大後頭孔(読み方は「だいこうとうこう」)は頭蓋骨の一番下にある穴のことで、頭部と頸部の繋ぎ目・境界部とも言うことができます。
この大後頭孔はどこに位置し、その中にはどのような解剖構造が存在しているのでしょうか?
そこで今回は、大後頭孔(英語表記で「foramen magnum」)について、
- 大後頭孔の場所・位置
- 大後頭孔の実際のCT、MRI画像
- 大後頭孔に起こる問題として大後頭孔ヘルニア
などについて、イラストや実際の画像を用いて解説しました。
大後頭孔とは?位置は?
孔は、穴という意味を持ちますが、大後頭孔は頭蓋骨の後頭骨にある穴です。
やや前後に長い楕円形をしています。
頭蓋底の後部は、後頭骨と側頭骨からなりますが、大後頭孔はその中央にあります。
頭部の最下端ということもでき、頸部との境界部分をなすのがこの大後頭孔です。
椎体骨の中央を貫く脊髄は、頭部とどう連結するのかというと、この大後頭孔が脊髄の延長である延髄を通す場所であり、そのための開口部分といえます。
延髄には呼吸中枢がありますので、何らかの理由でこの大後頭孔が狭くなったり圧迫されたりすると、ときに致死的になります。
大後頭孔を通るものは?
大後頭孔を通るものは、
- 延髄
- 椎骨動脈
- 副神経脊髄根
- 前・後脊髄動脈系
があります。
大後頭孔の場所(位置)をCT、MRI画像で見ると?
この大後頭孔をCT画像、MRI画像で見てみましょう。
まずはCT画像の横断像(輪切り)です。
大後頭孔のすぐ前には頚椎の軸椎が見えています。
続いて矢状断像(横から見た画像)です。
大後頭孔は上のように位置していることがわかります。
大後頭孔の後ろ側には後頭骨があります(前側は斜台です)
また大後頭骨の下側には頚椎が配列しています。
動画解説しました。
MRI画像は神経系の描出に優れています。
T2強調像の矢状断像を提示しています。
CTでははっきりしなかった大後頭孔に延髄が走行している様子がよくわかります。
延髄の上下には橋、脊髄がそれぞれ連続しています。
大後頭孔が狭窄する原因・疾患は?
大後頭孔に起こる問題としては、大後頭孔が何らかの原因で狭くなり、中を通る構造物が圧迫されることにより起こります。
大後頭孔を狭くする原因しては
- 大後頭孔ヘルニア
- ChiariⅠ型奇形
- 腫瘍(髄膜腫など)
- 軟骨無形成症・軟骨異栄養症
などがあります。
なかでも大後頭孔ヘルニアは急性期に短時間で起こる病態であり、臨床的に非常に重要となります。
大後頭孔ヘルニアの症状
後頭蓋窩の出血や腫瘍で頭蓋内圧亢進症となり、小脳扁桃が大後頭孔へと嵌頓(はまり込んだ)した状態を大後頭孔ヘルニアといいます。(小脳扁桃が逸脱するために、小脳扁桃ヘルニアとも呼ばれます。)
大後頭ヘルニアでは
- 意識障害
- 呼吸障害
- 髄膜刺激症状
- 四肢麻痺
- 身体の無感覚症(anesthesia)
などが出現し、水頭症を起こしやすいものとなります。
呼吸障害が起こる理由としては、大後頭孔には呼吸中枢である延髄が通り、嵌頓した(はまり込んだ)小脳扁桃がこの延髄を圧迫するためです。
なお、この大後頭孔ヘルニアが起こっている状態で腰椎穿刺を行うとますますヘルニアが進むことがあり、NGです1)。
大後頭孔ヘルニアの治療
圧迫を解除しなければ致命的ともなるため、緊急手術(減圧術)の対象となります。
そのほかの治療としては、
- 脳圧を下げる治療
- 原因疾患の治療
- 全身管理
なども行われます。
参考文献:
1)神経局在診断 その解剖、生理、臨床 P223
第9版 イラスト解剖学P178
解剖学講義 改定2版P510・511
脳神経疾患 ビジュアルブック89
最後に
大後頭孔について、ポイントは以下の通りです。
- 大後頭孔は、頭蓋骨の後頭骨にある穴である
- 大後頭孔は頭蓋腔と脊柱管をつなぐ
- 大後頭孔を延髄、副神経・椎骨動脈・静脈叢などが通っている
- 大後頭孔ヘルニアや脊髄空洞症(キアリ奇形)などが起こる
- 大後頭孔ヘルニアは、意識障害・呼吸障害・髄膜刺激症状などが出現する
- 大後頭孔ヘルニアは、緊急手術の対象で、圧迫を取り除かなければ致命的
参考になれば幸いですm(_ _)m