【CT画像あり】脾損傷とは?分類・症状・治療の徹底まとめ!

脾臓


 

左の上腹部、横隔膜の下に脾臓(ひぞう)という臓器があります。

脾臓の場所についてはこちらにまとめました。→【CT画像あり】脾臓の位置を図で解説!

左腹部や胸部に鈍的な外傷により、この脾臓が損傷することがあり、これを脾損傷(ひそんしょう)と言います。

お腹の中にはいくつかの臓器がありますが、この脾臓は臓器損傷を受けやすい臓器なのです。

今回はそんな脾損傷(英語でsplenic injury)について

  • そもそも脾損傷とは?
  • 脾損傷の分類
  • 脾損傷の症状
  • 脾損傷のCT画像
  • 脾損傷の治療

といった点を図(イラスト)と実際のCT画像を用いてわかりやすく解説します。

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脾損傷とは?

胸腹部や背部の鈍的な外傷によって、脾臓が損傷を受けること脾損傷と言います。

もっとも多い臓器損傷がこの脾損傷です。

脾臓は肋骨に囲まれて存在しますが、被膜が薄く、柔らかい構造であるため、損傷を来たしやすいのです。

脾損傷の原因は?

原因としては、交通事故転落と言った高エネルギー外傷が多くを占めますが、ちょっとした打撲や転倒でも起こることがあります。

脾損傷の分類は?

日本外傷学会の脾損傷分類2008によると脾損傷はⅠ型からⅢ型と3つのグレードに分けられます。

  • Ⅰ型 被膜下損傷(Ⅰa型:被膜下血腫、Ⅰb型:実質内血腫)
  • Ⅱ型 表在性損傷
  • Ⅲ型 深在性損傷(Ⅲa型:単純深在性損傷、Ⅲb型:複雑深在性損傷)

ちなみにこの分類は同じ腹部臓器損傷である肝損傷とほぼ同じです。

肝損傷についてはこちらにまとめました。→【CT画像あり】肝損傷とは?分類・診断・治療の徹底まとめ!

医師
では、それぞれ見ていきましょう。

Ⅰ型 被膜下損傷

被膜下損傷は、脾臓の被膜が保たれており、脾臓の中で出血を起こしている状態です。

さらに、

  • 被膜の下に血腫があるのがⅠa型:被膜下血腫
  • 被膜から離れた脾臓の実質内に血腫があるのがⅠb型:実質内血腫

と分けられます。

Ⅱ型 表在性損傷

表在性損傷では、脾臓の被膜にも損傷を認め、脾臓実質にも損傷が及びます。

創の深さが脾臓の実質の1/2 未満の損傷表在性と分類します。

脾臓の被膜に損傷を認めると、脾臓の中の血腫が脾臓の外に出てしまう(脾破裂)ことがあります。
これを腹腔内出血(ふっくうないしゅっけつ)と言います。

Ⅱ型、Ⅲ型ではこの腹腔内出血の有無が循環動態を左右するため、とくに重要となります。

Ⅲ型 深在性損傷

最も重症なのがこのⅢ型です。

Ⅱ型と同じように、 脾被膜にも損傷を認め、脾臓実質にも損傷が及びます。

創の深さが脾臓の実質の1/2以上の損傷深在性損傷と分類します。

さらに、

  • 損傷部位や破裂面が比較的整であるものがⅢa型:単純深在性損傷
  • 損傷部位や破裂面が複雑で範囲も広範に及ぶものがⅢb型:複雑深在性損傷

と分けられます。

イラスト及び分類はいずれも1)を参照に作成。

脾損傷の症状は?

脾損傷の症状は、

  • 脾臓がある左上腹部痛・左季肋部痛と言った痛み
  • 嘔気嘔吐などの消化器症状
  • 左肩への放散痛(左横隔神経刺激に伴う)
  • 出血性ショック(呼吸が早い、チアノーゼ、四肢の冷感など)
  • 腹膜刺激症状

などが挙げられます。

出血性ショックや腹膜刺激症状と言った症状は、脾臓の被膜に損傷を伴い脾臓内の出血が腹腔内に漏れ出ることにより生じます。

日本外傷学会の肝損傷分類2008による脾損傷と肝損傷の分類はほぼ類似していますが、同じ被膜下や実質内の出血であっても、脾臓と肝臓では同じ腹部の臓器でも出血の広がりのリスクが異なります。

肝臓は硬い臓器ですが、脾臓は肝臓よりは柔らかく軟性構造です。

2)を引用改変

すなわち上のように、脾臓は実質内や被膜下の出血であってもloose spaceに分類され、一方で肝臓の実質内・被膜下の出血はtight spaceに分類され、出血が広がるリスクは脾臓のほうが高いのです。

脾損傷のCT画像所見は?

