骨盤は、人間の軸となる背骨を土台として支える重要な部位でもあります。

しかし、様々なシチュエーションで強い外力が加わると、この骨盤骨が骨折することがあります。

その場合、どのような症状をきたし、治療が必要になるのでしょう?

骨盤骨折を診断する際には、分類を押さえておく必要があります。

そこで今回は、骨盤骨折(読み方は「こつばんこっせつ」英語表記で「Pelvic fracture、fracture of the pelvis」)について

  • 原因
  • 症状
  • 分類
  • 画像診断
  • 治療
  • 予後

について、図(イラスト)や実際のCT画像を含め、わかりやすくまとめました。

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骨盤骨折とは?

骨盤は、左右1対ずつの寛骨・仙骨・尾骨で構成される大腿骨と脊柱の間で体を支える部位です。

寛骨は腸骨・坐骨・恥骨が互いに融合したものです。

骨盤CTを骨だけで3D構成した3DCTで見ると下のようになります。

さらにこれを横から見ると下のようになります。

この3DCTで骨盤骨を左右に回転させると次のような動画になります。

骨盤骨折はこれらの骨で作られた骨盤の一部に骨折を生じたもので、

  • 寛骨臼骨折(股関節の関節内骨折)
  • 骨盤輪骨折(寛骨臼骨折以外の骨盤骨折)

に大きく分けることができます。

医師
続いて骨盤骨折の原因を説明します。

骨盤骨折の原因は?

この骨盤骨折を起こす原因として、大きな外力によって生じるもので、

  • 高エネルギー外傷によるもの
  • 低エネルギー外傷によるもの

とに分けられます。

高エネルギー外傷となる原因

  • 交通事故
  • 高所からの落下

低エネルギー外傷となる原因

  • 高齢者の転倒
  • スポーツ中の剥離骨折(裂離骨折)

などがあります。

高エネルギー外傷による骨盤骨折は、骨盤輪の破綻を伴う不安定骨折で、低エネルギー外傷による骨盤骨折は、骨盤輪の破綻を伴わない安定骨折が多い特徴にあります。

骨盤輪とは?
骨盤輪とは、腸骨・坐骨・恥骨・仙骨で囲まれた輪っかのことです。

 

また、外力・エネルギーを受ける方向により以下の骨折が起こりやすくなります。

前方からの外力

  • 恥骨骨折
  • 坐骨骨折
  • 恥骨離開

外側からの外力

  • 寛骨臼骨折
  • 腸骨骨折

垂直方向への外力

  • 恥骨骨折
  • 坐骨骨折
  • 同側の仙腸関節離開
  • 寛骨臼骨折

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骨盤骨折の症状は?

  • 外観上の変形
  • 疼痛
  • 腫脹
  • 圧痛
  • 脚長差(片方のみ短縮している)

などがあり、高エネルギー外傷により血管や内臓の合併損傷を伴えば、大量出血をきたし、出血性ショックや胸腹部症状・神経症状まで出現することもあります。

合併損傷を起こしやすい部位として、腎臓・膀胱・子宮・膣・腸管・肛門などがあります。

しかし、必ずしも接触や転倒を伴わない低エネルギー外傷によるスポーツ中の剥離骨折では、症状を我慢してしまい発見が遅れることもあります。

関連記事)腸恥滑液包炎の原因や治療法は?MRI画像と共に解説

骨盤骨折の分類は?

AO分類日本外傷学会分類などの分類を用いて骨盤輪の不安定性の評価を行います。

骨盤骨折のAO分類(改訂タイル分類)

AO分類(改訂タイル分類)により、

  • A 安定型
  • B 部分的安定型
  • C 不安定型

に分けられます。

その中でもさらに

A

  • A1 どこかの剥離骨折
  • A2 腸骨翼骨折
  • A3 仙骨の横骨折

B

  • B1 前方圧迫型骨折
  • B2 外側圧迫型骨折
  • B3 両側部分的不安定型骨折

C

  • C1 片側不安定型骨折(腸骨レベル・仙腸関節レベル・仙骨レベル)
  • C2 両側・部分的安定型と不安定型の合併
  • C3 両側不安定型骨折

というように分類されます。

骨盤骨折の日本外傷学会分類(2008)

日本外傷学会分類では、I型(安定型)、II型(不安定型)、III型(重度不安定型)に分類されます。

各々のaが片側性、bが両側性を示します。

日本外傷学会臓器損傷分類2008より引用。

I型(安定型)

後方骨盤輪(仙骨・仙腸関節)の損傷を認めないものをⅠ型に分類します。

すなわち、骨折は前方の骨盤輪に限局する骨折、もしくは、骨盤輪が保たれているものを指します。

II型(不安定型)

単純X線像で前方骨盤輪の離開を認めます、単純X線像で明らかな後方骨盤輪の離開を認めず、CT像で両側仙腸関節の離開幅が10mm以下のものをⅡ型に分類します。

III型(重度不安定型)

単純X線像で明らかな後方骨盤輪の離開を認めるものをⅢ型に分類します。

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骨盤骨折の診断は?

