胸部レントゲン検査(胸部X線)を受けると

「心陰影の拡大があります。」
「心拡大を認めます。」

などと指摘されることがあります。

心陰影(しんいんえい)とは文字通り心臓の影です。

では、心陰影の拡大とはどういうものであり、どんな原因が考えられるのでしょうか?

今回は心陰影拡大(読み方は「しんいんえいかくだい」)について、実際のレントゲン画像を用いて解説しました。

心陰影の拡大とは?

心陰影の拡大とは、胸部レントゲン検査で、心臓の大きさが正常よりも大きいということです。

心臓が大きいというのは、なんとなく大きいというわけではなく基準があります。

胸部レントゲンの画像で、心胸比(読み方は「しんきょうひ」)(英語でCTR : Cardio-Thoracic Ratio)というものを測定します。

この心胸比が男性では50%以下、女性では55%以下が正常とされています。

ですので、これを超えた場合、つまり男性の場合50%以上、女性の場合55%以上の場合

  • 心陰影の拡大がある
  • 心拡大がある

と判定します。

上の画像で大まかに、心臓の幅が、胸郭の幅の半分以上あれば、心陰影の拡大があるということができます。

上の画像は正常範囲です。

 

では実際の心陰影の拡大のレントゲン画像を見てみましょう。

症例 50歳代男性

心胸比は56%と50%を超えています。

先ほどの画像と比べて白い部分が大きく左側(向かって右側)に突出していることがわかります。

「心陰影の拡大」があると診断できます。

心陰影の拡大の原因は?

心陰影が拡大する原因としては、

  • 心不全
  • 心臓弁膜症
  • 心嚢液貯留
  • 肥満
  • 心臓の周囲の脂肪沈着
  • 吸気不十分

などがあります。

このうち吸気不十分は、レントゲンを撮影するときに十分に息を吸えていないということですので病的ではありません。

また心臓周囲の脂肪沈着も病的ではなく、正常範囲内のこともあります。

 

心陰影の拡大の症状は?

心陰影の拡大で生じる症状としては、その原因によります。

心不全の場合は、呼吸苦、喀痰、むくみ、疲労感、動悸などが挙げられます。

肥満や心臓周囲の脂肪沈着が原因で心陰影の拡大となっている場合は、通常は無症状です。

心陰影の拡大の精密検査は?

胸部レントゲン検査で「心陰影の拡大」を指摘された場合、人間ドック学会の胸部エックス線健診判定マニュアル1)によりますと、

判定区分は

  • C:要経過観察
  • D2:要精検

となっています。

つまり、心陰影の拡大の程度により、経過観察をするか、精密検査をするかが分かれます。
(この境界については記載はありません。)

次の精密検査としては、心臓の超音波検査である

  • 心エコー

が挙げられます。

心臓にプローべを当てて、心肥大がないかや、弁膜症がないかなどを調べます。

心陰影の拡大の治療は?

心陰影の拡大の治療としては、その原因疾患を治療していくことになります。

心不全があれば心不全の治療を行います。

肥満の場合は、減量が心陰影の拡大の治療となります。

参考文献:
1)胸部エックス線健診判定マニュアル – 日本人間ドック学会

最後に

胸部レントゲン検査で指摘されることがある「心陰影の拡大」についてまとめました。

心陰影の拡大を認めた場合、人間ドック学会のがイドラインによると、経過観察か精密検査が必要となります。

症状がないからといって、放置をしないことが重要です。

参考になれば幸いですm(_ _)m

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