脾損傷を起こした場合、単純CTで血腫は高吸収となり、造影CTで不均一な造影効果・造影不良域を示します。

またダイナミックCTの動脈相で造影剤の血管外漏出像(extravasation)仮性動脈瘤(pseudoaneurysm)の有無をチェックし、これらがあれば動脈性出血があることを示唆します。

腹腔内出血の有無や、それが活動性の出血なのかをCTで判定します。

脾損傷のCT画像所見と治療方針の関係

日本外傷学会の脾損傷分類2008での分類以外に、以下の血管損傷の有無を評価に含めたCT画像所見と治療方針の関係も評価に有用です。

3)より引用改変

症例  60歳代男性 転倒

腹部単純CTの横断像です。

肝臓辺縁にやや高吸収な腹水を認めています。

脾臓周囲にはより高吸収(白い)な血腫を疑う所見を認めており、脾臓との境界は不明瞭です。

腹腔内出血を疑う所見です。

骨盤底にも従来の腹水よりは明らかに高吸収な液貯留を認めています。

CT値を測定すると47HUと高く血性腹水〜腹腔内血腫であることがわかります。

ダイナミックCTの動脈相の横断像です。

脾臓に造影不良域を認めており、被膜の断裂も疑われます。

明らかな造影剤の血管外漏出所見や仮性動脈瘤を疑う所見は認められませんでした。

日本外傷学会の脾損傷分類2008ではⅢa型、上のCTグレードではⅢ型相当の脾損傷+腹腔内出血であり、血管内治療が施行されました。

脾損傷の治療は?

脾損傷の治療には大きく3つあります。

  • 保存的治療
  • 血管内治療(動脈塞栓術(TAE))
  • 手術療法
医師
一つずつ見ていきましょう。

保存的治療

日本外傷学会の脾損傷分類2008のⅠ型とⅡ型の一部で、循環動態が安定している場合は保存的に経過観察されることがあります。

経過観察といっても通常、入院は必要となります。

保存的に加療した場合は、受傷1週間後に腹部造影CT検査を行い、仮性動脈瘤の有無を確認します。

もし仮性動脈瘤が見つかれば、破裂を予防するために血管内治療(動脈塞栓術(TAE))を行います。

血管内治療

循環動態が比較的安定しており、CTで被膜断裂や活動性の出血を認めた場合には血管内治療が考慮されます。

血管内治療の合併症としては、脾臓を栄養する脾動脈の一部を塞栓しますので、脾梗塞は必発です。

脾梗塞に伴う発熱や疼痛と言った症状は頻繁に見られ、ときに脾臓壊死や、脾膿瘍形成肝不全と言った合併症が起こることがあります。

手術療法

循環動態が不安定な場合や、血管内治療では止血は困難と判断された場合は、手術療法が行われます。

脾破裂の鑑別は?

脾損傷により脾臓の被膜が破れ、腹腔内出血を起こすことを脾破裂と言います。

外傷による損傷によるものがほとんですが、外傷以外でも起こることが稀にあります。

脾破裂の外傷以外の原因としては、

  • 脾腫を起こす疾患(慢性肝障害、伝染性単核球症など)
  • 抗凝固療法

などで見られます。

最後に

脾損傷についてまとめました。

  • 脾臓の損傷を理解するにはまずは分類を理解する
  • その際に脾臓の被膜の損傷の有無に着目することが重要
  • 被膜が損傷している場合には、容易に腹腔内出血をきたしショックになるため注意が必要
  • 脾臓は肝臓よりも組織が柔らかく出血が広がりやすい
  • CT検査ではダイナミック撮像を行い造影剤が漏出する様子や腹腔内出血を捉えることが重要
  • 治療は保存的治療、血管内治療(動脈塞栓術)、外科的治療の3つがある

という点がポイントです。

参考になれば幸いです( ^ω^ )

参考サイト/文献
1)日本外傷学会臓器損傷分類2008
2)画像診断 Vol.33 No.14 2013 P1522

3)日腹部救急医会誌32:1159-1162,2012

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