臨床症状から、X線やCT検査を行います。

X線検査

骨盤の左右非対称性・恥骨結合の離開・寛骨臼骨折の有無をチェックします。

また、レントゲンでは、仙棘靭帯・仙結節靭帯付着部における剥離骨折の有無もチェックします。

CT検査

CTでは、レントゲンで指摘できなかった骨折が認められることがあります。

特にレントゲンでは見えにくい、後方の骨盤輪の骨折が疑われる場合はCT検査は行うべきです。

骨折だけではなく、骨折部の周囲の血腫、骨盤内の臓器損傷の有無をチェックします。

血管損傷を確認するには、造影CTを合わせて撮影することが有用となります。

症例 60歳代男性 交通外傷

骨盤単純CTで、両側の恥骨及び右の坐骨に骨折線を認めています。

骨盤骨折においても3DCTが全体像を見るのに有用です。

後方骨盤輪の離開を認めていません。

日本外傷学会分類のⅠbの骨盤骨折に相当します。

症例 70歳代男性 交通外傷

骨盤単純CTで、左の腸骨に仙腸関節に達する骨折線を認めています。

ただし、仙腸関節の離開は認めていません。

3DCTでは左の恥骨骨折も認めています。

この症例は、後方骨盤輪の離開を認めておらず日本外傷学会分類のⅠaの骨盤骨折に相当します。

症例 50歳代 男性 交通外傷

骨盤単純CTで、右の恥骨及び坐骨に骨折線を認めています。

坐骨では骨の転位を伴っています。

左仙腸関節は右側に比べてやや離開を認めていますが、10mm以下で有意ではありません。

また、前方骨盤輪の離開も認めず。

この症例も、日本外傷学会分類のⅠaの骨盤骨折に相当します。

症例 70歳代男性 交通外傷

骨盤単純CTで、右の寛骨臼及び坐骨に骨折線を認めています。

前方及び後方骨盤輪の離開は認めておらず(非提示)、この症例も、日本外傷学会分類のⅠaの骨盤骨折に相当します。

ただし腹部単純CTで右優位に後腹膜を中心とした腹膜外腔に血腫を認めています。

膀胱は左側に圧排されています。

腹膜外腔沿いに右側は腎下極レベルまで血腫が広がっていることがわかります。

骨盤骨折に伴う後腹膜出血と診断されました。

あとで述べる動脈塞栓術は施行されず、保存的に加療されました。

骨盤骨折の治療は?

保存療法もしくは、手術療法が選択されます。

また、CTで血腫(主に後腹膜に出血する)や造影剤の漏出(extravasation)が認められ、かつ血行動態が不安定な場合は、緊急血管造影を行い、動脈塞栓術を行います。

保存療法

骨盤の安定性が保たれている場合には、保存療法が選択されます。

  • 固定
  • 牽引
  • 整復

などが行われますが、合併損傷を伴う場合には、そちらの治療が優先されます。

とくに出血性ショックなどを起こしている場合には、処置が遅れると死亡に至るケースもあるため、全身状態の管理が最優先となります。

手術療法

骨盤の安定性が保たれず、不安定性が生じている場合には、手術適応となります。

手術では、プレートや脊椎固定用のインプラントなどを用いた内固定術がおこなわれます。

動脈塞栓術

血管損傷を伴い、後腹膜に出血し、血行動態が不安定な場合に行います。

損傷を受けやすい血管(動脈)としては、上殿動脈、腸腰動脈、外側仙骨動脈、内陰部動脈などがあります。

損傷している血管をゼラチンスポンジ(GS)や金属コイルで詰める動脈塞栓術を透視下で行います。

骨盤骨折の合併症は?

骨盤骨折による合併症としては、

  • 尿路損傷
  • 血管損傷による出血性ショック
  • 消化管損傷
  • 神経損傷

などが挙げられます。

出血性ショックに対しては、緊急輸血及び、上で述べた動脈塞栓術を行うことがあります。

尿路損傷は骨盤骨折の10-20%に起こるとされており、骨盤輪の骨折に合併しやすいとされています。

この場合、緊急手術が適応となる場合があります。

骨盤骨折の予後は?

とくに手術後は、保存療法よりも早期にリハビリを行うことが可能です。

しかし、リハビリを早期に行いすぎると、股関節に変形をきたす、変形性関節症を起こすこともあります。

そのため、定期的な診断を元に、医師と共にリハビリを相談しながら進めていく必要があります。

参考文献:
すぐ役立つ救急のCT・MRI
 P238・239
整形外科疾患ビジュアルブック  P352・353

全部見えるスーパービジュアル整形外科疾患 P288・289

最後に

  • 高エネルギー外傷・低エネルギー外傷による原因で骨盤骨折に至る
  • 変形や疼痛、圧痛などのほか、合併損傷を伴うこともある
  • X線・CT検査によって診断し、治療方針を決める
  • 保存療法・手術療法が選択される

 

高齢者の場合、尻もちをついた程度の衝撃で、骨盤骨折に至ることもあります。

とくに症状をうまく訴えることのできない認知症患者では、左右差のあるようなヒョコヒョコ歩きをしている等、家族が異変に早期に気付くことも重要です。

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