胸膜炎(きょうまくえん)という病気があります。

読んで字のごとく胸部の胸膜という場所の病気なのですが、同じ胸部の病気である肺炎と比べるとちょっとわかりにくいですよね。

私も最初なかなかイメージがつきませんでした。

そこで今回は、

  • そもそも胸膜炎とは何か?
  • 胸膜炎の原因
  • 胸膜炎の症状
  • 胸膜炎の診断・画像所見
  • 胸膜炎の治療

について、図(イラスト)や実際のCT画像、レントゲン画像を用いてわかりやすく解説しました。

とくに画像を豊富に集めてみましたので、この機会に胸膜炎の理解を深めましょう!

では行きます!

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胸膜炎とは?

まず胸膜には2種類あります。

肺の表面を覆う臓側胸膜と胸腔全体を覆う壁側胸膜の2種類です。

胸膜炎とはなんらかの原因により、その胸膜に炎症が起こった状態であり、2つの胸膜の間の胸腔内に胸水(滲出性胸水)が貯留します。

胸水についてはこちらにまとめました。→【保存版】胸水とは?症状、鑑別は?心不全以外も徹底解説!

医師
その原因を次に解説します。

胸膜炎の原因は?

原因としては、

  • 癌性胸膜炎(がんせいきょうまくえん)
  • 結核性胸膜炎(けっかくせいきょうまくえん)
  • 細菌性胸膜炎(さいきんせいきょうまくえん)
  • 膠原病性胸膜炎(こうげんびょうせいきょうまくえん)

の4つに分けられます。

中でも結核性胸膜炎、癌性胸膜炎が多く、この2つで胸膜炎全体の60-70%を占めます1)

癌性胸膜炎

癌性胸膜炎とは、肺がんなどが胸膜に転移や播種した状態を指します。

肺がんのほか、乳がんなどの転移性腫瘍、悪性リンパ腫、悪性胸膜中皮腫といった癌が癌性胸膜炎を起こします。

結核性胸膜炎

胸膜直下に結核菌が感染巣を作り、それが胸膜に直接浸潤した状態を指します。

石灰化を示す胸膜炎は結核性胸膜炎によるものがほとんどです。

診断の決め手を欠く片側性の大量胸水の場合、結核性胸膜炎を常に鑑別に挙げるべき2)と言われています。

細菌性胸膜炎

細菌性の肺炎や肺膿瘍の炎症が胸膜に及んだものを指します。

逆に細菌性の胸膜炎が膿胸に進行することもあります。

(細菌性肺炎からの胸膜炎が膿胸に至るのは0.5%-2%程度と報告されています。)

膠原病性胸膜炎

 

全身性エリテマトーデス(SLE)や関節リウマチ(RA)など膠原病によって胸膜に炎症が起こったものを指します。

全身性エリテマトーデス(SLE)では、胸膜炎が初発症状になることもあり、約半数の患者さんに見られ、そのうち胸水を伴うのは半数程度で、両側に胸水を伴うのはさらに半数程度と言われています3)

関節リウマチ(RA)では胸膜炎は最も頻度の高い肺病変で、臨床的に症状を要するのは20%程度され、典型的には40-50歳代の男性、活動性の関節症状あるいは皮下結節陽性例に多いとされます4)

他、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、家族性地中海熱といった血管炎に胸膜炎を合併することがあります。

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胸膜炎の症状は?

炎症が胸膜に及ぶ結果、胸膜に痛みを生じます。

初期症状としては、胸痛・背部痛といった症状で発症することが多く、他、感染性の場合は発熱、癌性胸膜炎の場合は呼吸困難といった症状を起こすこともあります。

胸膜炎の診断は?

胸膜炎の診断は胸水を採取したり、胸膜の一部を生検して検査をします。

それぞれの胸水の性状は以下の通りです。

癌性胸膜炎の場合、肺腺癌では胸水のCEA値が上昇し、悪性胸膜中皮腫では胸水のヒアルロン酸が上昇します。

またレントゲンや胸部CTといった画像検査も診断に役立ちます。

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胸膜炎のレントゲン、CT画像所見は?

