環椎(読み方は「かんつい」)は、背骨である椎体骨の1つですが、中でも頸椎の最も上に存在します。

環には「輪の形をしたもの」と言う意味がありますが、環椎とはその字のごとく、輪っかのような形をしています。

今回は、

  • 環椎の解剖学的な場所
  • 環椎後頭骨関節
  • 環椎に起こる病気

について実際の画像を交えてまとめました。

環椎とは?解剖学的な部位は?

環椎(かんつい)は頚椎の中でも最も上に位置する骨のことであり、別名 第1頚椎(だいいちけいつい)やC1(シーいち、シーワン)と呼ばれます。

頚椎は英語でcervical spine(cervical vertebra)と呼ばれますので、この頭文字のCをとってCの何番と呼ばれます。

そんな環椎の場所ですが、頭蓋骨の一つである後頭骨と後に説明する環椎後頭関節を形成しますので、解剖学的な部位としては、頭蓋骨のすぐ下ということになります。

実際のCT画像を見てみましょう。

頸部CTの横断像(輪切り)です。

このように環椎は環状の形をしているため環椎と呼ばれます。

その中には軸椎の歯突起と呼ばれる出っ張りがあります。

またCT画像を3D再構成したものが次の画像です。


これを見ると頭蓋骨のすぐ下に環椎が存在していることがわかりますね。

環椎軸椎とは?

7つある頸部の骨(背骨)は、医学用語ではC1から順番にC7まで番号をつけて呼ばれます。

このうちC1とC2は別名があり、先ほど説明したように

  • C1を環椎(かんつい)
  • C2を軸椎(じくつい)

と言います。

頚椎のレントゲン画像を見てみましょう。

横から撮影したもの(側面像)です。


軸椎を取り囲むように環椎が存在しています。

その下のC3-C7とは明らかに違う形をしているのがわかりますね。

この2つだけ特別な名前なので、合わせて環椎軸椎と呼ばれる事があります。

この環椎と軸椎の間の固定が悪くなり、環椎に対して軸椎が後方へ移動してしまうことがあります。

これを環軸椎亜脱臼(環椎軸椎亜脱臼)と言います。

関節リウマチの患者さんなどに起こることがあります。

なお環椎と軸椎の間の関節を環軸関節といいます。

環椎後頭関節とは?

環椎後頭関節(かんついこうとうかんせつ)というのは、

  • 頚椎の1番上に位置する環椎(C1)と、後頭骨(頭蓋骨の一つ)が作る関節

を指します。

この関節は、頭部の前屈・後屈に作用します。(頭部の前屈は顎を下げる動き、後屈は顎を上げる動きを指します。)

こちらも先ほどの3DCTの画像で見てみましょう。


上のように環椎と頭蓋骨の間の関節を、環椎後頭関節と言います。

CTの冠状断像(前からみた画像と考えてください)では

  • 頭蓋骨(後頭骨)
  • 環椎
  • 軸椎および歯突起

次のようになります。

環椎後頭関節は、頭蓋骨と環椎の間の関節であることがわかると思います。

環椎に起こる病気にはどんなものがある?

そんな環椎に起こる事がある病気には

  • 環椎骨折
  • 環椎軸椎亜脱臼

などがあります。

一つずつ見ていきましょう。

環椎骨折


環椎の骨折は

  • 前弓骨折
  • 後弓骨折
  • 側塊骨折
  • 横突起骨折
  • 破裂骨折(Jefferson骨折(ジェファーソン骨折))

と骨折する部位や骨折数で分けることができます。

中でも、破裂骨折(Jefferson骨折)は前弓および後弓がそれぞれ1カ所以上で骨折したもので、輪っかを作る環椎が破裂したように骨折した骨が転位し、環椎の骨折の中では頻度が高いとされます。

これらの骨折の原因としては、頭部からの圧迫外力により起こることが多いとされます。

続いて環軸椎亜脱臼です。

環軸椎亜脱臼

環椎は下のように輪っかの形をして、その中に歯突起が環椎横靱帯により固定されています。

ところが何らかの原因でこの横靱帯が損傷を追うと、環椎が動いてしまいます。
これを環軸椎亜脱臼と呼びます。

環椎が前方に脱臼する前方脱臼の頻度が高く、前方に脱臼すると上のように環椎の後ろ側(後弓)で脊髄を圧排する可能性があります。

脊髄が圧排されると神経症状が起こります。

こういった脱臼がないかをチェックするために、環椎と歯突起の間の距離(環椎歯突起間距離)をレントゲンやCT画像でチェックします。


横から見た画像では、下のように環椎と歯突起の間の距離(環椎歯突起間距離:Atlanto-axial distance)を測定することでこの距離が広くなっていないかどうかをチェックします。

この環軸椎亜脱臼の原因としては、

  • 関節リウマチ
  • 外傷
  • ダウン症
  • 骨形成不全症

などがあります。中でも関節リウマチの頻度が高く有名です。

関連記事:環軸椎亜脱臼の原因は?基準は?

最後に

環椎についてまとめました。

  • 環椎とは頚椎の最も上位に存在し、別名第1頚椎、C1などと呼ばれる。
  • 頭蓋骨の直下に存在し、頭蓋骨(後頭骨)と形成する関節を環椎後頭関節という。
  • 環椎に起こる病気には、環椎骨折や環軸椎亜脱臼などがある。

と言う点がポイントです。

背骨には、頚椎、胸椎、腰椎、仙椎、尾骨とありますが、環椎はこの最上位に存在しています。

参考になれば幸いです(^o^)

ご案内

腹部画像診断を学べる無料コンテンツ

4日に1日朝6時に症例が配信され、画像を実際にスクロールして読影していただく講座です。現状無料公開しています。90症例以上あり、無料なのに1年以上続く講座です。10,000名以上の医師、医学生、放射線技師、看護師などが参加中。

胸部レントゲンの正常解剖を学べる無料コンテンツ

1日3分全31日でこそっと胸部レントゲンの正常解剖の基礎を学んでいただく参加型無料講座です。全日程で簡単な動画解説付きです。

画像診断LINE公式アカウント

画像診断cafeのLINE公式アカウントで新しい企画やモニター募集などの告知を行っています。 登録していただくと特典として、脳の血管支配域のミニ講座の無料でご参加いただけます。