大腸がんや胃がん、食道がんなどの内視鏡的治療として
- 内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal略語でEMR 読み方はそのままイーエムアール)
- 内視鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal tomogtaphy略語でESD 読み方はそのままイーエスディー)
がありますが、このEMRとESDの違いは何なのかご存知ですか?
漢字表記で見ると、EMRは粘膜を切除するもの?
ESDは粘膜下層を剥離するもの?
というのは想像できますが、今回はEMRとESDについて、
- 違い
- 特徴
- 適応
- 合併症
をイラストとともにに解説したいと思います。
EMRとESDの違いは?
EMRはスネアで電気切り取る、ESDはナイフで切り取るという方法で異なりますが、大きな違いは
- ESDはEMRに比べ、大きな病変も一括切除が可能
という点です。
EMRで使用されるスネアの大きさは約2cmまでという制限があります。
しかし、ESDの場合スネアではなくナイフを使用するので、そういったサイズ的制限がないため、大きな病変でも可能となるのです。
EMRでは大きさに制限があるため、分けて行なっていたものが、しっかり印をつけ1度で大きく切り取ることが可能となると、取り残しがなくなるのです。
EMRとは?
隆起が少ない病変に対しておこなうことが可能な治療法で
- 粘膜下層に局注液(生理食塩水)を注入し、病変部を隆起させる
- スネアと呼ばれるワイヤーを膨隆部にかける
- スネアを絞め、通電し、病変を切り離す
- 切り離した病変を回収
というような方法で行われます。
隆起させるのは粘膜下層の下にある固有筋層を傷つけないためです。
またその際、病変を切り離す方法は色々あり、キャップを用いたEMR-C法や、結束バンドを利用したEMR-L法などもあります。
ESDとは?
一方で、ESDは
- 病変の周りに印をつける(大腸では行わない)
- 粘膜下層に局注液(生理食塩水)を注入し、病変を膨隆させる
- ナイフで病変の周りの粘膜を切開する
- 粘膜下層を少しずつ剥離して病変を切除する
という方法で行われます。
EMRのようにワイヤーで病変部を囲う必要がないため大きな病変もいっぺんに切り取ることが可能です。
この際に使われるナイフに種類があり(フックナイフ・デュアルナイフ・ITナイフ)、医師の使い勝手や工程ごとに、使い分けられます。
内視鏡下でナイフで切開していくという高度な技術が必要となるため、EMRよりも難易度は高く、また時間がかかります。
EMRやESDの適応は?
このEMRやESDが適応されるのは
- リンパ節転移の可能性がほとんどない
- 腫瘍が一括切除可能な大きさと部位である
- 組織型が分化型・肉眼型は問わないものの、陥凹型では潰瘍を伴わない場合に限る
という場合となります。
しかしEMRは、2cm以下の肉眼的粘膜内癌までというのに対し、ESDはEMRよりも大きな病変にも対応可能です。
EMRやESDによる合併症は?
どちらも粘膜を切り取るため、術後時間が経過してから
- 出血
- 穿孔
など、起こる可能性があります。
しかし、出血の頻度は高いものの、内視鏡的に止血は可能です。
穿孔をきたした場合は、クリップで傷口を塞ぐ必要がありますが、その後内科的治療(絶食・抗菌薬)も必要となります。
またこれに続く腹膜炎にも対処する必要がありますが、効果が見られない場合、外科的治療を要することもあるため、EMRやESD後には看護する上で経過観察も重要となります。
参考文献:
病気がみえる vol.1:消化器 P35
消化器疾患ビジュアルブック P70・71
消化器看護ポケットナビP105
見てわかる 消化器ケアP161
胃癌治療ガイドライン 医師用 2004年4月改訂 第2版P6
最後に
EMRとESDの違いについてまとめました。
- ESDはEMRに比べ、大きな病変も一括切除が可能
- EMRはスネアが約2cmまで
- ESDは一括切除可能
- 出血や穿孔という合併症に注意し、経過観察が重要
開腹せずに済む内視鏡的治療は、患者の負担が少なく済みますが、術後の経過観察では出血や穿孔に注意し、兆候を見逃さないようにすることが重要です。