消耗性疾患(しょうもうせいしっかん)という医療用語がありますが、どのような意味でしょうか?
そして消耗性疾患ではどのようなことが体で起こるのでしょうか?
また消耗性疾患ではどのような病名が含まれるのでしょうか?
今回は消耗性疾患についてまとめました。
消耗性疾患とは?
消耗性疾患とは、慢性的な病気があり、それにより体力・免疫力が落ちている状態です。
消耗性疾患ではどんな症状が起こる?
消耗性疾患では以下のような症状が起こることがあります。
- 感染症の重症化
- 脱水
- 痩せ(体重減少)
- 低タンパク血症
- 貧血
- 電解質異常
- 無月経
- 低T3症候群(low T3 sydrome)
感染症の重症化
体力や免疫力が落ちている状態ですので、同じ感染症にかかった場合でも、健常な人よりも重症化しやすい傾向にあります。
脱水・痩せ(体重減少)
また食欲が低下するため、脱水や痩せ(体重減少)を起こす原因となります。
皮膚は乾燥して、眼窩や両側の頬(ほほ)がくぼみ、特徴的な顔つき(顔貌)になります。
逆に、食欲が低下したり、短期間での痩せ(体重減少)を起こした場合は、消耗性疾患が隠れている可能性があります。
消耗性疾患などにより極端に痩せ(体重減少)が進行した状態を、悪液質(cachexia)と呼びます。
低タンパク血症(低蛋白血症)
食欲が低下することにより、蛋白の異化が亢進するため低タンパク血症(低蛋白血症)を起こすことがあります。
また、低タンパク血症により見かけの低いカルシウム血症を起こすことがあります。
また蛋白合成が低下するため、コリンエステラーゼ(ChE)という肝臓で生成される酵素が低値になります。
電解質異常
食欲が低下することにより、
- 低ナトリウム血症1)
- 低マグネシウム血症
- 低カルシウム血症
といった電解質異常を起こすことがあります。
無月経
体重が減少することにより、無月経となることがあります。
これを単純体重減少性無月経と呼びます。
消耗性疾患に限らず、過度なダイエットや運動によって無月経になる場合もここに含まれます。
低T3症候群low T3 sydrome
消耗性疾患では、代謝を抑制する方向に体は働きます。
できるだけ省エネで行こうと体が作用するのです。
甲状腺ホルモンにはT3、T4、rT3の3種類があるのですが、このうちT3は身体の多くの細胞に対して代謝を促進する効果を持ちます。
そしてそのT3はT4から作られます。
ですので、T4→T3への変換を抑えることで代謝を抑制することができます。
T4のうちT3への変換が低下するため、T4は正常でT3が低下する病態が起こり、これを低T3症候群(low T3 sydrome)と呼びます。
(慢性)消耗性疾患にはどのような病名がある?
消耗性疾患に該当する病気には以下のような病名や状態があります。
- 糖尿病
- 肺結核・肺炎
- アルコール依存症
- 脾臓摘出後(脾摘後)
- 悪性腫瘍術後(胃切除後など)
- 担癌状態(体にがんがある状態)
- 慢性腎不全
- 肝不全・肝硬変
- 慢性尿路感染
- 心血管疾患
- AIDS
- 血液疾患
など。
消耗性疾患の際に合併することがある病気
消耗性疾患がある際に起こすことがある疾患には以下のものが報告されています。
- 慢性壊死性アスペルギルス症状(semi-invasive aspergillosis)2)
- 真菌性髄膜炎
- 脾Peliosis
最後に
(慢性)消耗性疾患についてまとめました。
慢性的な病気があることで食欲が低下し、体力・免疫力が落ちることで、体に様々な変化がおこります。
また消耗性疾患には様々な疾患・病気が含まれている総称であることがわかりました。
参考になれば幸いです( ^ω^ )
参考文献:
1)内科診断学(医学書院)2000年P872
2)臨床画像 Vol. 17.No.11,2001
3)病気がみえる vol.7 脳・神経 第1版 P357