首の付け根、鎖骨のすぐ上にあるくぼみを鎖骨上窩(さこつじょうか)といいます。

「鎖骨の上にしこりがある」「鎖骨の上が腫れている」と気づいて調べている方も多いのではないでしょうか。鎖骨上窩は、首のほかの場所に比べてしこりの原因に注意が必要な場所として知られています。

この記事では、鎖骨上窩の場所と中にあるもの、しこりや腫れの主な原因、病院で行われる検査、受診の目安を順番に解説します。

この記事でわかること

  • 鎖骨上窩の場所と、中を通るもの
  • 鎖骨上窩のしこり・腫れの主な原因
  • 左の鎖骨上のしこりが注目される理由(ウィルヒョウ転移)
  • 病院で行われる検査(エコー・CTなど)
  • 早めに受診したほうがよいサイン

鎖骨上窩とは?場所はどこ?

鎖骨上窩は、鎖骨の上にある三角形のくぼみです。首を横に傾けたり、肩をすくめたりすると、鎖骨の上がへこむのがわかります。そこが鎖骨上窩です。

おおまかには、次の3つに囲まれた場所にあたります。

  • 前側:胸鎖乳突筋(首を横に向けたときに浮き出る太い筋肉)
  • 後ろ側:僧帽筋(肩から首の後ろにかけての筋肉)
  • 下側:鎖骨

左右に1つずつあり、やせている人ほどくぼみがはっきり見えます。

鎖骨上窩を通るもの

鎖骨上窩は小さな場所ですが、大事な構造が集まっています。

  • 鎖骨上リンパ節:首や胸、おなかから流れてくるリンパ液が集まるリンパ節
  • 腕神経叢:首から腕へ向かう神経の束
  • 鎖骨下動脈・鎖骨下静脈:腕へ行き来する太い血管

特に重要なのがリンパ節です。体の広い範囲のリンパ液がここに集まるため、離れた臓器の病気がここのリンパ節の腫れとして現れることがあります。

MRIで見る首の付け根のリンパ節の場所

首の付け根を輪切りにした実際のMRI(正常例)です。

頸部MRI横断像での首の付け根のリンパ節領域(レベルIV・VB)と胸鎖乳突筋・総頸動脈・甲状腺

首のリンパ節は、画像診断では場所ごとに「レベル」で区分されます。鎖骨上窩のリンパ節は、主にレベルIV(内頸静脈に沿った首の下のほう)とレベルVB(鎖骨の上の外側)にあたります。しこりの場所がどのレベルにあるかは、原因を考える手がかりになります。

鎖骨の上のくぼみに、しこりを見つけました。すぐ病院に行くべき?
多くは炎症などで腫れたリンパ節ですが、鎖骨の上、特に左側のしこりは、おなかの病気が広がっているサインのこともあります。硬い・大きくなる・痛くないしこりは、早めに受診してくださいね。
医師
医師

鎖骨上窩のしこり・腫れの主な原因

鎖骨上窩のしこりで最も多いのは、リンパ節の腫れです。原因は大きく分けて次のようなものがあります。

1. 感染症によるリンパ節の腫れ

かぜなどのウイルス感染や、細菌感染でリンパ節が腫れることがあります。押すと痛みがあり、原因の感染が治まるとともに小さくなるのが一般的です。

まれですが、結核によるリンパ節の腫れ(頸部リンパ節結核)が首の付け根に出ることもあります。

2. がんの転移

鎖骨上窩のリンパ節は、胸やおなかのがんが転移しやすい場所です。首のほかの場所のリンパ節の腫れに比べて、がんなど重い病気が隠れている割合が高いことが知られています。

転移したリンパ節は、硬く、痛みがなく、動きにくいことが多いのが特徴です。

3. 悪性リンパ腫

リンパ節そのものから発生する血液のがんです。首や脇の下など複数の場所のリンパ節が腫れたり、発熱・寝汗・体重減少をともなったりすることがあります。

4. リンパ節以外のしこり

リンパ節以外にも、皮膚の下にできる脂肪腫(脂肪のかたまり)や粉瘤(皮膚の袋に老廃物がたまったもの)などが鎖骨の上にできることがあります。これらは良性であることがほとんどです。

