唾液を分泌し、

  • 口腔全体を湿潤化して食べ物を飲み込む
  • 会話時の潤滑油として
  • 口腔の清浄
  • 食塊の形成
  • 消化
  • 抗菌

などの作用がある唾液腺(だえきせん)

この唾液が分泌されなくなると、これらの作用がうまくできないようになり、虫歯の増加や生活の上でも様々な差し支えが出て来ます。

では、この唾液腺、どこにあるのかご存知ですか?

今回は、唾液腺(だえきせん「Salivary glands」)について

  • 場所
  • 病気
  • 病気で痛いと感じる場所

などを、図(イラスト)と実際のMRI画像も用いてお話ししたいと思います。

そもそも唾液腺とは?

唾液腺といっても一箇所を指すわけではなく、

  • 耳下腺(じかせん)
  • 顎下腺(がっかせん)
  • 舌下腺(ぜっかせん)

という3つの大唾液腺と、口腔粘膜に散財する小唾液腺があります。

小唾液腺についても少し説明すると・・・
医師
医師

小唾液腺とは?

口腔粘膜にあり、米粒や小豆ほどの小さな腺で、その部位によって

  • 口唇腺
  • 頬腺
  • 口蓋腺
  • 舌腺

などがあります。

 

そして、この3つの唾液腺は、全唾液量中の占める割合として(成人1L/日)に対して

  • 耳下腺が→70%
  • 顎下腺が→25%
  • 舌下腺が→5%

を占めます1)

唾液腺の場所はココ!

耳下腺・顎下腺・舌下腺それぞれに分け、場所を解説しますね。
医師
医師

耳下腺

  • 耳介の下
  • 外耳道の前方
  • 頬骨弓から下方にわたる
  • 下部は下顎角と胸鎖乳突筋との間(深くに達している)

にあります。

この耳下腺は、最も大きな唾液腺で、重さ25〜30gです2)

また、耳下腺は浅葉と深葉にわかれ、その間を顔面神経が走っています。

実際のMRIの画像を見てみましょう。
医師
医師

症例 30歳代男性 スクリーニング

MRIのT2強調像という撮像方法の横断像(輪切り)です。

両側の皮下に耳下腺があるのがわかります。

舌も写っており同じ高さにあることがわかります。

顎下腺

  • 下顎
  • 下顎底の内側
  • 下顎骨と顎二腹筋の前
  • 後両腹に囲まれた三角形部(顎下三角)

にあります。

顎下腺は、耳下腺に次いで大きな唾液腺で、重さ10〜15g(耳下腺の半分)梅の実ほどの大きさです2)

また、顎下腺は、漿液腺と粘膜腺が4:1という比率で混合の唾液腺を分泌しています。

舌下腺

  • 舌下部
  • 舌下ひだ内

にある細長い腺です。

大唾液腺の中では最も小さく、重さは5gほどになります3)

こちらも顎下腺と舌下腺が一緒に写っているMRI画像を見てみましょう。
医師
医師

症例 30歳代男性 スクリーニング

先程と同様MRIのT2強調像という撮像方法の横断像(輪切り)です。

先程の耳下腺を切ったスライスよりもやや足側のスライスです。

両側のに顎下腺と舌下腺があるのがわかります。

 

耳下腺はサラサラな唾液を、耳下腺はネバネバな唾液を分泌しています。
医師
医師

唾液腺の病気は?

こちらも、耳下腺・顎下腺・舌下腺と分けて説明しますね。
医師
医師

耳下腺

耳下腺は、とくに炎症や腫瘍が好発する部位でもあります。

  • 流行性耳下腺炎(おたふく風邪)
  • 多形腺腫
  • ワルチン腫瘍
  • シェーングレン症候群

などがあります。

顎下腺

唾石(唾液腺の中に石ができる病気)ができやすく、唾液腺の中で9割以上がこの顎下腺に起こります。

舌下腺

分泌物が貯留して、嚢胞を生じやすい部位で、ガマ腫(透明な内容をもつ薄い膜の嚢胞)を生じることがあります。

関連記事)扁桃腺の場所を図と画像で解説!手術が必要となるのはどんな場合?

唾液腺の腫れや炎症で痛みが出る場所は?

  • 耳の下
  • 顎の下

など、耳下腺のある場所に痛みが出やすい特徴があります。

また、そのほかでは、食事などで口を動かす際などにも、痛みを生じます。

参考文献:
耳鼻咽喉科疾患 ビジュアルブックP42
100%耳鼻咽喉科 国試マニュアル 改訂第4版P125・127
STEP SERIES 耳鼻咽喉科 第3版P153
解剖学講義 改定2版P595〜597
第4版 イラスト解剖学P273・274

1)100%耳鼻咽喉科 国試マニュアル 改訂第4版P125
2)解剖学講義P596・597

最後に

唾液腺の場所について、ポイントをまとめます。

  • 唾液腺は、小唾液腺と大唾液腺がある
  • 小唾液腺は、口腔粘膜に散在する小さな腺で、口唇腺・頬腺・口蓋腺・舌腺などがある
  • 大唾液腺は、耳下腺・顎下腺・舌下腺がある
  • 耳下腺は、外耳の下・外耳道の前方にある
  • 顎下腺は、下顎底の内側にある
  • 舌下腺は、舌下部にある
  • 唾液腺に起こる病気は、流行性耳下腺炎(おたふく風邪)・混合腫瘍・シェーングレン症候群・唾石・ガマ腫などがある
  • 唾液腺の病気では、それぞれ起こった場所によって、耳の下や顎の下が痛む

 

唾液腺が、こんなに何ヶ所もあるなんて、ご存知ない方も多かったと思います。

唾液腺が少なくなると、虫歯もできやすくなるので、普段から口腔ケアにも気を配りたいものですね。

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