頸動脈小体(読み方は「けいどうみゃくしょうたい」)と呼ばれる解剖構造があります。

文字通り頸動脈に存在する小体なのですが、呼吸や血圧を調節する重要な役割を果たしています。

また腫瘍ができることがある部位でも知られています。

今回は、頸動脈小体(英語で「carotid body」)について、

  • 頸動脈小体とは
  • 頸動脈小体の場所・役割
  • 頸動脈小体を支配する神経
  • 頸動脈小体にできる腫瘍

についてまとめました。

頸動脈小体とは?場所・役割は?

頸動脈小体とは、総頸動脈が内頸動脈と外頸動脈に分岐する部位に位置する径1〜2mmの小体です。

この頸動脈小体は、血液の化学変化(酸素・炭酸ガス量の変化)を感受する化学的受容器と考えられています。

(この化学受容体は頚動脈以外に大動脈にも存在し、大動脈小体と呼ばれます。)

この頸動脈小体で感受した情報は、舌咽神経の頚動脈洞枝を経て呼吸中枢に送られ、呼吸数や血圧を調節しているのです。

つまり、血液の化学的変化が頸動脈小体で感受されると、呼吸中枢・循環中枢を介して反射的に、呼吸・拍動などの変化が起こるのです。

普段なにげに呼吸をしていますが、これらの化学受容体によりコントロールされているんですね。

頸動脈小体は、パラガングリオン(交感神経類似構造)を持っています。

頸動脈小体を支配する神経は?

頸動脈小体や頸動脈洞を支配するのは先ほど述べた舌咽神経(第Ⅸ脳神経)の中の副交感神経になります。

この神経は、頸動脈小体や頸動脈洞の情報を孤束核へ送る感覚線維です。

頸動脈小体からの情報は、舌咽神経の頸動脈洞枝により呼吸中枢に送られ、呼吸数の反射的増加を起こしています。

頸動脈小体腫瘍とは?

この頸動脈小体に腫瘍ができることがあり、頸動脈小体腫瘍と呼ばれます。

中でも、傍神経節腫(ぼうしんけいせつしゅ)(別名:グロムス腫瘍)と呼ばれる傍神経節から発生する腫瘍が有名です。

この傍神経節腫は頭頸部において、頸動脈小体の他、

  • 鼓室
  • 頚静脈球
  • 迷走神経

に好発することで知られています。

傍神経節腫の特徴として、血管が豊富なことで知られています。

これを反映してMRI画像所見としては、T2強調像で出血や血流の遅い血管が高信号(塩(salt)のよう)、血流の早い腫瘍血管がflow voidとして低信号(こしょう(pepper)のよう)として認められ、salt and pepper appearanceと呼ばれます。

また造影剤を用いると著明に造影されることで知られています。

頸動脈小体は内頸動脈と外頸動脈の分岐部に認めるため、頸動脈小体傍神経節腫により内頸動脈と外頸動脈の離開を示します。

初期には無症状ですが、進行すると周囲の血管や下位脳神経を圧迫・浸潤するほか、嗄声や燕下障害をきたすことがあります。

治療法として、根治を目指すならば手術で腫瘍の完全摘出が第一選択です。

症例 50歳代男性 左頸部腫瘤

左内頸動脈と外頸動脈を離開し、造影効果を示す腫瘤を認めています。

手術にて傍神経節腫と診断されました。

参考文献:
1)解剖学講義 改定2版P627
第9版 イラスト解剖学P219・622
頭頸部の画像診断P182

 

最後に

頸動脈小体についてまとめました。

  • 総頸動脈の分岐部にある、径1〜2mmの小体
  • 血液の化学変化を感受する化学的受容器
  • 脳における血液循環を調節する
  • 頸動脈小体の情報が舌咽神経を通って呼吸や血圧を調整する
  • 頸動脈小体の病気として、頸動脈小体腫瘍があり、中でも傍神経節種が好発する。

 

これらの点がポイントとなります。

お役に立てれば幸いです。

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