左の鎖骨上のしこりが注目される理由(ウィルヒョウ転移)

左の鎖骨上窩のリンパ節は、医学的に特に注目される場所です。

おなかからのリンパ液は胸管という太いリンパ管に集まり、首の付け根の左側で静脈に流れ込みます。そのため、胃がんや膵臓がんなどおなかのがんが、左の鎖骨上のリンパ節に転移することがあります。

この左鎖骨上のリンパ節への転移は、報告した医師の名前からウィルヒョウ転移(ウィルヒョウリンパ節)と呼ばれています。

一方、右の鎖骨上窩のリンパ節には、肺や食道など胸の中の臓器からのリンパ液が多く流れ込みます。

場所 リンパ液が来る主な臓器
左の鎖骨上窩 おなか(胃・膵臓など)、胸
右の鎖骨上窩 胸(肺・食道など)

もちろん、左の鎖骨上にしこりがあるからといって、必ずがんというわけではありません。ただし、原因をはっきりさせておくべきしこりであることは確かです。

鎖骨上窩の痛みの原因

しこりではなく、鎖骨の上あたりの痛みやしびれが気になる場合もあります。代表的なものは次のとおりです。

  • 胸郭出口症候群:首から腕へ向かう神経や血管が、筋肉や骨の間で圧迫されて、腕のしびれやだるさが出る病気
  • 肩こり・筋肉の痛み:首や肩の筋肉の緊張による痛み
  • 鎖骨の骨折:転倒などのあとに痛みと腫れが出る

また、肺のてっぺん(肺尖部)にできるがんが、肩や腕の痛みとして気づかれることもあります。肩や腕の痛みが長く続き、整形外科的な治療で良くならない場合は、胸の検査も相談してみてください。

病院で行われる検査

鎖骨の上のしこりの受診の目安(様子を見てよいことが多いもの・早めに受診したいもの)

鎖骨上窩のしこりで病院を受診すると、次のような検査が行われます。

触診・問診

しこりの大きさ、硬さ、痛みの有無、動くかどうか、いつからあるかを確認します。発熱や体重減少などの全身の症状も大切な手がかりです。

超音波検査(エコー)

首のしこりで最初に行われることが多い検査です。被ばくがなく、リンパ節の大きさや形、内部の様子、血流などを詳しく見ることができます。

CT検査

しこりの広がりや、ほかのリンパ節の腫れを確認します。がんの転移が疑われる場合は、首から胸、おなかまで撮影して、もとになっている病気(原発巣)を探すことがあります。

細胞や組織の検査

エコーで見ながら細い針を刺して細胞を調べる穿刺吸引細胞診や、リンパ節の一部または全部を取って調べる生検で、診断を確定します。

必要に応じて、全身のがんの広がりを調べるPET-CTや、胃カメラなどの検査が追加されます。

早めに受診したほうがよいサイン

鎖骨上窩のしこりは、首のほかの場所のしこりよりも早めに医師に相談することが勧められる場所です。特に、次のような場合は受診してください。

  • しこりが2週間以上たっても小さくならない
  • しこりが硬く、押しても痛くない
  • しこりが動きにくい、だんだん大きくなる
  • 発熱、寝汗、体重減少、強いだるさがある
  • せき、飲み込みにくさ、胃の不調などが続いている

受診先は、内科または耳鼻咽喉科・頭頸部外科が一般的です。どこに行けばよいか迷う場合は、かかりつけ医に相談するとよいでしょう。

まとめ

  • 鎖骨上窩は、鎖骨のすぐ上にある三角形のくぼみ
  • リンパ節・神経・太い血管が集まる大事な場所
  • しこりの原因は、感染による腫れから、がんの転移、悪性リンパ腫までさまざま
  • 左の鎖骨上のしこりは、おなかのがんの転移(ウィルヒョウ転移)のことがある
  • 検査はエコーが基本で、必要に応じてCTや細胞の検査を行う
  • 2週間以上続く、硬い、痛くない、大きくなるしこりは早めに受診を

ご注意

この記事は一般的な医学情報をまとめたもので、個別の診断や治療を行うものではありません。気になる症状がある場合は、自己判断せずに医療機関を受診してください。