頭蓋内圧亢進(頭蓋内の圧が高くなること)が起こると、クッシング現象(Cushing現象)を起こすことがあります。
しかし、そのクッシング現象とは、どのようなものかご存知ですか?
今回は、クッシング現象について
- 機序
- 症状
- 原因
- 対応
など、図を用いてわかりやすく説明したいと思います。
クッシング現象とは?機序は?
急激に頭蓋内圧の亢進が起こることで、血圧の上昇と徐脈が現れるものを、クッシング現象といいます。
頭蓋内圧が上昇すると、脳への血流が届きにくくなります。
これがこのクッシング現象の始まりです。
脳への血流が届きにくくなると、血圧を上げてでも脳への血流を保とうと体は反応します。
つまり、(頭蓋内圧が亢進して)頭蓋内の末梢の血管が開くにくくなる(抵抗が高まる)ことで、脳内の血液循環量が減少しますが、その脳血流量を維持するために全身の血圧が上昇します。
すなわち、血圧が上がりすぎないように、上昇した血圧を一定に保つための機能が心臓にはあり、心筋は心拍出量(つまり心臓が送りだす血液の量)を少なくするように反応します。
それによって心拍数が低下し、結果、徐脈が起こるのです。
クッシング現象の症状は?
先ほど述べました通り、クッシング現象の症状は、
- 血圧上昇
- 徐脈
の2つです。
またクッシング現象は、急激な頭蓋内圧亢進により起こりますので、原因となる急激な頭蓋内圧亢進によっても症状を起こすことがあります。
その場合、
- 激しい頭痛
- 悪心・嘔吐
と行った症状を起こすことがあるのです。
クッシング現象の原因は?
頭蓋内圧亢進となる、
- 頭蓋内血腫、脳内出血
- 悪性脳腫瘍
- 脳膿瘍
- 脳梗塞
- 水頭症
などが原因となります。
脳梗塞で頭蓋内圧亢進が生じるのは、範囲の広い脳梗塞が起こると周囲の浮腫性変化が強くなってしまうことや、梗塞に続いて脳内出血(これを出血性梗塞という)を起こすことがあるためです。
クッシング現象とクッシング症候群の違いは?別物?
クッシング症候群は、同じ人が発見したため(アメリカの脳神経外科医ハーヴェイ・ウィリアムス・クッシング)、名前は同じ「クッシング」がついていますが、病気としては別物です。
クッシング症候群は副腎で産生されるコルチゾールと呼ばれるホルモンが血中で増えてしまう結果、様々な症状が起こってしまう病態であり、副腎腺腫や下垂体腺腫などが原因となります。
クッシング現象の対応は?
クッシング現象は、脳ヘルニアを発生してしまうことにもつながってしまう危険なサインでもあるため、早急に対応が必要です。
- 原因となる疾患の治療
- 血圧を下げる
- 脈の安定
まずは、早急に検査を行い、原因となる疾患を突き止める必要があります。
そして、内科的治療もしくは外科的治療を行い、原因を取り除き、血圧や脈を安定させることです。
参考文献:
病気がみえる vol.7:脳・神経 P129
全部見える 脳・神経疾患―スーパービジュアル 徹底図解でまるごとわかる! P63
最後に
- 急激に頭蓋内圧の亢進が起こることで、血圧の上昇と徐脈が現れるもの
- 脳の血液が不足し、全身の末梢血管抵抗により、血圧が上昇し、それを一定に保つため徐脈となる
- 原因となる疾患を突き止めることが重要
脳ヘルニアになると、命の危険も伴います。
そのため、早急に原因を突き止め治療することが重要です。