小脳(しょうのう)は脳にある部位の名称で、ラテン語で「小さな脳」という意味があるため、小脳と言います。

そんな小脳がどこにあるのかその解剖学的な位置(場所)をご存じですか?

 

今回は、この小脳(英語でcerebellum)について

  • 小脳の解剖学的位置(場所)を中心に
  • 小脳の機能
  • 小脳に起こりうる病気

などをわかりやすく解説したいと思います。

小脳が何かも知らなかったあなた、そして小脳の病気は知っていたけど位置まで知らなかったあなた、ぜひ参考にされてください。

小脳の解剖学的位置はココ!

脳の構造は大きく分けて、

  • 大脳
  • 間脳(視床・視床下部・下垂体)
  • 脳幹(中脳・橋・延髄)
  • 脳梁
  • 小脳

となっています。

この小脳は中枢神経の一部で、

  • 脳幹の後ろ側
  • 小脳テントの下側
  • 後頭蓋窩(こうずがいか)

に位置します。

つまり、後頭部にあたる部分にあります。

では、実際のCT画像で小脳の解剖を確認してみましょう。
医師
医師

症例 60歳代男性 スクリーニング

頭部単純CTの横断像(輪切り)です。

眼球が写っていますのでそのレベルです。

脳幹である橋のすぐ後ろに小脳が位置していることがCT画像からわかります。

ちなみにさきほど小脳は後頭蓋窩(こうずがいか)に位置すると申し上げましたが、後頭蓋窩とは以下の場所になります。

骨により作られる空間(穴)には上のような名称がついています。

すなわち、

  • 後ろ側に後頭蓋窩
  • その前方の両側に側頭下窩(そくとうかか)
  • 後頭蓋窩の真ん中の前方には、蝶形骨洞、篩骨洞

と名称がついています。

副鼻腔に分類される蝶形骨洞、篩骨洞の詳しい解剖についてはこちらにまとめました。→【CT画像あり】副鼻腔の場所・解剖を図で解説!起こる病気は?

 

では、次にMRI画像で小脳の位置関係、解剖を確認してみましょう。
医師
医師

症例 80歳代女性 スクリーニング

T2強調像の横断像(輪切り)です。

こちらでもCTと同様に脳幹である橋のすぐ後ろに小脳が位置している解剖がわかります。

MRIでは3方向で小脳の場所を確認してみましょう。

造影T1強調像の矢状断像です。
横から見ている画像です。

  • 大脳の下側
  • 小脳テントの下側
  • 脳幹部の後ろ側

に小脳が解剖学的に位置していることがよくわかります。

造影T1強調像の冠状断像です。
前から見ている画像と考えてください。

  • 大脳の下
  • 小脳テントの下

に小脳半球が位置していることがわかりますね。

 

小脳の解剖は?

この小脳は、

  • 小脳半球(左右両側に大きく膨隆する)
  • 虫部(正中にあり、くびれて細い)
  • 片葉小節葉(片葉と小節からなる)

に分けられていますが、系統発生学的には

  • 大脳小脳(左右の半球)
  • 脊髄小脳(虫部のこと)
  • 前庭小脳(片葉小節葉のこと)

の3つに分けられます。

 

小脳の機能は?

どんな働きをしているのですか?

  • 大脳小脳は→四肢の動きを調節・言語機能
  • 脊髄小脳は→姿勢や歩行、体幹や四肢の動きなどを調節
  • 前庭小脳は→頭部と眼球運動の調節、平衡の維持

などの働きをしています。

四肢や体幹にまつわる働きをしているんですね。

そうなんです。

いかに大切な機能を持った部位なのか、お分りいただけたかと思います。

小脳が障害されると、これらの働きがうまくできなくなるというわけですか?

以下に、小脳が障害された場合に起こりうる問題を解説します。
医師
医師

小脳が障害されると機能的にどんな問題が起こる?

  • 大脳小脳が障害されると→四肢の協調運動が障害されたり、構音障害
  • 脊髄小脳が障害されると→立位・座位での動揺や歩行障害
  • 前庭小脳が障害されると→平衡障害などが起こり、めまいや眼振

などが障害されます。

小脳の働きについてはこちらにもまとめました。→小脳とは?働きや障害による症状のまとめ

小脳に起こりうる病気は?

小脳では、どのような病気の起こる可能性があるのですか?

  • 小脳出血・・・(突発性の強い頭痛や吐き気、嘔吐や回転性のめまいを伴う)
  • 脳ヘルニア・・・(圧迫により、瞳孔異常や眼球運動障害、意識障害や呼吸障害が起こる)
  • 小脳腫瘍・・・(髄芽腫・上衣腫・毛様細胞性星細胞腫・血管芽腫などがある)
  • 小脳梗塞・・・(突然のめまいや悪心、嘔吐で発症し、四肢や体幹の小脳失調や構音障害が起こる)
  • 小脳萎縮・・・(毛細血管拡張性運動失調症といい、顔面や眼球結膜に母斑症が起こる)
  • 脊髄小脳変性症・・・(運動失調症状をきたす変性疾患)

などがあります。

症例 70歳代 男性

小脳右半球に高吸収な(白い)出血を認めています。

小脳出血と診断され、血腫除去術が施行されました。

参考文献:
病気がみえる vol.7:脳・神経 P42・43
全部見える 脳・神経疾患―スーパービジュアル 徹底図解でまるごとわかる! P47
イラスト解剖学P465・466
解剖学講義P709〜716

最後に

小脳の解剖学的な位置を中心にまとめました。

ポイントは以下の通りです。

  • 小脳は、脳幹(橋・延髄)の背側・小脳テントの下側・後頭蓋窩・後頭部にある
  • 小脳は系統発生学的に、大脳小脳・脊髄小脳・前庭小脳に分けられる
  • 小脳は、四肢の動き・言語機能・姿勢や歩行・体幹・平衡維持・眼球運動の調節などの機能をしている
  • 小脳が障害されると、四肢の協調運動が障害され、構音障害・歩行障害・平衡障害などが起こる

 

今回実際のCT画像やMRI画像を用いて解説しましたので、その解剖図を目に焼き付けていただき、解剖学的な場所を覚えていただければ幸いです<(_ _)>

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