あまり聞きなれないトルソー症候群(Trousseau症候群)という病名ですが、がん(悪性腫瘍)の合併症の1つで、脳卒中を生じた病態です。

逆に、脳梗塞などの脳卒中をきっかけに「がん」が見つかることもあるのです。

「がん」と「脳卒中」という一見関係なさそうなことがどうして起こるのでしょうか?

そこで今回は、トルソー症候群について

  • 原因
  • 症状
  • 診断
  • 治療法

などを図と実際のMRI画像を持ちいて、まとめてみました。

スポンサーリンク

トルソー症候群(Trousseau症候群)とは?

上に述べたように、がんなどの悪性腫瘍がある場合に脳卒中を起こすことがあり、それをトルソー症候群といいます。

ではなぜ脳卒中が起こるのかというと、悪性腫瘍(癌)によって、血液凝固が亢進する(血液が凝固しやすく、血栓症を起こしやすい状態)ためです。

1865年に、神経内科医であるトルソー(Trousseau)が初めて悪性腫瘍と静脈血栓症の関連を報告したことで、このトルソー症候群という病名がつきました。

静脈血栓症を発症した後1年以内に悪性腫瘍が発見されるリスクが高く、とくに卵巣癌・真性多血症・悪性リンパ腫などの場合に多いといわれています。

スポンサーリンク

トルソー症候群の原因は?

腫瘍細胞からの凝血原(凝固因子の前駆物質)放出、また癌細胞による静脈内皮細胞の直接障害が原因になります。

つまり、これらにより血液凝固能が上昇することで、血栓が形成されます。

形成された血栓が剥離し、血液の流れに乗り、それが脳にいくことで脳梗塞を引き起こす原因となるというわけです。

さきほど申しました疾患を含め、以下のような癌の合併症となることが報告されています。

  • 卵巣癌
  • 真性多血症
  • 悪性リンパ腫
  • 肺癌
  • 子宮癌
  • 乳癌
  • 腎臓癌
  • 前立腺癌
  • 消化器癌 など

悪性腫瘍があることで血栓ができやすくなり、血栓が血管でつまり脳梗塞に陥るというわけです。

しかし、最初に述べたように中には脳梗塞が起きてから詳しい検査をしたところ、悪性腫瘍が見つかるといった例もあります。

医師
では、トルソー症候群の場合、どのような症状が起こるのか、続いて説明します。

関連記事)脳卒中とは?脳梗塞との違いは?

トルソー症候群の症状は?

現れる症状は、脳梗塞と同様

  • 意識障害
  • 片麻痺
  • 一側の感覚障害
  • 頭痛
  • 失禁
  • 構音障害
  • 失語
  • 失認

などです。

しかし、血栓の大きさで、症状は異なり、中には無症状のこともあります。

詳しくはこちら

トルソー症候群の診断は?

臨床症状から、血液検査や画像検査などを行います。

血液検査

  • FDPが高値
  • 血液凝固亢進状態
  • LDHが高値

が見られれば、凝固能亢進や悪性腫瘍の可能性が疑われ、さらに詳しい検査が必要となります。

画像所見

脳卒中の診断

画像所見としては、基本的に脳梗塞の診断となりますので、CTやMRIが有効となります。

特に急性期の脳梗塞にはCTよりもMRIが有用です。

MRIでは拡散強調像(DWI)で血管支配域に一致しない多発の高信号を認めるのが特徴ですが、単発のこともあります。

皮質に多いといわれるものの、白質にも多発梗塞を生じます。

血栓が飛んで発症する梗塞であるため、脳血管の支配分布に一致しない多発梗塞を生じるのが一般的であり重要なポイントです。

症例 60歳代 女性 卵巣癌 意識障害

造影CTで左卵巣癌に加えて、腹膜の造影効果増強及び肥厚を認めています。

卵巣癌の癌性腹膜炎と診断されています。

意識障害を起こし、緊急MRI検査が施行されました。

MRIの拡散強調像では、両側の大脳半球に多数の異常な高信号(白い)を認めています。

血管支配領域に一致しない多発脳梗塞であり、凝固能の亢進を認めていた点からも、トルソー症候群(悪性腫瘍に合併した脳梗塞)と診断されました。

関連記事)脳梗塞の検査は何科で受ければいい?MRI検査はするの?

原発の悪性腫瘍(がん)の診断

脳梗塞と診断されると今度は、脳梗塞の原因検索が行われます。

この際に、

  • 心臓エコー検査
  • 頚動脈エコー検査

といった、動脈硬化や血栓形成の評価に加えて、悪性腫瘍の可能性がある場合には、

  • 腹部エコー検査
  • 胸腹部造影CT(もしくは単純CT)
  • 胃カメラ
  • 大腸カメラ

などが行われ、原因となっている悪性腫瘍を検索します。

スポンサーリンク

トルソー症候群の治療法は?

トルソー症候群の治療法としては、薬物療法で抗凝固療法(ワルファリン)が選択されます。

しかし、トルソー症候群は悪性腫瘍が原因であるため、同時に悪性腫瘍の治療も必要です。

参考文献:
臨床画像 Vol 22 No 03 0603 P80
臨床画像3 vol.28 No3  2012 臓器所見から全身性疾患を診断するP254
臨床画像 Vol 22 No 04 0604 P15
脳卒中診療のコツと落とし穴P92・93
参考サイト:
先進医療net 脳卒中 Report
再発転移がん治療情報

最後に

医師
トルソー症候群についてまとめます。
  • 悪性腫瘍(癌)によって、血液凝固が亢進することで、脳卒中を生じる病態
  • 腫瘍細胞からの凝血原放出、また癌細胞による静脈内皮細胞の直接障害が原因
  • 脳梗塞症状が現れる
  • 血液検査や画像診断を行い診断する
  • 薬物療法で抗凝固療法と同時に癌治療も重要

 

脳卒中を起こした場合、本人は正確に症状を伝えることが困難です。

家族など周りの人が、悪性腫瘍の有無など、元々の疾患を伝えるようにしましょう。

スポンサーリンク

関連記事はこちら