泣きすぎて「涙腺(るいせん)崩壊する〜」なんて言葉を耳にすることがありますが、その涙腺がどこにあるのかご存知ですか?
涙腺は涙を分泌する場所なので、「たくさん涙が出る=涙腺崩壊」という例えが用いられますが、涙は目から自然に溢れてくるので、ここがそうだとピンポイントで答えられない方多いですよね。
そこで今回は、次から涙腺はどこって聞かれても大丈夫!
涙腺(るいせん「Lacrimal gland」)や、その場所について、図や実際のMRI画像を用いて、わかりやすく解説します。
また、その他にも、涙腺の病気や異常などについてもお話ししますね。
ここで覚えて、参考にされてください。
そもそも涙腺とは?
涙を生産するのが涙腺です。
あとで説明するように、涙は、鼻涙管(びるいかん)と呼ばれる管を経て下鼻道へ開口します。
下鼻道というのは鼻の奥にある道の一つです。
つまり、涙は鼻に出て行くのです。
ただし、通常は、涙液は鼻に到達する前までに蒸発してしまいます。
しかし、大泣きした場合は蒸発する前に鼻に到達します。
大泣きしたときに、涙だけでなく鼻水まで出るのは、実はこれ・・・鼻水でなく涙液・・・つまり涙が鼻まで到達するためだったんです。
また、涙腺から涙が分泌される仕組みは、神経と関わってくるため、感情などに左右され非常に複雑です。
涙腺の場所は?
涙腺は目の上にあります。
詳しくいうと、
眼窩の前上外側隅
にあるのです。
目の上(眼窩部・眼瞼部 )から分泌された涙は、
涙(涙液)→角膜・結膜→涙点(るいてん)→涙小管(るいしょうかん)→鼻涙管(びるいかん)→下鼻道(かびどう)
という経路をたどり、下鼻道へ至ります。
涙腺は上眼瞼挙筋の腱によって
- 眼窩部(上部)
- 眼瞼部 (下部)
にわけられます。
しかし、この2つはつながっており、導管(約12本ある)によって上結膜円蓋(上眼瞼の奥)の外側部に開いているのです。
分泌された涙(涙液)は、角膜と結膜の表面を潤しながら内眼角にいき、涙乳頭先端にある涙点から涙小管に入ります。
そして涙小管は、涙嚢(15〜20mmの長さがある)から鼻涙管を経て下鼻道へ至り開口しているのです。
症例 30歳代男性 スクリーニング
MRIのT2強調像という撮影方法の横断像(輪切り)です。
眼球の外側に涙腺を認めています。
症例 50歳代男性 スクリーニング
今度はMRIのT2強調像の冠状断像(前から見た図と考えてください)です。
眼球の両側の上の方に涙腺があることがわかります。
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涙腺の病気や異常は?
涙腺そのものの病気というよりも、涙に関する病気や異常が多いですが、
- 涙腺腫瘍(涙腺の腫大により、眼球突出や複視、眼瞼下垂などが起こる)
- 涙腺炎(何らかの原因により炎症が起こり、涙が分泌されなくなる)
- ドライアイ(涙液の量が減るために、目が乾き、充血や目やにの他、視力低下などを引き起こす)
- アレルギー性結膜炎(アレルギーによって炎症が起こり、涙が出る)
- 涙道閉塞(涙の排水管がつまり、常に涙で目が潤んだり、涙が溢れる)
などがあります。
涙腺の腫れ(腫大)を認めたときに考えるべき病気・鑑別は?
CT画像検査などで涙腺の腫大を偶然認めた場合に考えるべき病気としては、両側の涙腺が腫れている場合は、
- サルコイドーシス
- Sjögren症候群
- IgG4関連疾患
- 多発血管炎性肉芽腫(granulomatosis with polyangiitis)
などの非感染性炎症性疾患を考えます。
また片側のみの場合は、これらに加えて
- 慢性涙腺炎
- 悪性リンパ腫
- 涙腺癌
などの可能性があります。
基本的に検査で偶然涙腺の腫大を認めた場合は、症状がなくても眼科受診が必要となります。
関連文献)
解剖学講義 改定2版P521
第4版 イラスト解剖学P565・566
画像診断 vol.37 No.13 2017 P1329
最後に
涙腺について、ポイントをまとめます。
- 涙を生産するのが涙腺
- 涙腺の分泌は、神経に関わってくるため、感情によって分泌量が増える
- 涙腺は、目の上、眼窩の前上外側隅にある
- 涙(涙液)→角膜・結膜→涙点→涙小管→鼻涙管→下鼻道と続く
涙は、人間が分泌する液の中で最も清潔であるといわれています。
そうなると、大泣きして鼻水まで流しても、これも涙が鼻へ到達したものと考えると、恥ずかしさも軽減しますね。