レントゲンや胸部CTでは、

  • (レントゲンの場合、CP angleが鈍(dull)であることより)胸水があること
  • 胸膜肥厚があること
  • 細菌性胸膜炎の場合は肺炎像を疑う浸潤影があること
  • 陳旧性の結核性胸膜炎の場合は胸膜の石灰化があること
  • 癌性の場合は、肺がんやその他の癌を疑う所見があること

が診断に有用です。

また、胸膜炎の陳旧化により、肺の容積が小さくなることがあります。

医師
まずは結核性胸膜炎の画像から見てみましょう。
70歳代女性 結核性胸膜炎

胸部単純CTの画像です。

左側に大量の胸水及び胸膜肥厚を認めています。
縦隔の右側の偏位もあります。

胸水所見と合わせて、結核性胸膜炎と診断されました。

症例 80歳代男性

胸部レントゲンの画像です。

左胸膜に沿って粗大な石灰化と、左肺野の収縮を認めています。

胸部単純CTでは左胸膜の肥厚及び粗大な石灰化・左肺野の収縮を認めています。

陳旧性結核性胸膜炎と診断されました。

医師
次に癌性胸膜炎の画像を見てみましょう。
症例 70歳代男性 右肺がん術後

右胸腔内に播種結節を疑う造影される腫瘤あり。

また少量腹水を認めています。

腹側では右の胸膜の肥厚を軽度認めています。

癌性胸膜炎と診断されました。

症例 80歳代男性 右肺がん術後

胸部レントゲンです。

右肺がん術後で、右肺は収縮を認めています。

また右のCP angleはdull(鈍)であり右胸水を疑う所見です。

胸部造影CTでは、胸膜の肥厚の様子がよくわかります。
また右胸水を認めています。

癌性胸膜炎と診断されました。

症例 50歳代女性 左乳がん術後

胸部単純CTの画像です。

左乳がん術後に、左胸水が出現しました。

精査の結果、癌性胸膜炎と診断されました。

医師
最後に細菌性胸膜炎の画像を見てみましょう。
症例 30歳代 男性 左胸痛・発熱

胸部レントゲンの画像です。

左下肺野に浸潤影を軽度認めており、肺炎を疑う所見です。

胸部単純CTの横断像の画像です。

左肺底部に及ぶ浸潤影を認めています。

これを冠状断像で見てみると、浸潤影は左肺底部の胸膜に及んでいることがわかります。

横から見た矢状断像ではその様子がさらに明瞭です。

肺炎が胸膜に及び胸膜炎を起こしていることがわかります。

細菌性肺炎+胸膜炎と診断されました。

症例 50歳代 男性 左胸痛・発熱

胸部単純CTでは左胸膜に及ぶ浸潤影を広範に認めています。

これを縦隔条件で見てみると、浸潤影の内部には低吸収域を認めています。

細菌性肺炎+胸膜炎に加えて、肺に膿が存在する肺化膿症と診断されました。

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胸膜炎の治療は?

治療は原因により異なります。

基本的に原因に対する治療を行います。

  • 癌性胸膜炎
  • 結核性胸膜炎
  • 細菌性胸膜炎
  • 膠原病性胸膜炎

それぞれについて見て行きましょう。

癌性胸膜炎の治療

  • 化学療法(抗がん剤)
  • 胸腔ドレナージ
  • 胸膜癒着術

結核性胸膜炎の治療

  • 抗結核薬
  • 胸腔ドレナージ

細菌性胸膜炎の治療

  • 抗菌薬(抗生物質)
  • 胸腔ドレナージ(とくに膿胸を伴う場合)

膠原病性胸膜炎の治療

  • ステロイド、免疫抑制薬
  • 胸膜癒着術

といった治療がそれぞれ行われます。

胸膜癒着術は胸膜を癒着させ胸腔のスペースを無くしてしまうことで、気胸の合併を防ぐのが目的で行われます。

気胸の治療にも用いられます。

最後に

胸膜炎についてまとめました。

ポイントは以下の通りです。

  • 胸膜炎とは胸膜で炎症が起こっている状態
  • その原因は、結核、がん、細菌、膠原病の4つが中心
  • 診断には胸水や場合によっては、胸膜を生検する
  • レントゲンやCTといった画像診断も有用
  • 胸水や胸膜肥厚といった所見が診断に重要
  • 治療は原因ごとに異なる

胸膜炎に対しての理解は深まったでしょうか?

参考になれば幸いです( ^ω^ )

参考文献:
病気がみえる vol.4 呼吸器(メディックメディア)1)P233
胸部のCT第3版(メディカルサイエンスインターナショナル) 2)P366、3)P470、4)P468

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