尿管(にょうかん)は腎臓(じんぞう)と膀胱(ぼうこう)を結ぶ管で、腎臓で作られた尿を膀胱へ運ぶ役割があります。
尿管といえば、激しい痛みを伴う尿管結石が有名ですよね。
ところで、この尿管って体の中のどこにあるのか、その解剖学的な位置ってご存じですか?
今回は、尿管(英語表記で「Ureter」)について
- 位置(解剖)
- 長さ
- 働き
- 起こりうる病気
- 病気で痛みが出る場所
などを図(イラスト)や実際のCT画像を用いて解説したいと思います。
尿管の位置を解説!
- 腎盂(じんう)〜膀胱(ぼうこう)の間
を走る管です。
腎盂とは下の図のように腎臓から尿管が出るちょっと広い出口のような場所です。
尿管は、腎臓の腎門部の内下側から出て、大腰筋の前を斜めに(少し内側向き)下方へ向かい、男性ならば精巣・女性ならば卵巣動脈の後ろで交叉して下行しています。
また、第4腰椎の高さで総腸骨動・静脈の前を通って骨盤内に入っており、骨盤の側壁に沿い最後には前内方にまたがり、骨盤底の上を走り膀胱へとつながっています。
尿管の位置・解剖をCT画像でチェック
症例 50歳代男性
腹部造影CTの尿管への排泄相の横断像(輪切り)です。
尿管にちょうど造影剤がある状態で撮影したものです。
両側の腎臓と腎杯・腎盂に連続する尿管がわかりますね。
続いて、少し下の断面(スライス)の画像です。
大腰筋の前を尿管が下行している様子がわかります。
右側ではこのレベルで尿管が見えてきました。
さらに膀胱付近のレベルでの断面(スライス)を見てみましょう。
左の尿管が膀胱付近まで降りてきている様子がわかりますね。
この近くの尿管口から膀胱へと連続します。
これを冠状断像で見ると次のようになります。
前から見たCT画像と考えてください。
左の尿管の一部の様子がわかりますね。
この左の尿管を腎臓から膀胱まで実際のCT画像で追ってみたものを動画にしました。
(補足:尿管の排泄相に合わせたタイミングで撮影しており、今回の左側のように腎臓から膀胱まで造影剤で満たされていることもありますが、右側の尿管のようにタイミングが合わないこともあります。)
尿管の長さは?
長さは、上(腎盂側)から下(膀胱側)まで25〜27cmです1)。
- 尿管の上半部は腹腔内を走るため、腹部「abdominal part」
- 下半部は骨盤内にあるため、骨盤部「pelvic part」
といわれます。
尿管の生理的狭窄とは?
また、尿管は3ヶ所の狭窄部があり
- 腎盤〜尿管移行部
- 総腸骨動脈交叉部
- 膀胱壁貫通部
といいます。
この狭窄部には尿管結石が引っかかりやすい(尿管結石の好発部位)と言われています。
そもそも尿管とは?働きを解説!
腎臓で尿は作られますが、その尿は腎杯で受け、腎盂で一時的に保管されます。
そして、尿管を通り、膀胱へと運ばれ排泄されるのです。
つまり、尿管には腎臓で作られた尿を、膀胱まで運ぶ役割があるというわけです。
尿管に起こりやすい病気とは?
尿管で起こる病気としては、
などがありますが、とくに多いのが尿管結石で、さきほどの狭窄部に起こりやすいものです。
石で尿管が詰まってしまうと、尿が出られなくなりますので、より上側の尿管や腎盂・腎杯に尿がうっ滞します。
そうすると水腎症や水尿管症といった状態になります。
ここに感染などを起こすと腎盂腎炎など重篤な病気になることもあります。
尿管の病気で痛みが出る場所は?
一概にはいえませんが、尿管の病気で痛みが出る部位としては、
- 下腹部
- 脇腹(側腹部)
- 腰部
などがあります。
排尿時に痛みを伴うことも多くあります。
参考文献:
1)解剖学講義 改訂2版P401
イラスト解剖学 第9版P448
STEP泌尿器 P22
最後に
尿管について、ポイントをまとめます。
- 尿管は、腎盂から膀胱の間に走る管
- 25〜27cmの長さがある
- 腎臓で作られた尿を、膀胱まで運ぶ働きをしている
- 尿管の病気では、下腹部や脇腹に痛みを感じることがある
という点がポイントです。
尿管の解剖学的位置を見ることで、尿管結石などの病気の際にどこに何が起こっているのかが理解できます。
参考になれば幸いです<(_ _)>