 腎・泌尿器P5
病気がみえる vol.3代謝内分泌第1版P214〜246
解剖学講義P402

最後に

副腎の場所について、ポイントをまとめます。
医師
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  • 副腎は、皮質と髄質から形成される内分泌器官
  • 右副腎は、右腎上極の少し上・下大静脈背側・肝右葉内側に、左副腎は、左腎上極内側・膵尾部後方にある
  • 腎臓がんなどでは、腹部や背中・腰などに痛みが出ることがある

 

副腎は生命維持に重要ないくつかのホルモンを作り、生体の恒常性を保つ重要な臓器です。

いまいちど場所をしっかり確認し、異変に気付いた時には、早期に検査をすることをオススメします。

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