脳の中にある下垂体(かすいたい)って、どれくらいの大きさで、どこらへんにあるのかご存知ですか?

脳の構造は複雑で、内部はさまざまな部位に分かれており、細かな神経と交わり、それぞれ大事な働きをしています。

その中でも下垂体は、色々なホルモンをコントロールする重要な役割を持った部位です。

今回は、この下垂体(かすいたい「Pituitary」)について

  • 場所
  • 働き
  • 病気

などを、図や実際のMRI画像を用いてわかりやすく解説していきたいと思います。

下垂体の場所はココ!

下垂体は、

  • 頭蓋のほぼど真ん中(中央付近)
  • 視床下部(間脳のもっとも腹側に位置する領域)の底面

にあります。

図で表すと下のようになります。

 

脳は、大脳・間脳・脳幹・小脳・脊髄という構成からなり、間脳に視床下部は含まれ、その視床下部の下に下垂体があるというわけです。

下垂体は、「トルコ鞍」という骨でできたくぼみの中に存在しています。

この下垂体の大きさは、小指頭大で小さく、重さ0.5〜0.7g・径0.7×1×1cmほどです。

 

実際のMRIの画像で下垂体の場所(解剖)を確認してみましょう。

症例 40歳代男性 スクリーニング

T2強調像の横断像(輪切り)です。

上の方に両側に眼球が見えます。
下垂体はほぼ真ん中(正中)に位置していることがわかります。

これをさきほどの図(イラスト)のように横から見ると次のようになります。

下垂体の下は真っ黒になっていますが、ここは蝶形骨洞と呼ばれる副鼻腔で空気が入っているために黒くなっています。

画像では見えませんが、下垂体はこの蝶形骨洞との間にトルコ鞍と呼ばれる骨構造があります。

そもそも下垂体とは?働きは?

下垂体はさまざまなホルモンを働きをコントロールしている部位であるといいましたが、前葉後葉に分けられ、それぞれ異なる組織となっています。

前葉は文字通り、下垂体の前の部分で、後葉は後ろの部分になります。

前葉と後葉の区別にはMRI画像でも先ほどと異なるT1強調像が有用です。

 

先ほどと同じ症例のT1強調像を見てみましょう。

T1強調像の矢状断像です。

下垂体のところを取り出して拡大してみると、上の画像のように、後葉の部分は白く(高信号に)なっているのが正常です。

一方で前葉は後葉のように白く(高信号に)なっていませんので、それで区別することができます。

ちなみに、下垂体後葉の後ろの白い部分は斜台という骨の骨髄を見ています。

また下垂体は上で、下垂体茎と呼ばれる索状の構造とつながっています。

 

では、次に前葉・後葉の働きについて見ていきましょう。

下垂体前葉

下垂体前葉は、以下の6つのホルモンを分泌しています。

  • 副腎皮質刺激ホルモン
  • 甲状腺刺激ホルモン
  • 成長ホルモン
  • 卵胞刺激ホルモン
  • プロラクチン

それぞれがどんな働きをしているのかというと・・・

  • 副腎皮質ホルモンの分泌を促す・・・→副腎皮質刺激ホルモン副腎皮質刺激ホルモン
  • 甲状腺ホルモンの分泌を促す・・・→甲状腺刺激ホルモン
  • 全身の細胞(骨・筋肉など)を増殖・肥大させる・・・→成長ホルモン
  • 女性:卵胞の発育や黄体形成・男性:男性ホルモンの分泌を促す・・・→卵胞刺激ホルモン
  • 乳腺の発育や乳汁の産生を促す・・・→プロラクチン

というわけです。

下垂体後葉

下垂体後葉は、以下の2つのホルモンを分泌しています。

  • オキシトシン
  • バンプレシン

こちらは、あまり聞きなれない名前ですが、以下のような働きをしています。

  • 子宮の収縮・分娩・乳汁の分泌を促す(女性ホルモンの一種)・・・→オキシトシン
  • 腎臓に作用(尿量を調節)・・・→バンプレシン

というわけです。

下垂体に起こる病気とは?

下垂体に起こりうる病気には以下のものがあります。

  • 下垂体腺腫(下垂体腫瘍)・・・下垂体前葉から発生する良性腫瘍ですが、ホルモン産生の有無により、機能性腺腫と非機能性腺腫に分類され、様々な疾患や症状を発生します。
  • 下垂体前葉機能低下症・・・ホルモンが低下するために、それぞれのホルモンに応じて多彩な症状が現れます。
  • ラトケ嚢胞・・・下垂体前葉と後葉の間にできる嚢胞性病変です。
  • 下垂体炎

など。

関連記事:下垂体腺腫とは?症状は?MRI画像診断のポイントは?

参考文献:
病気がみえる vol.7:脳・神経 P5・38・39
全部見える 脳・神経疾患―スーパービジュアル 徹底図解でまるごとわかる! P38・46・240・241
イラスト解剖学P448
解剖学講義P275

最後に

下垂体について、ポイントをまとめます。

  • 頭蓋のほぼ中央付近・視床下部(間脳のもっとも腹側に位置する領域)の底面にある
  • 下垂体は前葉と後葉で組織が異なる
  • 下垂体前葉は6つのホルモンを、後葉は2つのホルモンを分泌している
  • 下垂体の病気には、下垂体腺腫や下垂体前葉機能低下症などがある

 

脳の構造は大変複雑ですが、下垂体の場所は、特徴的ですね。

MRIの画像で目に焼き付けましょう。

参考になれば幸いです(^o^)

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