脳は人間の生命維持・思考・感覚など、さまざま重要な働きをする部位でもあります。
今回は、そんな脳の中でも間脳の一部を占める部位である視床に起こる「視床症候群」についてのお話です。
これから視床症候群(読み方は「ししょうしょうこうぐん」・英語表記で「Thalamic syndrome」)について、
- そもそも視床症候群とは何なのか
- 視床症候群の症状
- 視床症候群の原因
などを順に解説していきます。
視床症候群とは?
視床は大脳と中脳をつなぐ、間脳の一部で、脳の奥の方に存在しています。
視床は、
- 視覚
- 聴覚
- 体性感覚
など、嗅覚以外の感覚入力を大脳へと伝える大事な役割を担っています。
そんな視床が何らかの原因で一部障害され、それに伴いいくつかの症状が現れることを、視床症候群と言います。
視床症候群の症状は?
視床症候群の症状には、
- しびれ
- 痛み
- 片麻痺
- 不随意運動
などがあります1)。
しびれ
病変のある視床とは反対側の半身の全感覚障害が起こることがあります。
痛み
病変のある視床とは反対側の顔面や四肢に生じる、発作性の頑固な激痛が起こることがあります。
痛みは自発痛や風や洋服によるちょっとした刺激でも誘発されるのが特徴です。
知覚が鈍ったり、や疼痛の増加などの知覚異常を視床痛と呼ぶことがあります。
片麻痺
視床に隣接している内包に病変が及ぶと病変のある視床とは反対側の片麻痺(半側の上下肢の運動麻痺)が起こることがあります。
不随意運動
病変のある視床とは反対側の舞踏病ないし、アテトーゼ様運動といった不随意運動が起こることがあります。
手指の一つひとつが違った不随意運動を伴い、3〜6ヶ月後に手指の変形をきたす2)ものを視床手と呼ぶことがあります。
視床症候群の原因は?
視床に血流を送っている後大動脈の主幹血管閉塞などによって起こります。
つまり、視床の脳出血や脳梗塞が原因となり起こることがあります。
症例 70歳代女性 頭痛、左上下肢麻痺
頭部単純CTの横断像です。
右視床に高吸収な(白い)出血を認めています。
一部、右内包後脚にも出血は及んでおり、それに伴う左上下肢の麻痺(視床症候群の症状の一つ)が起こっていると考えられます。
こちらの症例を動画で解説しました。
参考文献:
1)病気がみえる vol.7:脳・神経 P96・194
2)病態生理できった内科学神経 Part5 P180
最後に
視床症候群について解説しました。
- 視床において、いくつかの症状が伴って現れるのが視床症候群
- 視床痛や視床手が現れる
- 症状は、対側半身の全感覚障害強い痺れ・痛み・片麻痺・不随意運動など
- 後大動脈の主幹血管閉塞が原因で起こる
といった点がポイントとなります。
参考になれば幸いです。