切歯孔(せっしこう)という穴が、口の中の上壁にあります。
今回は、この切歯孔(英語でincisive foramen)について
- 切歯孔とは・その場所
- 切歯孔を通るもの
- 切歯孔に起こる病変・切歯管嚢胞
について実際のCT画像を用いてまとめました。
切歯孔とは?場所は?
切歯孔とは上顎骨の正中部に位置し、粘膜の小隆起である切歯乳頭(せっしにゅうとう)に覆われています。
切歯孔は切歯管(せっしかん)の開口部であり、類円形の形状であり、口の中の上の壁に認めます。
症例 20歳代男性 頭部打撲
頭部CTの骨条件の横断像です。
上の画像が骨の中を管状に進む切歯管で、下の画像がその切歯管が口腔内で開口している切歯孔になります。
この切歯管は上方では、鼻中隔基部の両側で開口します。
続いて、頭部CTの骨条件の冠状断像です。
顔の真ん中で上下に走る切歯管およびその開口部である切歯孔の様子がわかります。
最後に、頭部CTの骨条件の矢状断像です。
顔の真ん中でやや前斜めに切歯管およびその開口部である切歯孔の様子がわかります。
これらのCT画像を動画で確認してみましょう。
切歯孔を通るものは?
切歯孔には
- 鼻口蓋神経(びこうがいしんけい)
- 中隔後鼻枝(動脈)
- リンパ管
が通っています。
切歯孔に起こる問題は?
切歯孔に起こる問題としては、この部位に嚢胞を生じることがあり、
- 切歯管嚢胞(せっしかんのうほう)
と言います。
正中線上か、わずかに外れ、円形・卵円形やハート型を示すこともあります1)。
この切歯管嚢胞は、通常臨床的に問題となることはありませんが、
- 嚢胞内に感染を起こす
- 嚢胞内に腫瘍が生じる
- 神経浸潤による腫瘍の鼻腔底浸潤が起こる
ということが報告されている1)ため、切歯管嚢胞を認めた場合は、画像による辺縁の評価が重要となります。
症例 40歳代 男性(切歯管嚢胞)
頭部CTの骨条件の画像で、切歯管に拡大を認めています。
MRIではT2強調像で同部位に高信号を認めており、嚢胞であることが確認されます。
切歯管嚢胞と診断されました。
症例 50歳代男性 発熱(切歯管嚢胞の感染)
先ほどの症例と比べてかなり大きな切歯管嚢胞を認めています。
造影CTで嚢胞の壁の肥厚および壁の造影効果を認めており、内部に膿瘍を伴う感染であることが推測されます。
切歯管嚢胞の感染と診断されました。
最後に
切歯孔についてまとめました。
- 切歯管が開口する部位が切歯孔である。
- 切歯孔には鼻口蓋神経、動脈、リンパ管が通る。
- 切歯孔に起こる病変としては切歯管嚢胞があり、ときに感染や癌化が問題となることがある。
と言う点がポイントになります。
参考になれば幸いです。
参考文献:
1)画像診断 Vol.24 No.12 2004 P1468